番外編 金谷千歳と甘えさせ
和泉は、父ちゃんに会って喫茶店から帰る途中、ワシに「ありがとう」って言った。
「あんなふうに言ってくれて、嬉しかった」
『でも、ワシ本当に払わなくていいのか? 金の問題は解決してないだろ?』
「千歳に頼る時があるとしても、父親と俺とおばあちゃんが手を尽くして、それでもどうにかならなかった時だから。今はまだ手を尽くしてない」
『そっか……』
和泉は割と平静な顔だったけど、ワシは、2歳だったらあんなに泣く相手に、今会って無理してないか、すごく心配だった。
家に帰ってから、和泉は淡々とおばあさんと連絡を取って、父ちゃんとの話し合いの場を整えていた。
「豊ちゃんはその時間で大丈夫なのお?」
「うん、多少は仕事の時間融通効くから」
「職員さんにも連絡しておいてねえ」
「うん、今からする」
諸々の連絡を終えて、和泉は大きく息をついた後、ワシを見た。
「……あの、変な意図じゃないからおばけか男の人になってほしいんだけど、その……」
『なんだ?』
「……ぎゅっとさせてくれない?」
あ、やっぱりストレスすごかったのか、これまでのこと……。
ワシは、即おばけの姿になって『来い』と両手を広げた。和泉は躊躇なくワシをぎゅむっとした。
「ありがとう……」
『やっぱ、つらかったのか』
「お父さんがさ、最後の最後でお金よりは人間らしいこと言ってくれてまだよかったけどさ、やっぱ育てたぶん返せって言われたのショックでさあ……」
『そりゃあなあ……』
親って無条件に何よりも子供が大事だと思ってたから、ワシもびっくりした。
「千歳がいなかったら、俺あんなふうに切り返せなかった、俺、千歳がいなきゃやってけない」
『いてやるから安心しろ。おばあさんとの話し合いにも行くから』
「うん……ありがとう」
ワシは、しばらく和泉をぎゅっとしてやっていた。大人の和泉にも、たまには甘えさせてやったほうがいいのかなあ。




