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子々孫々まで祟りたい 〜転んで祠を壊しちゃったら怨霊が子々孫々まで祟りに来たけど「俺で末代」と言ったら怨霊が困り始めて子孫を残させようと奮闘しだした件について〜  作者: zingibercolor・種・がくじゅつてきあかげ
第11シーズン

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自分の子だとわからない

 お母さんが入院している精神病院に来た。全体的に新しい建物で、広くて採光が良く、きれいで感じがいい。

 千歳(二十歳の朝霧の忌み子のすがた)は、興味深げに病院を見回していた。


『サナトリウムみたいだ』

「結核の人が療養するところ?」

『そうそう、日当たりいいし』

「日光ってメンタルにいいからね」


 エントランスで父親と待ち合わせして、受付して母親に会いに行く予定だ。ほどなくして、父親が来た。


「……悪いな、来てもらって」

「それは別にいいけど、家と店のことはどうしてる?」

「……不動産屋を探して、いくつか相談しようとしてる。相見積もり取ったほうがいいだろう」

「そりゃそうだね。お母さん、どんな感じ?」

「……薬は飲んでるけど、元の性格は変わってない」

「あー、そう……」


 元の性格が変わってないんじゃな……あんまり期待はできないな……。

 父親は受付を指さした。


「あっちで名乗って名前と住所書いて、面会証もらわないと入れない。そこの、千歳さんもそうしてほしい」

「わかった」

『うん』


 受付で手続きを済ませ、父親についてエレベーターに乗る。目的の階について、ナースステーションに面会証を見せたら、看護師さんが病棟への扉の鍵を開けてくれた。

 父親が言った。


「許可がないと外への出入りはできないようになってるんだ、患者の安全のために」

「そうなの……」


 鉄格子じゃないだけで、閉じ込める設備はちゃんとあるのか……。

 母親の名前が書いてある個室まで行き、父親は「入るよ」とノックして扉を開けた。


「豊を連れてきた、紹介したい人もいるらしくて……」

「あっ、お父さん」


 母親は、記憶より老けていたが、パッと見は元気そうだった。そして母親は俺を見て、一瞬で凶悪な形相になった。


「ゴム人間!! 豊じゃない!! ニセモノ!!」


 ……ゴム人間?

 母親が何を言っているのか一瞬分からなかったが、そう言えば陰謀論界隈では、いろんな著名人がゴムマスクでなりすました偽物扱いされてるのを思い出した。あ、それか……。

 俺は、大きくため息をついた。千歳はただひたすらびっくりし『え? 何だ? ゴム?』とワシを見た。


「あー、あの、俺のことをゴムマスクでなりすました偽物だって言ってるね、あれは」

『はあ!? 実の母親なのに自分の息子もわかんないのか!?』


 千歳は目を剥き、母親は両手を振り回して騒いだ。


『豊じゃない! 豊はさらわれたの! 豊じゃない!!』


 父親があわてて母親をなだめた。


「大丈夫か、薬は飲んでるか、これは本当に豊だから、そりゃ18の時とは感じが違うかもしれないけど」

「何でお父さんも騙されてるの! あんな薬なんて絶対に飲まない!!」

「もういいよお父さん、現状はよくわかったから」


 俺は父親を制した。


「あのさ、お母さん。一応、俺の現状だけ説明しとくね」

「ゴム人間!! 偽物!! 何しに来たの!!」


 母親の罵倒を聞きながら、オレは淡々と話した。


「あのさ、今日連れてきた人は金谷千歳って言って、もう3年近くいっしょに暮らしてる人。新卒で入った会社がブラックで体壊してたんだけど、千歳がすごくよくしてくれて、俺のこと治してくれたんだ。これからも一緒にいるつもり」

「ゴム人間の言うことなんて信じない!」

「別に信じなくてもいいよ、俺はけじめとして千歳の事紹介しただけ」


 俺はため息をつき、父親に「あんまり興奮させちゃいけないんじゃない? 俺たち、もう帰ろうか?」と聞いた。

 騒ぎを聞きつけたのだろう、看護師さんが個室をノックして入ってきて「どうかしましたか?」と聞いてきた。


「すみません、私のことが息子だってわかんなかったみたいで。興奮させちゃいけないんでもう帰ります」


 父親が母親の背中を撫でながら言った。


「しばらく落ち着かせるから、先に行ってエントランスで待っててくれ、後でもう少し話したい」

「わかった」

『大丈夫か、和泉?』


 千歳が心配そうな目で俺を見るので、俺は「……ありがとう」とだけ言い、病室を後にした。

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