検索技術を教えたい
文字入力は慣れればできるから、検索の仕方を先に説明しようと子狐ちゃんたちを集めたら、九さんも来た。
「妾も勉強しておかんとな」
地位の高さに甘んじず、勉強しようという人は好ましい。俺は笑った。
「気合い入れて教えますね」
俺のパソコンとサブモニタを繋いで、サブモニタとパソコンで同じ画面を移して、サブモニタの方を子狐ちゃんたちに向ける。
「文字入力は慣れの問題だから、先に検索の仕方を教えます」
「はーい!」
子狐ちゃんたちは元気に返事した。素直でよろしい。
俺はGoogleを開いた。
「Googleっていうサイトを使う事が多いと思います。検索したい言葉を入れて検索ボタンを押すと、検索結果が出ます。まず、【シャクナゲ】でやってみますね」
「はーい!」
俺はシャクナゲで検索し、検索結果を写した。
「一番最初に【AIによる概要】って言うのがでてきますが、これは今のところ信用なりません」
「ええ!?」
「なんでじゃ!?」
子狐ちゃんたちも九さんもびっくりした。
「何でかって言うと、GoogleのAI、つまり人工知能はまだ未完成で、信用できる情報も信用できない情報も同じように参考にして概要を作っちゃうからです。読まないほうがいい」
子狐ちゃんの一人が首を傾げた。
「ちゃんとした文章に見えますけど……?」
「今のAIって、それっぽい文章書くのはうまいけど、時々しれっととんでもない嘘をつくんだ。それっぽく書く方に特化してるから」
「へえー」
「で、次に【パソコン】で検索してみます。そうするとトップに【スポンサー】って書いてあるのが出てきます。これはつまり広告って意味なので、正確に調べたい時は無視するのが基本です」
子狐ちゃんの一人が聞いてきた。
「これも嘘なんですか?」
「嘘ってわけじゃないけど、Googleにお金払えば広告乗せるのはできちゃうから、内容の良さとか正確性はあんまり関係ないんだよね。だから無視したほうがいい」
俺は検索画面をスクロールした。
「で、いよいよ検索結果を見ます。いろんなサイトがあるけど、これもどういうサイトかを見極めて使うのが必要です。厚生労働省とか外務省とか、公的なところのサイトだったらまず信用していい。次に信用していいのは、大きいメーカーのサイトとか、県立とか市立の病院のサイトとかかな」
「それ以外はダメなのか?」
九さんが聞いてきた。
「玉石混交です。在野の人が書いた専門的なサイトやブログで凄いのはたくさんあるんですけど、ズブの素人が適当に書いたのはもっとたくさんあります。あと、一番悪いのは、完全にウソを書いて、怖がらせて、こんな怖い目に会わないためにはこの商品! って詐欺商品を買わせる方に誘導するところです」
よくある手口である、両親もこうやって売っていた。
「なるほどのう」
九さんは納得したようにうなずいた。
その後、サイトのアドレスの末尾で公的機関をある程度判別する方法を説明したり、Wikipediaとはどういうものかを教えたりして、授業をおしまいにした。
千歳も隣の部屋で俺の授業を聞いていたがらしく、『面白かったぞ』と言ってくれた。
『AIがしれっと嘘つくのは知らなかった』
「今のAIは、って話だけどね。将来的には良くなるかもしれないけど」
『やっぱお前、教えるの上手だなあ』
千歳が手放しに褒めてくれて笑うので、俺は照れくさくなってしまった。
「ま、まあ、仕事で使うものだからね……」
狐のお宿での暮らしはおだやかだ。こうやって、しばらくやり過ごして、和束ハルの脅威をどうにかできればいいのに。
けれど、その願いは叶わなかった。




