ただならぬ知らせに動揺したくない
あけおめLINEを鹿沼さん(元悪霊の子)にも送って「今年もよろしくお願いします!」と返事がきていたのだが、その後とんでもない追加返信があった。
「ごめんなさい、言いにくいんですけど、でも言わないでおくのもできなくて、和泉さんのお父さんが訴えられてるのって知ってますか?」
え!?
訴えられる理由は想像つく、詐欺みたいな商売してるもん。でも、現在の話として、母親は病気の上に父親は訴えられてるの!?
「ごめん全然知らなかった、詳しいこと教えてくれるとうれしい」
そう送ると、すぐに返信があった。
「私もそんなに詳しくないんですけど、和泉さんのお父さんお母さんの商売でお金すごく使ってた人の子供が、すごく怒って訴えることにしたって言って、被害者集めて訴えようってことでうちにも話が来たんですけど、私の親はもう関わりたくないって断って、それ以上は全然わかんないです」
「そっか……」
「ちょっと前の話で、和泉さんは何も悪いことじゃないんだけど、なかなか言えませんでした」
言いにくい気持ちはわかるよ、でも、それを乗り越えて言ってくれてよかったよ。
「いや、教えてくれてありがとう。すごく助かった。詳しく聞ける伝手あるから、そっちにも聞いてみる」
伝手というのは藪春人さんだ。俺の両親周りのことはよく調べてるだろうから、詳しく知ってても全然おかしくない。
「そうですか、すみませんお正月なのに」
「大丈夫、知らないより全然良かった、教えてくれて本当にありがとう」
新年早々こんなか……。
藪さんに質問メールを送ってから、こたつで組紐を作ってる千歳に事情を愚痴ったら、『お前本当に大変だな……』と同情されてしまった。
『えっと、お前の父ちゃんが訴えられたとして、お前何か被害あるのか?』
「法的には特に何もないはずだけど……負けるにしろ和解にしろ父親はお金取られるだろうから、お金に困ったとか言って、貸してくれって連絡取られるのは嫌だ。だから事情はなるべく知っときたいし、できる対策はしときたい」
『そっか。もしお前の父ちゃんが金の無心に来たら、ワシ倉沢静の格好になって怒鳴って追い返してやるよ、ごつくてでかいから怖いだろ』
「ありがとう、でも手は出さないでね」
『やさしいなお前』
「やさしくはない、千歳が手を出して法的に不利になるのが怖いだけ」
父親は、自分が悪い事してるのわかってて仕事を回してる人間だ。法を味方につける発想もできるだろう。下手に傷害事件にされて訴えられたりしたら千歳の立場が悪くなるし、千歳からお金を引き剥がされるかもしれない。
ほどなく藪さんからメールの返信が来たが、鹿沼さんの話の補強になるものだった。両親のシンパ(被害者)の一人の子供が弁護士だったらしくて、久々に実家に行ったら老後の蓄えを全部失っていた親に驚愕し、自分の採算度外視で訴えることにしたそうだ。被害者を探して声をかけて、集団で訴えているとのこと。俺の父親がダメージを抑えられるとすれば和解だが、それでも相当な金を取られるだろうとのこと。
藪さんのメールには最後にこうあった。
「大変申し訳ない、先日お会いしたあとにわかった話なので、お耳に入れることができませんでした」
「いえ、教えてくださって本当にありがとうございます。元旦に申し訳ありませんでした」
俺が大きくため息を付いた時、千歳のスマホが鳴った。電話?
『何だ? あれ、緑さんだ』
千歳は電話に出て、そしたらスマホから俺にも聞こえる勢いで緑さんの声がした。
「千歳ちゃん大丈夫!? 何も起こってない!?」
『ど、どうしたんだ?』
「大変なことがあったの!!」




