雪に思えど見つからない
日曜日、俺たちの住む横浜に雪が降った。それほどは積もらなくて、雪化粧した木々の枝や雪に映える赤い椿は、ほんのひとときしか楽しめなかった。俺はそれでも満足したのだが、千歳はもっと積もってほしかったらしい。
散歩の時、道の端に残った雪をつつきながら千歳はぼやいた。
『雪だるまとか作りたかったな』
俺は苦笑した。
「さすがにそれには足りなかったね」
『あと雪合戦したかった』
「雪合戦? 誰と?」
『お前と』
「俺と!?」
さすがに俺、雪合戦する年じゃないが?
「31歳で雪合戦に全力にはなれないな……もっと若い人としてよ」
『まあそうか。お前に子供いたら、その子と雪合戦してやれたのにな』
千歳は雪から離れて伸びをした。そして少し恨めしげに言った。
『お前がガタガタ言わずにとっとと結婚して子供作ってれば、それくらいの子いたかもしれないのに』
「難しいことをおっしゃる……」
『まあ今からでも遅くないから頑張れよ。好きな人にこだわらなくてもいいんだぞ』
「難しいことをおっしゃる……」
子供ねえ。ちっちゃい子と雪合戦の真似事をして遊ぶのは、結構楽しいとは思うけど。
子供かあ。俺たちが探してるアタリの子、雪合戦ではしゃぐような年の子だと思う。その子は……雪を見たことあるんだろうか?
千歳は訝しげな顔をした。
『なんだ、黙っちゃって。どうしたんだ?』
「アタリの子、こんな日はどうしてるのかと思ってね」
『そっか……雪なんて見れてないかもな……』
千歳は空を見上げた。
『でも、あったかくはしてると思うぞ。和束みやび、アタリの子を利用したいんだし』
「そうだね」
閉じ込められてはいるだろうが、せめて飢えず暖かく暮らしていてほしい。それで……俺たちが見つけるまで、無事でいてほしい。




