番外編 久慈蒼の理解
和泉さんの後ろにいきなり女の人が現れて、彼に何か囁いた、と思った途端。和泉さんが縮んだ。
「い、和泉さん!?」
席を立って駆け寄ると、2、3歳の子が、ぐちゃぐちゃになったスーツの上で呆然と俺を見上げていた。女の人は、どこにもいなかった。
萌っちも仰天している。
「何!? 今の何!? どういうこと!? 和泉さん!?」
スーツの上にいる子は、呆然と辺りを見渡した後、あどけない目にみるみる涙をためてしまった。萌っちはおろおろしだした。
「あっ、中身も子供!? 怖くないよー、おじちゃんたち怖くないよー」
萌っちも席を立ち、スーツの残骸ごと和泉さん(幼児)を抱き上げた。子供の扱いに一日の長がある友達がいてよかった……。
べそべそ泣き出した和泉さん(幼児)をあやしながら萌っちは俺に騒いだ。
「ねえ久慈ちゃん、これ和泉さんだよね!? 何、何なの!?」
俺は、少し思い当たることがあった。
「……あのさ、萌っち、和泉さんが小さくなる直前、和泉さんの後ろにいた女の人見えた?」
「え? そんな人いた?」
萌っちはぽかんとした。
「…………」
俺は両手で顔を覆った。そうか、あの女の人は霊的な存在か。あー、こないだ恩師に会いに行った時、居合わせていた化生のボスたちに聞いた話と、和泉さんのことが一致したぞ……。
「……多分、和泉さんの同居人さんの繋がりのほうが事態に詳しい」
和泉さん(幼児)が泣き濡れた目でうめいた。
「ちとしぇ……」
「えーと、和泉さん。同居人さんって、金谷千歳さん?」
「うん……」
「ああー……そうか……」
萌っちは、何もわかってない顔だった。
「えっ何、何がわかったの!?」
「ちょっと以前、トラブってるところの話を聞いたことがあって……それが和泉さんたちのことだなって、今わかった」
「どういうこと!? どういうこと!?」
「後で詳しく話す。あの、とりあえず和泉さんを家に送り届けたほうがいい。萌っちの車、チャイルドシートあるよね?」
「う、うん」
「お会計済ませとくから、和泉さんを車に乗せといて。俺、同居人さんに事情話せるから、俺も一緒に行く」
そう言う訳で、和泉さんの住所を調べ、俺達は車でそこまですっ飛んでいった。




