絶対海に落ちたくない
早く起きてしまったので、朝ごはん前に千歳と船を回り、海を見ようと船の先頭に行ってみる。似たようなことを考える人は多いようで、そこここに人がいた。
千歳が俺に聞いてきた。
『昨日ここでさあ、男が女のこと抱きながら「えんだーいやー」って歌ってたんだけど、あれなんだ?』
「タイタニックって映画の名シーンだね。やっぱやる人いるんだ」
船は海をかき分けて進んでいく。今日の午前には、神戸港に到着だ。
平成の映画を知らない千歳は、不思議そうにしていた。
『タイタニック? どんな映画だ?』
「昔海外で、これよりもっとすごい豪華客船が氷山に衝突して沈んじゃった事故があって。大勢の人が亡くなったんだけど、その中での恋愛ドラマと言うか人間ドラマと言うか」
『へえー』
そんな事を話しながら水面を見る。今日もいい天気で、海が青い。すると、先の方に何か白い泡が立っているのが見えた。
「あれなんだろう?」
白いところを指さすと、千歳は首を傾げた。
『うーん? なんか変な気配が……』
すると、白いところから突如水が噴き上がった。水柱が立って、それがどんどん船に近づいてくる。
「え!? 何あれ!?」
『え!? まさか……』
水柱はどんどん船に迫り、それが曲がって俺の方に来た。水柱の中に、大きな亀が視認できた。
水柱が船に着き、そして俺を巻き込んだ。何が何だかわからないうちに、服をつかまれて床から足が浮いた。
遠くで千歳が叫ぶ声がした。水柱に巻き込まれて、引き寄せられて、俺は海に落ちた。




