ずっと一緒にいてあげたい
千歳は話してくれた。緑さんも朝霧春太郎に絶対りゅーちゃんを渡したくないこと。でもそうなるといろんな家でりゅーちゃんの争奪戦になること。丸く収めるには、千歳がりゅーちゃんを引き取って養子にするしかないこと。
『だからさ、うちでりゅーちゃんを育てるとか……どうだ……?』
千歳は、恐る恐る聞いてきた。
うちでりゅーちゃんを育てる? じゃあ、りゅーちゃんはずっとうちにいる?
俺の口からは、「いい、すっごくいい……」の言葉が自然に漏れた。
「うちの子にしようよ。至らないところはあるかもしれないけど、たくさんかわいがって育てよう。りゅーちゃんを、10人分幸せにしてあげよう」
千歳は、ホッとしたようだ。
『そう言ってくれてよかった。お前りゅーちゃんにいてほしそうだったけどさ、ワシお前とこのことについてはっきり喋ったことなかったからさ』
「りゅーちゃんにはずっとうちにいてほしいよ。そりゃ大人になったら独り立ちするだろうけど、それ以外で手放したくない」
『そっか』
千歳はにこにこだ。そうか、千歳もりゅーちゃんがずっといてくれると嬉しいんだ。
じゃあ、りゅーちゃんをずっとうちで育てるにあたって、なんかしておかなきゃいけないことあるかな? とりあえず、りゅーちゃんが戸籍取ったら千歳の養子になって……ん? じゃあ、俺は公的にりゅーちゃんの何になるんだ?
いや、俺、何者でもないぞ!? 俺と千歳の間に公的な結びつきは何もないんだから、俺はりゅーちゃんの保護者の同居人Aでしかない! それは……それはちょっと良くないんじゃないか!?
俺がりゅーちゃんの父親になる方法、それは……。
「……ねえ、千歳」
『なんだ?』
「りゅーちゃんをうちで育てるにあたって、俺がりゅーちゃんのお父さんになるために、どうしてもお願いしたいことがある」
『うん?』
俺はこのお願いをどうしても通したい。なので、躊躇なく千歳に土下座した。
「俺と結婚してください!」
『ええ!?』
「りゅーちゃんが大人になるまでの間でいいから! 俺をりゅーちゃんのお父さんにしてよ! 俺を法律で縛ってよ!」
俺は頭を下げっぱなしなので見えなかったが、千歳が慌てる気配がした。
『おい恋人は5年っつったろ! 伸ばすな!しかも結婚ってお前!』
「千歳の性別的な意味で法律的にできなかったらパートナーシップ制度使って後は弁護士さんに相談するから! 俺と一緒になってよ!!」
『そういう問題じゃなくて!』
「そういう問題だよ!!」
俺は顔を上げた。千歳はあわあわしていた。俺は言葉を続けた。
「俺、千歳と一生一緒にいるって心に決めてるんだ。で、結婚しないと俺はりゅーちゃんの保護者の同居人でしかないんだ。りゅーちゃんに何の責任も持たない立場なんだ。俺に、りゅーちゃんを育てる責任を負わせてほしい」
『そ、それは……そうなのかもしれないけど……』
千歳は考え込み、やがて大きなため息をついて『まあ……りゅーちゃんが大人になるまでな』と言った。
『それ以降は、また考える』
「いい返事を期待しています」
『そんなまっすぐな目で見られても!』
騒いだ割にりゅーちゃんは起きず、1時間ちょいくらい経ってからやっと起きてきた。
「ちーちゃん! おじちゃん! おなかしゅいた!」
『おおよしよし、元気になったか、すぐご飯にするからな』
「怖かったね、もう怖くないからね、おじちゃんたちが怖いのなんてどっかやっちゃうからね」
りゅーちゃんにバナナヨーグルトとフルーツグラノーラと野菜スープを食べさせ、食べているりゅーちゃんに俺たちはこう言った。
「りゅーちゃんはね、これからずっとこのおうちにいるんだよ」
『ワシらとな、これからずっと一緒にご飯食べるんだぞ』
「?」
りゅーちゃんはわかってない顔だったが、しばらくして首を傾げて「りゅーちゃん、ちーちゃんとずっといっちょ? おじちゃんとずっといっちょ?」と聞いてきた。
『ずっと一緒だぞ』
「ずっと一緒だよ」
そう、君はうちの子。君が大人になるまで、ずっと一緒。君が大人になっても、気持ちは君とずっと一緒。




