番外編 金谷千歳と密着
朝起きて、隣に和泉がいないことに気づいた。
『あれ?』
見回すと、和泉は距離をとって寝袋で寝てた。え? なんでそんなところで寝てるんだ?
ワシの声で起きたのか、和泉は伸びをして、目をこすって起き上がってきた。
『おはよう、なんでそんなところで寝てるんだ?』
「あー、おはよ……あのねえ、自分の体をよく見なさい」
『ん?』
和泉が渋い顔をしているので、ワシは自分の体を見直す。長袖Tシャツを持ち上げる乳、しっぽじゃなくて太ももとふくらはぎのスウェット姿。ワシは驚いた。
『あれ!? お化けじゃない!』
和泉はため息をついた。
「その格好で布団入って来たらダメ! 本当にびっくりしたんだからね」
『ご、ごめん……』
実態は違うとはいえ、ワシはかなり女に見えるわけで、そりゃ和泉も驚いたよな。
『それで寝袋出して寝てたのか?』
「一緒に寝るわけにいかないだろ、その格好で」
『お化けならいいよな?』
ワシは、和泉がくっつかせてくれなかったのがショックで、すがるように聞いてしまった。
「そりゃお化けならいいけど、そんな女の子みたいな格好で人の布団に潜り込んじゃダメ! 俺ならともかく、誰がどんな悪いことするかわかんないんだからね」
朝から怒られて、ワシはしゅんとした。
『お化けなら、今夜も一緒に寝てくれるか?』
「それは一緒に寝るよ、でも本当に姿の変え忘れしないでね」
『うん、ごめん』
「わかってくれればいいから」
和泉は表情を和らげた。ワシは、お化けの姿になって和泉に飛びついた。
『お化けならくっついてもいいよな?』
「いつでもどうぞ」
和泉は、ぎゅっと抱き返してくれた。ワシは、すごくホッとした。和泉はワシの背中をなでてくれた。
気が済むまで和泉をぎゅっとしてから、ワシは体を離した。
『朝メシ作るな』
「うん、よろしく」
よかった、くっつくの自体はいいんだ。
確かに、ワシの二十歳の姿で男の布団潜ったら勘違いされるよな。力では勝てるけど、その前に乳もまれたりしたら嫌だし。
……ん? 和泉は何も悪いことしなかったんだよな? されたら起きてたと思うし、和泉が寝袋に避難することもなかったと思うし。
変な気起こしてもおかしくないのに、和泉はやっぱり、すっごくすっごく優しくていいやつだ。




