嬉しいんだけど嬉しくない
スマホで、レンタカーとホテルの予約を取ろうとしている。千歳が横からのぞき込みながら言った。
『ホテル同室がいい、どうせ一緒に寝るんだし』
「あの、女子中学生と同泊は絵面的にまずすぎるんで、行くときは二十歳の姿になってもらえない?」
二十歳の姿もそれはそれでまぶしいんだけども! より女性らしくて!
『じゃあそうするよ』
「よろしく」
『普段から二十歳になっとく練習しとくかあ』
千歳はボンと音を立てて二十歳の姿になった。俺はツインの部屋を取って予約を無事に終え、夜中になって寝る運びとなった。
千歳はいつも通り、黒い一反木綿の姿になって俺に巻きついてすやすや。俺も千歳の呼吸音を聞きながら眠りに落ちた。
……千歳がゴソゴソする気配で、俺は目を覚ました。あ、千歳トイレか。寝直そ。
うとうとしていたら、千歳が戻ってきて、そして俺に抱きつき……は!? えらく柔らかくていい匂いがするんだが!? ふわふわぷるぷるなものが当たってるんだが!?
目を開けると、二十歳の姿の千歳がそこにいた。
『んー……』
黒いお化けの姿の時と同じように、巻きついてくるんじゃないかって勢いで抱きついてくる。
「ちょっ、ちょっと千歳!?」
『ふにゃー……』
完全に寝てる!!
何!? トイレに行くとき二十歳の姿になって、それから眠くてお化けに戻り忘れて俺に抱きついて寝てる!?
ど、どどどどうしよう、これそういう意図ゼロだよな!? 本気寝してるもんな!?
改めて千歳を見る。近い! まつ毛が長い! 胸の谷間が見える!!
俺は硬直していたし、余計なところも硬直した。
……落ち着け、千歳にそういう意図はない、眠すぎて姿変えるの忘れちゃっただけだ、落ち着け、そっと体を離して別のところで寝ろ。
俺は、ゆっくりと千歳の腕をはがし、魅力的な太腿も避けて、やっと布団から這い出た。
寝袋出すか……しかし、硬直を鎮めてからじゃないと寝れそうにないぞ……。




