次の事態に備えたい
服を着て、とりあえず関係各所に戻りましたと連絡したら、さっき本白神社にいた面々が全員すっとんできた。
和束天さんが信じられないという顔で言った。
「あの術式を無効に!? 何をどうやったんです!?」
俺は困った。
「私も何がなんだかさっぱり……」
深山さんが俺をよく見て「うーん、これは……」と呟いた。
「術式が焼き切れてますわね」
「え、千歳何かした?」
術式って、ものすごく霊力を流せば焼き切れるんだっけ?
しかし、千歳は首を横に振った。
『何もしてないぞ?』
九さんが首を傾げる。
「あの術式を焼き切るには、相当な霊力を持つ神の体を食べるくらいしないと無理じゃが」
体?
「体……あっ」
俺が呟くと、千歳も『体? ……えっ、あれ?』と思い当たったらしく、俺達は顔を見合わせた。
俺は九さんに聞いた。
「あの、体液って体の一部に入ります?」
九さんは変な顔をした。
「何したんじゃお主ら」
あっまずい、俺らが変なことをしたと思われている!
俺はあわてて説明した。
「いえ、何もしてないんですけど、千歳さっき、私が大人に戻れないってことで泣いちゃって、その時の涙が私の口に入った途端戻ったなって……」
「そんなことで!?」
九さんは驚き、千歳は憤慨した。
『泣いたのバラすなよ! 恥ずかしいだろ!』
いや、バラさなきゃもっと恥ずかしいことしてたと思われるだろ!
でも千歳はわかってなかったみたいなので、俺は適当な理由で千歳をなだめた。
「いや、でもこういうのは正確な情報を伝えないと傾向と対策がわからないからさ」
『むー』
千歳はむくれたが、一応納得してくれたみたいで、それ以上は文句を言わなかった。
峰紅さんが言った。
「まあ……体液なら体の一部と言って差し支えないが……その、千歳さんの霊力は我々が思っているよりとんでもない量になっているかもしれない」
「そうなんですか?」
「そうでなければ、涙一粒であの術式は焼ききれないよ」
千歳は首を傾げた。
『ワシ、思ったより強いのかなあ』
深山さんが頷く。
「まあ、あなたならありえますわね」
『へえー』
とりあえず直近の問題は片付き、あとは皆、和束ハル対策に全力投球するということで足早に帰っていった。
さっき、久慈さんにも萌木さんにも戻ったことは連絡したし、とりあえず今やれることはできたかな。
二人になって落ち着いてから、俺は千歳に言った。
「ありがとう千歳、俺が子供の間ずっと面倒見てくれて」
『まあ、チビの世話の仕方はわかるからな』
「ずっと優しくしてくれて嬉しかったよ」
そう言ってから、俺はふと思いついて言った。
「千歳、もうだいぶ大人かもね」
『え!? そうか!?』
千歳は目をまん丸くした。
「子供のこと引き受けて、ちゃんと育てようと思えるのは大人だよ。本当にありがとう」
『で、でもワシできないことも至らないこともたくさんだし』
「これから覚えていけばいいじゃん」
『まあそうかもしれないけど……いや! お前大人に戻ったから、ワシはしばらく大人休む!』
千歳は、ボンと音を立てて14歳の朝霧の忌み子の姿に戻った。
『しばらく子供やる、二週間本当に気が気じゃなかったんだぞ!』
「いや、迷惑かけて本当ごめん、二歳児の世話なんて大変だったよね」
『別にお前悪くないから迷惑とは言わないけど、大変だった』
「本当に、世話してくれてありがとう」
『いいけどさ。お前、おばあさんには連絡したのか?』
「LINEした、戻ったから心配いらないって伝えた」
『そうか、なら大丈夫か』
そう、大人に戻った今、おばあちゃんとよく話す機会を持たないといけない。
お金に困っている、俺の父親への対策について。




