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子々孫々まで祟りたい 〜転んで祠を壊しちゃったら怨霊が子々孫々まで祟りに来たけど「俺で末代」と言ったら怨霊が困り始めて子孫を残させようと奮闘しだした件について〜  作者: zingibercolor・種・がくじゅつてきあかげ
26シーズン

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1108/1110

君の誕生祝いたい

 土曜日、小児科の予約の日。千歳と二人でりゅーちゃんを連れて行って、怖がるりゅーちゃんをなだめて、今打てるワクチンを全部打ってもらって、泣くりゅーちゃんをなだめて。


「りんごじゅーちゅ……」

『よしよし、帰ったらあるからな』

「あんぱんまんちょこもたべゆ……」

「1本だけね」


 そんな事を言いながらバス停に行き、バスを待っていたら、スマホが震えた。この震えは電話だな。

 スマホを見ると、和泉辰の表示。アドレス帳に登録した覚えはないが、あの子ならスマホの表示いじるなんてお茶の子さいさいか。

 俺は電話に出た。


「はいもしもし、どうしたの?」

[すぐ出てくれて助かる。実は、あなたの耳に入れたいことがあったので知らせに来た]

「何?」

[先日、私の愛すべき人、和束美枝氏と初めて直接話したのだが]

「え!? ええ!? 和束美枝さんだったの!?」


 愛すべき人!? 和束美枝さん!? そりゃ、確かに辰くん(ちゃん)と縁がある人だが……。

 辰くん(ちゃん)は言葉を続けた。


[彼女は支援と愛を必要としていた。どちらも提供できるのは、私しかいなかった。まあ、実務的なことは弁護士の力を借りているが]

「そうだったんだ……」

[それから、彼女とちょくちょくやりとりしている。彼女は、産んだ子全員の誕生日を覚えていたよ。本人は自分の子を愛せなかったと言っているが、育てる能力に難があっただけで、愛はあったと私は考えている]

「そうか……そうだね」

[それで、大変なことが判明したのだが]

「え、何!?」


 まだ何事かあるの!?


[金谷竜くんの誕生日は、今日だ]

「ええ!?」


 今日!? 今日三歳の誕生日!?


[命に関わるようなことではないが、あなたは知りたい情報だろうと思って]

「うん、教えてくれてよかった、ありがとう」


 三歳の誕生日……お祝いしてあげなきゃ、ちゃんと。


[では、いろいろやることがあるので、これで失礼する。和束美枝氏とのこともあるしね]

「うん、とっても助かったよ、ありがとう」


 俺は電話を切り、不思議そうにしている千歳に「りゅーちゃんの誕生日、今日なんだって!」と伝えた。


『マジか!?』

「うん、和束美枝さん、産んだ子の誕生日全部覚えてたんだって」

『マジか、そうか、じゃあ今日ケーキ買ってやらなきゃ』


 りゅーちゃんは「けーき?」と不思議そうだ。


『ケーキは甘くておいしいのだぞ、りゅーちゃんは今日3歳だからケーキ食べていいんだぞ』

「けーき!? あまい!?」

『うん、とっても甘いぞー』


 千歳はりゅーちゃんの頭をなでた。俺は言った。


「プレゼントもあげなきゃ、何がいいだろう」

『お絵かき好きだし、なんかその辺でいいのないか?』

「うーん、じゃあ、いい画用紙と、あといいクレヨンとかにするか」

『駅前にいかないとケーキ屋ないし、家に帰る前に駅前行こう』

「そうだね、駅前なら文房具屋もあるしね」


 そう言うわけで乗るバスを変更、駅ビルがある方の駅へ。りゅーちゃんは、大量の人が往来する駅前を見て目をぱちくりしていた。


「いっぱいいゆ」

「もっといっぱい人がいるところたくさんあるよ」

「もっといっぱい……!?」


 まず文房具屋に行く。俺はいい画用紙のスケッチブックを手に取り、クレヨンも探して、32色のがいいやつだろうと思って買った。


「ほら、これでたくさんお絵描きしようね」

「いまおえかきすゆの」

『おうち帰ってからな』 


 それからケーキ屋に行き、するとりゅーちゃんはケーキのショーケースにひっついて離れなくなってしまった。


「じぇんぶ! じぇんぶたべゆの!」

『全部はダメ! お腹壊すぞ!』

「一個だけだよ、どれが一番いい?」

「じぇんぶたべゆのー!!」


 りゅーちゃんは渾身の力を込めて叫んだ。俺は困って千歳を見た。


「どうしよう」

『まあ誕生日だし、景気よくホールケーキ買おう。一番デコレーションが多いやつ』


 そう言うわけで、クリームとフルーツと砂糖菓子の人形が乗ったショートケーキをホールで買った。誕生日用のろうそくももらい、りゅーちゃんをショーケースから何とか引き剥がし、帰途につく。

 夕飯にはケーキと、りゅーちゃんの好きなものばかり出た。鮭おにぎり、五目豆、かぼちゃの煮物。

 ケーキに火をつけたろうそくを立て、俺たちはりゅーちゃんに言った。


「ふーして火を消すんだよ」

「ふー?」

『ろうそくにお口ふーっとしな』


 りゅーちゃんはよくわかってない顔で「ふー!」と騒ぎ、「きえい!」とろうそくの火をつかもうとしたので、俺たちはあわててりゅーちゃんの手を押さえた。


「火はちょっと早かったか……」

『消しちゃえ消しちゃえ』


 千歳が火を吹き消し、その隙にりゅーちゃんはケーキを手でもぎとって口に入れてしまった。そして目をまんまるくした。


「おいちい……」


 もしかして、りゅーちゃんはケーキ食べるの初めてか? いや多分そうだ、誕生日祝ってもらってた可能性低いもん。


「おいしいねえ、でもまずご飯食べようねえ」

「や! けーきもっとたべゆ!」


 りゅーちゃんがさらにケーキをもいで、口周りをクリームでべったべたにして食べるので、千歳が『こりゃもうダメだ』と天を仰いだ。


『まあ誕生日だし、今日はもう特別! 好きなだけ食わせよう』

「まあ、食べられそうならご飯も食べさせようね、栄養的な意味で」

「おいちいー!」


 りゅーちゃんは全身が嬉しそう。そうだね、誕生日だもんね、これくらい楽しくったっていいよね。これから毎年、君の誕生日を祝おうね。

 俺は、べったべたになりながらケーキを食べているりゅーちゃんの写真を撮って、これからも記念日の写真はたくさん残しておこうと思った。

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