豪華客船楽しみたい
朝早く起きる。朝食は高級ホテルめいた品数の和定食だった。2日目の朝食も取材の一環なので、多かったけどちゃんと食べた。
「朝からお腹いっぱい……」
『かわいそうに、ワシお代りしたいくらいなのに』
「まあお昼で調整する。俺は仕事してるから、千歳は好きに楽しんでて」
『じゃあ気兼ねなく遊ぶぞ』
「うん」
さて、食べ終わったら用意を整えて船内取材である。まずはブティックにいき、品ぞろえをチェック。店の外観を撮り、店の雰囲気もメモ。それからカードルームとカジノを回り、やはり写真を撮って、遊ぶ人たちの雰囲気をメモ。コンサートホールも取材したら、もう午前が終わった。
俺がいない間、千歳はバーでお酒など楽しんでいたらしい。酔ってはいなかったが、お昼に待ち合わせたら『カクテルがすごくうまかった!』と言っていた。後でどんなカクテルが頼めるか聞いておこう。
お昼はビュッフェレストラン。ハンバーガーとパスタとアイスをもりもり食べる千歳と、昨夜と朝かなり食べたから果物だけかじってる俺と。
『お前、食べれないのもったいないなあ』
「その分千歳が食べて元取ってよ」
『元からそのつもりだ』
千歳はきのこパスタを頬張った。
午後も取材。図書館を回ったあと、千歳が楽しんだバーでお酒の品ぞろえをチェックして撮影、それからなんとサロン&スパ。体験するならとことんということで、顔も体もトリートメントしてもらった。なかなか気持ちよく、仕事ということを忘れて寝落ちするところだった。
顔も体もつやぴかになってサロンを出ると、もう夕飯にいい時間だった。千歳とメインダイニングで落ち合う。
『お疲れ!』
「どうも、午後は何してたの?」
『映画見て、ラウンジで茶しばいてた。コーヒーも紅茶もうまかったぞ、クッキーも出た』
「後で感想聞かせて、仕事に使うかもしれないから」
『オッケー』
「今日の仕事は、あとはフルコースを食べるのだけ」
フルコースのメニューを見ておくことも仕事なのだ。
『食おう食おう!』
千歳は飛び跳ねんばかりの勢いだった。
前菜はビーツとグレープフルーツのサラダ。
それからサーモンマリネとアボカド。ビーツは意外にも甘く、グレープフルーツの酸味に合った。サーモンとアボカドの相性は言うまでもない。
『うまいなー』
「夕飯は絶対全部食べる」
それからトマトと生クリームのポタージュ。パスタソースでよくある組み合わせだが、これはソースではなくスープとして完成されていた
魚料理はカサゴととうもろこしのフリット。フリットとは、洋風の天ぷらのことらしい。サクサクの生地とカサゴの深いうまみ、トウモロコシの甘さ。
肉料理は牛フィレ肉のポワレ。
『赤ワインのソースかな? すっごく合う』
「これ、赤ワイン合うんじゃない?」
『じゃ、ワシ頼んじゃおっかな』
「俺も一杯だけ頼む」
柔らかな牛ヒレ肉と、芳醇なソース。そこに赤ワインをぐっとやると、肉の風味が赤ワインの渋みにほどけてたまらない。
デザートは南国フルーツのシャーベット。濃い黄色なのでマンゴーかと思ったが、強い甘酸っぱさと香りからして、別の果物も入っているようだ。
『なんの果物だろう?』
「南国って感じの香りだよね」
満足して部屋に戻る。疲れたので部屋のシャワーをさっと浴びて、ベッドのうえでダラダラ。取材した情報をまとめてもよかったが、クソデカ船内歩き回るのって! 疲れるんだ!!
『寝るか?』
「寝ちゃおうかな」
いつものように、黒い一反木綿になった千歳に巻き付かれて就寝。
後は明日港に降りるだけ。無事に取材を終えられる。この時は、そう思っていた。




