いい夫婦なら応援したい
南さんと佐和さんが、「ご様子をお伺いしたいです」とうちに来た。
南さんが玄関先で微笑んだ。
「和泉様は、骨折のお加減はいかがですか?」
「コルセットしてれば大体は大丈夫になりました、おかげさまで」
俺は頭を下げた。佐和さんが「九様が目をかけてくださったとか?」と言った。
「はい、家に泊まらせてくれて、体治すお湯に浸からせてくれて」
『ワシも浸からせてもらって、成長痛良くなったんだ!』
南さんがまた微笑んだ。
「それはよかったです。いまお困りのことはありませんか?」
『困ったこと……うーん、こいつかワシがまた和束ハルに狙われるのが怖い』
千歳(朝霧の忌み子のすがた)は俺を指さした。
「今の守り刀があれば大丈夫です」
南さんは言い切り、佐和さんも頷いた。
「そもそも、和束ハルは守り刀を正面から攻略できないから守り刀がキャンセルされる状況を作ろうとしてたわけですしね」
『んー、そっかあ』
「守り刀は完璧になりましたし、そうすると和束ハルは和泉さんを狙う理由もないですし、大丈夫ですよ」
『うん、ならいいけど』
南さんは少し険しい顔になった。
「ただ、和束ハルが標的を変更して別の人を狙う可能性はありますし、そもそもここまでしてきたことを考えると放置できないので、今も捕まえるために全力を尽くしています」
『あーそっか、ワシが狙えなかったら他を狙うかもしれないのか……』
千歳は頷いた。南さんは頭を下げた。
「和束ハルが何か起こしたら、千歳さんの協力を仰ぐこともあるかもしれません」
『うん、わかった、ボコボコにしてやる』
千歳はファイティングポーズを取った。
佐和さんが「ところで」と言った。
「先日、峰朝日と籍を入れまして。私、峰水香になりました」
「え、そうでしたか」
『えっ、もう式あげたのか?』
千歳と声が被ってしまった。
「式は、面倒なので上げないで、はがきで各所に報告を済ませました、朝日は私の言うことを聞くようになってるので」
そう言って、佐和さん、いや峰水香さんは結婚報告のはがきをくれた。写真も何も無い、簡素……。
『そ、そっか』
千歳も俺も、水香さんが峰朝日さんの【ご主人様】なのを知っている。どういうやりとりがあったのやら。
「それで、私は引き続き本白神社に勤めるんですけども。本白神社を千歳さん絡みの拠点にするために今、活動を活発にしてる最中なんです」
「へえ、そうなんですか」
『栄えるようにがんばるのか?』
「そうですね、今度こんなのをやります」
水香さんはチラシをくれた。公開巫女体験?
「巫女服を着てもらったり、簡単な作法を教えたり、みたいなことをやります」
『へえー、まあ神社といえば巫女って普通は思われてるしなあ』
千歳は俺の袖を引いた。
『なあ、お前の予定開くなら一緒に見に行こう』
「あ、うん。スケジュール確認しとくよ」
そう言うわけで南さんと水香さんは去り、俺はふとした予感があって、裏垢メス男子、すなわち峰朝日さんの女装Twitterアカウントを見てみた。
……純白のウェディングドレスを着た、峰朝日さんらしき人の写真が上がっていた。ご丁寧に「ご主人様と二人きりの式を上げました」の文章付きである。
千歳に見せたら、お腹を抱えて大爆笑していた。
『そっちがドレス着るのかよ!』
「まあ、本当は式上げたんだねえ……水香さん、もしかしてタキシードだったのかな」
峰朝日さんの横に、黒い袖の手が見切れているのだ。
『だとしたら付き合いがいいなあ』
「いい夫婦なんじゃない、なんだかんだで」
人の好みはさまざまであり、お互いに合意の上でやってるなら、外野から言うことは何もないだろう。




