番外編 金谷千歳の気遣い
家に帰って。和泉がまたショック受けてないか不安だったけど、和泉は淡々とおばあさんと連絡取り合ってた。
「そういうわけなんだけど、何か実家から持ち出したいものある?」
「そうねえ……捨ててほしくないものはあるわねえ、ここに置くスペースないから、豊ちゃんに持っててほしいんだけどお……」
「何?」
「アルバムよお」
「ああ、あの頑なにフィルムカメラで撮ってたやつ」
「だって、携帯の使い方なんて栗田さんに教えてもらうまでわかんなかったんだものお」
「他には?」
「それだけで十分よお、ありがとうねえ」
和泉とおばあさんの通話が終わって、ワシは和泉に聞いてみた。
『今日、ショックじゃなかったか?』
お母ちゃんに実の息子だって信じてもらえないなんて。和泉はなんにも悪いことしてないのに。
和泉は、寂しそうに少し笑った。
「母親には……何ていうか、諦めの気持ちが強いかも。びっくりはしたけど、この人ならそうなるかなあ、って思っちゃった」
『元からそんな人だったのか?』
「何ていうか、怪しいことばっかり信じちゃう人なんだよね。それで、「人とは違うワタシ」に酔っちゃって、どんどんおかしい方に突っ走るの。……あそこまでとは思わなかったけどさ」
『…………』
寂しそうな和泉の顔に、ワシはどうしていいかわからなかった。なんにもうまいこといえなかったから、ワシはまたおばけの格好になって和泉をぎゅっとした。
『大丈夫だ、金はなんとかなりそうなんだし、なんとかならなかったらワシ貸してやるし、なんにも心配いらない』
「……ありがとう」
和泉もワシをぎゅっとして、ワシらはしばらく抱き合ったままでいた。
しばらくして、体を離して和泉が言った。
「父親がさ、土日に実家にいるもの取りに来いって言ってて。俺も本とか持ち出したいし、手伝ってくれないかな?」
『うん、手伝う。1日仕事になるか?』
「なるかも……っていうのも、おばあちゃん一人がずっと家事してた家だから、おばあちゃんがいない今、まともかどうかわかんなくて」
『そっかあ』
1日仕事か……。
『じゃあ、弁当作っていこう』
「いいの?」
『お前の父ちゃんにも食わせて、お前は普段こういうものを食ってるって見せたい』
「そっか、ありがとう……」
なぜか、また和泉にぎゅっとされた。うーん、お前の父ちゃんにお前の面倒見るって言ったから、普段こんなふうに面倒見てるって見せておきたかっただけなんだけどな。




