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子々孫々まで祟りたい 〜転んで祠を壊しちゃったら怨霊が子々孫々まで祟りに来たけど「俺で末代」と言ったら怨霊が困り始めて子孫を残させようと奮闘しだした件について〜  作者: zingibercolor・種・がくじゅつてきあかげ
第10シーズン

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狐のお宿に泊まりたい

「明日の夜6時、泊まる準備を済ませてから玄関の扉を開け。妾の家に繋がるようにしておく」


 そう九さんに言われたので、次の日の夜、泊まり道具や着替えをまとめて千歳と玄関に行った。


「本当に開けるだけでいいのかなあ」

『九さんくらいの狐なら、うちの玄関と異界繋げるくらい簡単だぞ。大丈夫だ』

「じゃあ」


 恐る恐る玄関を開けると、そこにはいつもと全く違う光景が広がっていた。

 山道らしい、草木が生い茂った道。少し先には立派な黒い門構えがある。


「え、あの門の先かな?」

『そうだな、結構立派な家だな』


 恐る恐る門の前まで行くと、紅白の花が咲き乱れる広い庭があった。囲いがあって、中でたくさんの鶏が地面をついばんでいる。その先に漆喰の大きな家があり、玄関らしき引き戸が見えた。


「入っていいのかな、インターホンとかないけど」


 立派な家なのだが、電化製品らしきものが見当たらないのだ。


『入って玄関叩いて、来ましたーって言えば大丈夫だよ』

「う、うん」


 門をくぐると、玄関の引き戸が開いて、子どもが二人顔を出した。え、普通の子じゃない、頭に狐耳が2つピンと立ってるし、なんなら顔も手も狐っぽい色の毛皮でふわふわ!


「ようこそ!」

「和泉様と千歳様ですね?」


 巫女服の狐の女の子たちは微笑んだ。


「あ、はい、和泉と申します。お招きいただきありがとうございます」

 俺は、前かがみにならないよう気をつけながら頭を下げた。前かがみになると胸が痛いんだよ!


『こんばんは! ワシも入れてくれてありがとう!』


 千歳が笑って言う。


「九様に申し使っております。どうぞ奥へ」

 案内されるがままに家に上がり、奥の畳の間に通されると、九さんが座卓についていた。


「おお、よく来たな。まあ座れ」


 九さんは俺達へ座るように手を動かした。


「今日はありがとうございます、よろしくお願いいたします」

『よろしくー!』


 二人でお礼を言い、座椅子に座らせてもらう。さっきの狐の子がおしぼりを持ってきてくれた。


「どうぞ!」

「あ、すみません」

『ありがとう!』


 手を拭いていると、九さんに言われた。


「今食事を出させる。その後はうちに湧いている湯に入れ、これも少しは体を癒やすはずじゃ。宇迦御魂神様の話は、食事しながらにしよう」


 そう、俺たちが九さんちに泊まりに来たのは、宇迦御魂神様が会いに来るからでもある。


「ありがとうございます、ごちそうになります」


 さっきとは別の、狐耳だけ生えた巫女服の女の子たちが次々にお盆を持ってきた。並べられたメニューは、ナスの鴫焼き、刻みオクラの鰹節がけ、みょうがと豆腐の味噌汁、鶏の照り焼き、ご飯。千歳は単に「うまそう!」とはしゃいでたのだが、俺はメニューを見て、あることに気づいた。


「あ、もしかして、宇迦御魂神様にお会いするから五葷と獣肉なしですか?」

「そうじゃ、礼儀として潔斎をな。明日の朝もそうじゃぞ」


 朝ご飯も出してくれるんだ、世話になりっぱなしだな……一応お金包んできたけど、それでいいのかな……。

 三人でいただきますをして食べ始めたが、俺は、襖の向こうに人の気配を感じてそちらを見た。九さんも気づいたらしくて「これ、何をしとる」と席を立って襖を開いた。すると、さっきの狐の女の子たちが転がり込んできた。襖に密着してたんだろう。

全身毛皮の女の子、狐耳だけ付いてる子、骨格からしてだいぶ狐なのに頑張って巫女服だけ着てる子。ケモナー大歓喜だな……。


「アホタレ、そんなに珍しいか」


 九さんに怒られた女の子たちは、口をとがらせた。


「だってお客様なんて久しぶりなんですもの!」

「しかも男の人!」

「なんでうちは女ばっかりなんです!?」


 九さんは女の子たちの頭を軽くはたいた。


「色恋は修行の邪魔だと言っておろうが!」


 そして九さんは俺の方を向いて、「すまんの」と言った。


「こやつらは妾の弟子なんじゃが、女しか弟子を取っておらんでの、男が珍しいんじゃ」

「あ、いや別に、大丈夫です」


 女子校みたいな環境なのか。俺みたいに特にイケメンでもないのが珍しがられるって、相当男に飢えてるんだな……。


『ワシも別に女じゃないぞ?』


 千歳は自身を指さした。狐の女の子たちは目を見開いた。


「ええ!?」

「どこからどう見ても女の子ですけど!?」

『いや、その、服着てたらそうなんだけどさ』


 千歳は説明に苦慮したように眉根を寄せた。まあ服を脱いだら確かに一部男なんだけど、裸になるのもいやだろうしな。

 俺はとりなした。


「その、ちょっと医学的に性別が区別つかないだけで、普通にしてたら女の子の体格ですね。まああんまり気にしないでください」


 九さんは狐の女の子たちをしっしっと追い払った。


「下がらんか、真面目な話もできんじゃろうが」

「はあーい」

「ちぇー」


 女の子たちが退場して襖を閉めたあと、九さんは席について言った。


「で、宇迦御魂神様じゃがな。お主らの様子を見たがってはおられるのじゃが、今回の礼は別にいらんとおっしゃっておられるのじゃ」

「え、そうなんですか?」

『なんで? 今回すごく霊力貸してくれたんだろ?』

「詳しいことは妾にもわからん。明日話してくださるかもしれんが。まあ、お主らが礼を持って接すれば恐ろしい方ではない」


 謎が残ったままだったが、とりあえず食事は終わり、俺達は狐のお宿のお風呂を借りに行ったのだった。

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