こんな日々だから愛おしい
日々が過ぎる。千歳と一緒になったことを皆に伝えて驚かれたり祝われたり、千歳の誕生日を祝ったり、りゅーちゃんの戸籍作成のために家庭裁判所に行ったり、りゅーちゃんにワクチンを打ち進めたり。
そしてりゅーちゃんの戸籍ができ、りゅーちゃんは正式に千歳の養子になり、りゅーちゃんを通わせる保育園にも見通しが立った。りゅーちゃん、保育園でたくさんお友達作ろうね。
さらに、俺たちは弁護士さんに相談して、お互いに何かあったときもお互いがりゅーちゃんの親相当のことができるようにした。
そんな日々。夜、俺は、いつもみたいに絵本を読んでりゅーちゃんを寝かしつけていた。
りゅーちゃんは俺に抱きついて眠ってしまい、俺はしばらくその寝顔を見ていた。
千歳が、りゅーちゃんを起こさないようにそっと寝室に入ってきて、りゅーちゃんと俺と川の字に寝そべった。
『寝たか』
「寝た」
『ワシも寝ちゃう、ここんとこ疲れた』
「おやすみ」
千歳が布団に入ってりゅーちゃんを抱きしめたので、俺はりゅーちゃんごと千歳を抱きしめた。
「なんか俺さあ、全部手に入った感じがする」
『全部?』
俺は千歳に微笑みかけた。
「全部」
千歳は目を丸くし、そして苦笑した。
『欲のない奴』
「だって、大事なものは全部ここにある」
『……そっか』
次の日の朝。千歳が朝ごはんを作る間、りゅーちゃんと遊んであげていると、ふと千歳が言った。
『あのさあ、和泉』
「何?」
『りゅーちゃんが大人になってもさ』
「うん」
『結婚したままでいてやろうか?』
「え!?」
俺はびっくりして叫んでしまった。りゅーちゃんが「おとーさん?」と不思議そうに俺を見上げる。
「本当!? 本当に結婚したままでいてくれるの!?」
『まあ……いいかなと思って』
「本当!? 本当に……!?」
俺は、思わず涙ぐんでしまった。
「おとーさん? いたいいたいなの?」
「大丈夫、痛くないよ、うれしいんだよ……」
思わず鼻をすすったその時、玄関ドアがめちゃくちゃに叩かれた。
『何だ何だ』
「俺出るよ」
玄関を開けると、なんと、りゅーちゃんと同じ年頃の女の子がいた。おかっぱの普通の女の子に見えるが、目だけは緑の猫目。大人のTシャツだけ着て、その子は奮然と叫んだ。
「お前らか! 我を愚かなる毛無しにしたのは!」
「何!?」
千歳も俺の後ろに来て『何だ!?』と騒いだ。りゅーちゃんは「だーれ?」と首を傾げる。
すると狭山さんが駆けてきて「クー! おバカ! そのまま行っちゃダメって言っただろ!」と女の子を抱え上げた。俺はびっくりした。
「え、クーって……まさかクーちゃん!?」
狭山さんの飼い猫の名前は、確かクー。目を見るに、この子は猫又……どういうこと!?
狭山さんは、ズレた眼鏡のまま女の子を抱き直して言った。
「ず、ずいぶん前に千歳さんにクーの首輪に霊力を込めてもらったじゃないですか、その影響で猫又になっちゃったみたいです」
女の子は吠えた。
「責任を取れ!」
『猫又ってそんなんでもなるのか!?』
りゅーちゃんは、興味津々でクーちゃんを見つめている。
「あ、りゅーちゃんは同じ年の子見るの初めてか」
クーちゃんは怒った。
「我を愚かなる毛無しと一緒にするな!」
俺は頭を掻いた。
「あー、その、私、猫又に知り合いがいるんで、猫から猫又になった時どうすればいいか聞いてみますね」
りゅーちゃんは「くーちゃん!」と騒ぎ、千歳が言った。
『同い年くらいだし、お友達になってもらいな』
「おともだち!?」
りゅーちゃんの目がキラッキラになった。クーちゃんはまた奮然と吠えた。
「我を! 愚かなる毛無しと! 一緒にするな!!」
りゅーちゃんはまるで意に介さず、クーちゃんに「いっしょにあそぼ!」と言った。狭山さんがすまなそうに言った。
「その、来たのはお願いがあって……子供服貸してもらえませんか……」
「あ、わかりました。りゅーちゃん、お友達にお洋服貸してあげようね」
「うん!」
『あがって! 似合う服見繕うよ』
千歳が狭山さんを促し、りゅーちゃんはクーちゃんに話しかける。
「くーちゃん、おえかきする? おすなばあそびする?」
クーちゃんは狭山さんに抱かれたまま、忌々しげな顔をした。
「ええい、愚かなるチビ毛無しめ……」
閻魔大王様のことは解決したし、りゅーちゃんのことも一段落ついたけど。
俺たちの人生には、こんな感じの事件がまだまだたくさんあるのかもしれない。




