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子々孫々まで祟りたい 〜転んで祠を壊しちゃったら怨霊が子々孫々まで祟りに来たけど「俺で末代」と言ったら怨霊が困り始めて子孫を残させようと奮闘しだした件について〜  作者: zingibercolor・種・がくじゅつてきあかげ
第12シーズン

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大事な人を守りたい

 うちの玄関から、狐のお宿に来た緑さんの頼み事とは、こういうことだった。


「和束ハルを、直接取り押さえてほしいの、千歳ちゃんに」


 和束ハルは、強力な術師だが、霊力を奪い続けることで霊力も兼ね合わせた強大な存在になっている、とのことだ。もし今の和束ハルが暴れたら、日本中がぐちゃぐちゃになるとのこと。


「私たちもできる限りのことはしているの、でも和束ハルへの決定打がないの。今私たちの中で、一番和束ハルに対抗しうるのは千歳ちゃんだけで……」

『わ、ワシか……』


 千歳は、なんというか気が進まなさそうだ。

 九さんが言った。


「お主、自分で思っているよりよっぽど強大な霊になっておるぞ。うちでしばらく様子を見ていて、それがよくわかった。それを見込んでの頼みと思うがのう」

『そ、そっか……』


 千歳はずっとためらうような様子を見せている。もしかして、何か怖がってる?

 いや、怖がって当たり前だな! 何度も襲われてるんだもんな! ここにいれば安全なのに、わざわざぶつかりに行きたくないよな!

 ……とりあえず、状況を整理しよう。俺は緑さんに聞いてみた。


「千歳をぶつける話が出るってことは、和束ハルの居場所、わかったんですか?」

「……まだわかりません。襲われたところも調べてますが、一切の痕跡を消してるんです。追うことも不可能で……」

「じゃあ、今すぐじゃなくて、居場所がわかるとか追跡できるようになってから、ですか」

「そうです」

「なるほど」

『そ、そっか……』


 千歳はまだもじもじしている。

 九さんが千歳に言った。


「前に、お主に人助けをしろと言ったじゃろう。和束ハルが暴れたら、どれだけの人的被害が出るかわからんのじゃぞ、和束ハルを倒すのは、人助けだと思わんか?」

『う、うん……』


 千歳だってわかってるのだろう、和束ハルに立ち向かわなきゃいけないって。でも、嫌なのだってわかる……。

 なんとかしてあげたかったけど、俺は千歳に「大丈夫?」と聞くことしかできなかった。


『…………』

 千歳は俺を見て、どうしていいかわからない顔だったが、不意にハッとした。

 千歳は、緑さんをまっすぐ見て言った。


『やる。どうすればいいんだ?』


 俺は驚いたし、緑さんも九さんも驚いた。


「え、千歳大丈夫!?」

「千歳ちゃん、やってくれるの!?」

『怖いけど、でもやる』


 千歳は、きっぱりと言った。


「……ありがとう、本当に助かるわ」


 緑さんは、深く深く頭を下げた。

 千歳、なんでいきなり気持ちが変わったんだ? 俺は千歳に聞いた。


「本当に平気? 怖いんだろ?」


 千歳は笑った。


『全部ワシ一人でやるわけじゃないし。なっ緑さん、手伝ってくれるよな?』

「うん、バックアップは私たちが全力でやります」


 緑さんは力強く言った。


『和束ハルの場所がわかったら、ワシそこに行けばいいのか?』

「基本的にはそう。でも、見つけるのに難航してる状態で。それでね」


 緑さんは、上着の内ポケットから小箱を取り出した。


「今の和束ハル本人を傷つけるには、和束ハルの生前の体を使うしかなくて……千歳ちゃん、上島家の八重穂刀自に刺されたことあるでしょ、あれ朝霧の忌み子の遺骨を小刀に加工したやつだから」

『あー、なんかそんな話聞いた覚えある』

「で、和束ハルも遺骨を加工して対抗しようと思ったんだけどね、和束家の墓はもう荒らされてて、和束ハルの遺骨だけなくて」

『先回りされちゃったか』


 そうか、和束ハルも想定できる対抗策なのか。

 緑さんは言った。


「だけど、和束ハルの体の一部はあったの。これ、和束ハルの臍の緒」


 緑さんが小箱を開けると、シワシワの黒い棒があった。


「多分、和束ハル本人も存在を知らないのよ。和束ハルの母親が病院でもらって、そのまましまい込んで存在を忘れてたそうで」


 俺は思わず声を出してしまった。


「え、それすごく貴重では!?」


 和束ハルすらも存在を知らない、和束ハルへの対抗策!?

 緑さんは言った。


「だからここに持ってきました。九さんの家で隠し持てるように、千歳ちゃんが和束ハルにうまく使えるように」


 千歳は神妙な顔になった。


『……ここで、ワシが預かっとくのが一番か?』

「多分」


 緑さんは、うなずいた。


『わかった、ワシの中に入れとく』


 千歳は小箱を受け取り、自身のお腹の中にずぶっと入れた。

 緑さんが帰っていった後、俺は千歳に聞いた。


「気が進まなさそうだったのに、いきなりやるって言ったね、なんで?」

『お前のためだよバカ』


 千歳は俺の背中を叩いた。


「えっ俺!?」


 どうして俺……えっ和束ハルをほっといたらまた俺が襲われるから?

 けれど、千歳はもう少し広い視野で見ていたみたいだった。


『和束ハルがさ、たくさんの人をぐちゃぐちゃにしたら、その中にお前も入るかもしれないだろ。だから、やるって決めた』

「そ、そうだったの……」

『たくさんの人がやられたら、お前の好きな人だってやられるかもしれないしさ。それに、誰がやられるんであっても、その人はワシにとってのお前みたいに、誰かにとって、とっても大事な人かもしれないからさ。だから、やる』

「そっか……」


 そうか……千歳は俺が思うよりずっと、広い視野で物事を見ていたのか……え、ていうか、今千歳、俺のこと『とっても大事』って言った!?


「あ、あの……もし聞き違えでなければ、千歳は俺のことをとっても大事に思ってくれてるってこと……?」


 恐る恐るそう聞くと、千歳は『あっヤベ』と手で口を塞いだ。


『違う、その、子々孫々まで祟るために子供作らせるために大事にしてるってだけだからな! 変な意味に取るなよ!』

「別に俺が思った意味でも変な意味じゃないだろ」

『変な意味だよ!』


 顔を真っ赤にして両手をぶんぶん振る千歳を、俺は抱きしめてあげたくなってしまった。

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