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子々孫々まで祟りたい 〜転んで祠を壊しちゃったら怨霊が子々孫々まで祟りに来たけど「俺で末代」と言ったら怨霊が困り始めて子孫を残させようと奮闘しだした件について〜  作者: zingibercolor・種・がくじゅつてきあかげ
第11シーズン

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番外編 金谷千歳の涙

 ワシは、呆然としながら、チビ和泉を連れて家に帰った。チビ和泉はさっきのことがあんまり訳がわかってないみたいで、でもワシが元気ないことは伝わってるらしくて、ずっと不安そうにワシにひっついてた。


『……とりあえず、手洗いとうがいな。インフルエンザすごいからな』


 チビ和泉に手洗いうがいさせたけど、ワシは気落ちしてそれ以上何もやる気が出なくて、チビ和泉を膝に乗せてコタツに入った。


「ちとしぇ」


 ぎゅっと抱きついてくるチビ和泉のつむじを見つめる。

 ……こいつが本当に小さかった時、どんな暮らしをしてたのかな。おばあさんにかわいがってもらってた?それともこの年からもう母ちゃんと父ちゃんに困らされてた?

 思えば、こいつは結構かわいそうな人生を送ってきたんだよな。母ちゃんの詐欺みたいな商売につきあわされて、そのせいで幼なじみに絶交されて、それから友達をつくらないで寂しい思春期をすごして、大学に入ってからは苦学生で、就職したらブラック企業で体壊して……。


「ちとしぇ、たいたい?」

『……どこも痛くない、大丈夫だ』


 ワシは、チビ和泉の頭をぐりぐりなでた。

 いい子だ。こんなにチビなのに、ワシが元気ないのを心配してくれて。かわいくて、いい子だ。

 こんなかわいくていい子、辛い目になんて遭わせたくないな。ずっと幸せに暮らして欲しい。

 ……もしかして、こいつをもう一回育て直したら、もう少しマシな人生を送らせてやれるのか? こいつは、今すぐ大人には戻れないけど、大人に育つことはできるんだ……。


『和泉』

「んー?」

『……もっかい、人生やり直すか? ワシが育ててやるよ』

「え?」


 ワシは、チビ和泉を抱きしめた。


『お前は、なんにも心配しなくていい。たくさん遊んで、たくさん寝ればいい。お前、大変な人生送ってきたんだから、今度は幸せな人生をやれ。いっぱい友達作って、いっぱい遊んで、いっぱい笑って……』


 本当は、ワシは不安でいっぱいだった。チビ和泉の世話だけならともかく、親をやってやれる自信なんて、全然ない。大人和泉がどんなに頼れる存在だったか、今さら思い知った。

 でも、チビ和泉を育ててやりたかった。もう一度、今度は幸せな人生を送らせてやりたかった。幸せな人生を送る、大人に育ててやりたかった。

 自信のなさと、不安と、和泉を不憫に思う気持ちと。いろんな気持ちが押し寄せて、ワシはチビ和泉を抱きしめながらボロボロ泣いてしまった。

 チビ和泉は、ワシの涙を見てオロオロし始めた。


「ちとしぇ、ちとしぇ、たいたいとんでけ!」

『痛いんじゃないよ、ごめんな、泣いてごめんな、大丈夫だから、お前は何にも心配いらないから……』


 それでもワシは涙を止められなくて、止めようとして必死に涙を拭って、でもあんまり泣きすぎて、拭った手から溢れた涙が和泉の口に一粒入ってしまった。


『あっ、ごめん……』


 謝った瞬間、膝に乗ってるチビ和泉が重くなった気がした。


『ん?』


 え? あれ? チビ和泉がなんかでかくなって……。

 びっくりしてる間に、チビ和泉はみるみる大きくなり、幼児服は破け、あっという間に大人和泉が目の前に現れた。


『和泉!?』

「えっ、えっ、千歳! 何で!?」


 和泉は目をまん丸くし、あたりを見回し、自身の身体を見て素っ裸なのに気づいたらしく「うわっごめん!」と騒いだ。


「ご、ごめんとりあえず服着る、ごめん上乗っちゃって! あっち向いてて……」

『和泉ーっ!!』


 何で戻ったのかわからないけど、ワシは嬉しくて、ものすごく安心して、全裸の和泉に抱きついてしまった。


『よかったーっ!! どうしようかと思ってた!! ワシ一人じゃどうしていいか分かんなかったよーっ!!』


 別の意味で泣きそうだ。


「ちょっ、まっ、千歳、当たってる! そんな簡単に当てちゃいけない!!」


 和泉は心底慌てた顔でワシから体を離そうとして、そこでワシはやっと、今のワシは二十歳くらいの朝霧の忌み子の姿だから乳がでかくて、抱きつくと和泉に乳を押し当ててしまうことに気づいた。

 ワシは乳が当たらないように少し体の位置を調整したけど、でも嬉しくて和泉に抱きついたままでいた。


『ケチ! 嬉しいんだからぎゅーくらいさせろ!』

「ま、まあ俺も元に戻れて嬉しいけども、服着させてくれませんか……」


 和泉がなだめるようにワシの背中をぽんぽんしてくれたので、ワシはやっと和泉から離れる気になった。


『わあー、チビの服すごい破け方だ』

「あっち向いてて、服着てくるから」


 和泉はこたつ布団で股間を隠すようにした。


『別にそんな気にすんなよ、一緒に風呂入ったことあるだろ』

「でもなんか恥ずかしいよ!」

『しょうがないな、あっち向いてるから』


 ワシは和泉と反対の方を向いた。真面目でお固くて奥手な和泉、大人で頼りになる和泉、それが戻ってきて、また涙が出そうになるのを隠しながら。

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