大晦日にはのんびりしたい
二人で大掃除を済ませ、追加の買い出しも手伝ってから迎えた大晦日。夕飯には年越しそばがでた。鶏肉と長ネギの汁そば……うん? なんか鶏肉が普通のと違うような?
千歳が自慢げに笑った。
『奮発して鴨南蛮だぞ!』
「えっ、これ鴨肉!?」
俺は改めて汁そばを覗き込んだ。そうか、鶏肉じゃなかったのかこれ。
「俺、鴨食べるの初めてかもしれない」
『え!? マジか!?』
千歳は目を丸くした。
「だって普段の食事でそんなに出ないし、いつでも食べられるような金額じゃないじゃん鴨って」
実家にいた頃食べた記憶もないし、実家を出て以降は食べられるゆとりがなかった。
『うまいぞ、食べてみろ』
「じゃあ、いただきます」
鴨肉をつゆにくぐらせて食べてみると、普段食べる鶏肉よりずっと柔らかく、それでいて旨味が濃かった。
「おいしい! 鴨ってこんなにおいしいんだねえ」
『へへ、初めて作った割にはうまくできた』
千歳もおいしそうに蕎麦をたぐっている。
「いい年越しだ、こんなにおいしいもの食べられるなんて」
『大げさだなあ』
千歳は笑った。
おそらく鴨の脂で焼いたらしい長ネギも、とてもいい風味で、俺は鴨葱という言葉の意味を実感した。
おせちの先取りのなますと煮しめもおいしかった。去年寝こけた失敗があるので一合だけにしたが、日本酒も久しぶりに飲んだ。
「いやー、いい気持ちだ」
『ほろ酔いくらいにしとけよ』
「去年のことは大変に反省しております」
夕飯前にお風呂は済ませたし、食器洗ったらあとはもう寝るだけだ。
ほろ酔いで布団に入り、起きてから親しい人たちにLINEやDiscordで「あけましておめでとうございます」を送り、お雑煮とおせちをつつき。
一年の始まりが平和で良かったと思っていたけど、その後、俺にはあんまり平和じゃない知らせが立て続けに入ることになる。




