便利な術も使えない
まだ下痢が続くので、お医者さんに訴えて下痢止めをもらった。どれくらい効くかなあ。
抗がん剤の中休みなので、吐き気はやや治まってる。でも、食事は相変わらずまずく感じて、ほとんど食べられない。食事は、メイバランスとプロテインゼリーだけ何とか手を付けた。
メイバランスは小さいパック飲料で、バナナミルク味なのだが、俺の舌の不具合により香り以外は感じられない。飲むヨーグルト的な口当たりだが、飲むヨーグルトより濃くて重い。ゼリーはマンゴー味だが、やはり香りしか感じなかった。
午後、千歳が九さんと深山さんを連れてきてくれた。自分では気づかなかったが、俺はだいぶグロッキーに見えたらしく、3人に心配された。
九さんが気の毒そうに言う。
「がんじゃろう、自分由来のデキモノだと、術でなんとかはしてやれなくてのう」
深山さんも頷いた。
「医者に頼るしかありませんわ。でも治療終わったあとの養生なら、ある程度何とかなります」
九さんは俺と千歳を見て言った。
「無事退院できたら、またうちの湯に浸かりに来るとよい。湯治が一番じゃ」
「じゃあ、お世話になります」
『ワシもついてっていいか?』
「もちろんじゃ。お主がいないと、和泉は寂しくて泣いてしまうでのう」
九さんはいたずらっぽく言い、俺は微妙な笑いで返すしかなかった。さすがに泣かないよ、寂しいけど。




