今は大人で子供じゃない
千歳は、俺が子供だった時相当気を張ってたみたいだ。俺が大人に戻ってから初めての食事で、しみじみとつぶやいた。
『あー、なんかやっと食い物の味がする……』
「本当ごめん、苦労をかけまして」
『悪いのは和束ハルだからいいんだ。お前、仕事の方大丈夫か?』
「そっちも連絡した、明日から仕事戻れば大丈夫なんだけど、萌木さんに質問攻めにされたよ……」
俺は苦笑した。久慈さんは「私は猫又の長と知り合いでしてね、だいたいの事情は聞いてるから萌木にも話しといたんで」と言ってたんだけど、萌木さんは聞いても信じられなかったらしくて「怨霊に祟られてるって本当!?」「悪い霊に狙われてるってどういうこと!?」「ていうか彼女さんじゃなかったの!?」とSlackで矢継ぎ早に聞かれた。俺の説明は「千歳は私を子々孫々まで祟りに来た怨霊で、初めて会った時私が体悪くて貧乏で自分が末代だって言っちゃったので私に子孫を残させるためにすごく世話してくれてる人です。危害を加えられたことは一切なくて、特に恋愛関係ではありません。悪い霊というのは和束ハルという霊で、千歳の力を狙って何度もちょっかいを出してきてる霊です」くらいだったけど。
「それでね、千歳。俺が子供の時、俺の父親が来たじゃない」
俺はつみれ汁をすすった。
『ああ、あいつ。どうした、また来そうなのか?』
千歳は心配そうな顔をした。
「本当にお金に困ってるなら、たぶんまた来ると思ってね。おばあちゃんと栗田さんと、対策について相談しようと思って」
『大丈夫か? お前が嫌ならワシ何度だってあいつ追い返すぞ? あんなに泣くほどイヤなんだろ?』
千歳はもっと心配そうになった。
「まあ、あの時は2歳だったから大泣きしたけど、今の俺は30歳なんでね」
俺は千歳を安心させるように笑った。
「相手の細かい状況とか、欲しがってるお金の額くらいは知っておいたほうがいいじゃん。知っとかないと変に俺たちに被害来るかもしれないしさ。おばあちゃんたちと話し合って、父親が来たらその辺聞き出せるように考えを練りたい」
『そっか……』
千歳は不安げながら頷いたが『お前の父ちゃんと話す時、ワシもその場にいていいか?』と聞いてきた。
『別に役に立つようなこと言えないけどさ。でかくてごついおっさんになってずっと睨みつけてるくらいは、できるから』
「そっか、圧をかけとくのか。圧をかけとくだけだったらお願いしたいな」
『まかせとけ』
千歳は胸を張った。
おばあちゃんに、父親のことについて相談できないかという連絡はしておいたし、後でじっくり話をしよう。




