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子々孫々まで祟りたい 〜転んで祠を壊しちゃったら怨霊が子々孫々まで祟りに来たけど「俺で末代」と言ったら怨霊が困り始めて子孫を残させようと奮闘しだした件について〜  作者: zingibercolor・種・がくじゅつてきあかげ
第11シーズン

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息子のことを頼みたい

 千歳と二人、病院のエントランスで待っていると、父親が戻ってきた。


「悪かった、お母さん、薬は飲んでたんだけど、お母さんの中ではお前は高校生のままなんだ、それで違うと思ったのかも……」

「薬飲んでてあれなら、もう本人の陰謀論脳ってことでどうしようもなくない?」

「…………」


 父親は、気まずそうに口を結んだ。


「俺、確かにしばらく会ってなかったけどさ。俺がしばらく会わなかったの、お父さんとお母さんの商売に原因あるってわかるよね?」

「…………」

「千歳とおばあちゃんは、俺が子供になっても俺ってわかってくれたし、お父さんも普段の俺を見たら俺ってわかってくれたけどさ。お母さんが俺を自分の息子と思わないなら、俺もお母さんを親だと思えないよ……」


 俺の最後の言葉が震えたので、千歳が心配そうに俺を見て、俺の腕をぎゅっと握った。


『大丈夫か、ショックだったよな……』

「……ごめん、ありがとう。本当にありがとう。大丈夫だから」


 父親は、絞り出すように言った。


「……悪かった」

「いいよ。でも、俺、お母さんの面倒は見られないから、お父さんのほうで何とかして」

「…………」

「100歩譲っても、仕送りくらいしかできない。俺のことを息子って信じてくれない親の老後の面倒、見られないよ」

「……そうか」


 父親は、うなだれた。

 この精神病院は、人里離れた山の中にある。駅までの足はバスとタクシーくらいしかないので、バスに乗って帰るために、俺達は病院前のバス停まで移動した。

 次のバスまでかなり時間があることを確認して、千歳が言った。


『悪い、トイレ! 少し時間かかるけどバスには間に合わせるから!』

「ああ、うん、行ってらっしゃい」


 父親と二人。父親は気まずそうだったが、俺は父親に少し嫌味を言いたくなった。


「しかし、お母さんには普通の医療受けさせるんだねえ」

「…………」

「お客さんには逆のことしたのにねえ」


 父親は、苦しそうな顔をした。


「……お母さんが望むことをしてやれて、俺も儲けられたんだ」

「限度があるだろ」

「好きな女の喜ぶことして、何が悪い」


 あ、好きな気持ちはあるんだ。まあ、そうじゃなきゃ結婚しないか、あんな人と。あんな人のどこがよかったのかわかんないけど。

 俺は、千歳のことを思い浮かべて言った。


「好きな人が間違ったことしてたら、その人が間違った方に行かないために気をつけてあげなよ。直せたら、ほめてあげてさ」

「……お前に何がわかる」


 父親はぶすっとした。既婚と独身じゃ見える景色が違う、と言いたいんだろうが、俺だって関係を築いてきた人がいる。


「……俺はずっとそうして、千歳とそれなりにいい関係を作ってきたんだよ」

「…………」


 父親は黙りこくったが、やがて聞いてきた。


「……あの千歳って子は……怨霊っていうのは、本当なのか?」

「ああ、聞いてる?」

「俺達をさらったのが悪霊だって、入院中尼さんが来て教えてくれて、その時に言ってた」


 南さんかな?


「うん、怨霊。俺、3年前の春に、転んで近所の祠にぶつかって壊しちゃって、その中にいたのが千歳。千歳、怒って俺を子々孫々まで祟るって言ってうちに来たんだけど、当時俺体悪くて仕事も少なかったから、俺で末代だって言ったら千歳困っちゃって、それからずっと俺に子孫残させるためにいろいろよくしてくれてる」

「祟ってるのか、それは?」

「本人は祟ってるつもりみたい、一切危害加えられたことないけど。……子孫は残せそうにないけど、俺、千歳とずっと一緒にいたい」

「……そうか」


 父親は、うなずいた。


「……家と店の片付けをしなきゃならないから、お前、自分がいるものは引き取りに来てくれないか?」

「他は捨てる感じ?」

「業者に頼もうと思う」

「わかった、空いてる日に取りに行く。あと、おばあちゃんも捨ててほしくないものあるかもしれないから、聞いてみて、あったらそれも引き取るよ」

「頼む」


 話していると、千歳が戻ってきた。


『悪い! バスまだ来てないよな?』

「来てない来てない、大丈夫だよ」


 父親が千歳を見て、言った。


「千歳さん」

『うん?』

「……いろいろと、迷惑をかけて済まない。豊をよろしく頼みます」

『え? うん、面倒見ます』


 千歳はよくわかってない感じでうなずいたけど、多分、父親の方は気持ちが済んだんだろう。

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