番外編 金谷千歳の絶望
「無理じゃ。難しいとかではない、無理じゃ」
九さんにきっぱりそう言われて、ワシは固まってしまった。
チビ和泉を大人和泉に戻してもらうために、有識者を本白神社の本殿に集めてる。峰家一番の術者峰紅さん、化け狸の深山さん、九さん、和束家当主の和束天さん。
みんなにチビ和泉を順々に見てもらって、みんなに首を振られた挙げ句(和束天さんは術式に興奮した挙げ句)言われたのが、九さんの言葉だった。
『そ、そんな……大人に戻れないのか? 和泉は?』
チビ和泉は、言われたことをわかってるのかわかってないのか、不安げに周りをキョロキョロしてたけど、ワシがあんまり愕然とした声を出したので「ちとしぇ? ちとしぇ?」とワシに引っ付いてきた。
九さんは辛そうに言った。
「お主はあまり実感がないじゃろうが、峰家と和束家は日本で指折りの術者の家じゃ。両家の一番の術者が無理で、解呪に長けた深山も無理となると、もう手だてはない」
『そんな……』
深山さんがため息を付いた。
「前に和泉豊が殺されかけた時は術式を焼き切ったそうですが、今回の術式はその対策もしっかり施されていますわ。そもそも呪いではなくて、益のある術の扱いですから、解呪するしないの問題ではありませんのよ」
『で、でも……』
「……今回は、命には別状ありませんわ。それだけでもよかったと思いなさい」
『た、確かに命は大丈夫だけど……』
「今の和泉豊は普通の子供ですから、普通に育てればまたもとに戻りますわ。200年以上この世にいるあなたなら、30年足らずは大した問題じゃありませんでしょう?」
峰紅さんはうなだれているし、和束天さんは術式の写しを見てよだれを垂らしそうな顔をしている。
無理なんだろう、本当に。それが、わかってしまった。
ワシは、ただチビ和泉を抱きしめるしかできなかった。




