絶対奴には渡さない
りゅーちゃんを公園に連れて行って遊ばせ中。りゅーちゃんは最初は砂場をスコップで掘りまくっていたが、早々に飽きたらしく、「しゅべりだいしゅべる!」と滑り台に走っていってしまった。俺はりゅーちゃんが高所から落ちないように支え、りゅーちゃんはそんなこと気にせず何回も登って滑り。
暑いので、俺はタイミングを見て、「休憩! 麦茶飲もうか!」とりゅーちゃんを捕まえた。
「もっとしゅべる!」
「麦茶飲んだらまた滑ろうね」
りゅーちゃんに水筒の麦茶を飲ませて、俺も喉が渇いたので麦茶を飲んで。俺が飲んでる隙に、りゅーちゃんは「ぶーぶーいゆ!」と公園の外に停まっている車の方へ走っていってしまった。しまった!
「こら! 車危ないよ!」
追いかけようとしたら、車のドアがいきなり開き、40過ぎの男性が出てきて、なんとりゅーちゃんの手を思い切り引いて車に引きずり込もうとした。
りゅーちゃんはびっくりしてもがいたが、男は「来い!!」と叫んで、なおりゅーちゃんを引きずる。俺は肝をつぶして駆け出し、りゅーちゃんは「やー! おじちゃん! おじちゃん!!」と叫んだ。
すると、バッチーンと音がして、男性はふっ飛ばされた。りゅーちゃんは大泣きし、俺に駆け寄ってしがみついてきた。
「おじちゃん! おじちゃん!!」
俺は慌ててりゅーちゃんを抱き上げ、男が起き上がってきたのですっ飛んで家に逃げた。
坂を駆け登ったのでヒイヒイ言いながらバッと玄関を開け、千歳が『どうした!?』とびっくりするので俺はハアハアしながら言った。
「りゅ、りゅーちゃんが攫われそうになった!」
『ええ!?』
「お、お守りの防御で弾かれたからその隙に逃げてきたけど……」
りゅーちゃんは大泣きして言葉にならない。緑さんが血相を変えた。
「その攫おうとした人、40過ぎくらいのやたら顔がいい男じゃありませんでした!?」
「そ、そんな感じです」
「春太郎だ……!」
『ええ!?』
緑さんは俺に詰め寄った。
「撒きました!? 今あいつどうしてます!?」
「りゅ、りゅーちゃんのお守りに弾き飛ばされてだいぶ飛んでって、とっさに逃げたんでよくわかりません」
「身から出た錆……!」
緑さんは頭を抱え、大きくため息をついて言った。
「……後の始末はしておきます、春太郎にはもう絶対にりゅーちゃんに関わらせません、約束します」
千歳は心配そうだ。
『大丈夫か? 髪束で黙らせられるか?』
「各所に配って数の力で黙らせる。やるわ」
緑さんは奮然と帰っていき、しかしりゅーちゃんは俺にしがみついて泣き止まなかった。相当怖かったんだろうな……。
「よしよし、もう怖くないからね、怖い人はもう来ないからね」
『怖かったなー、もう大丈夫だからな』
「ひっ、ひっ……」
2人であやすも、なかなか泣き止まない。そのうちりゅーちゃんは泣き疲れて寝てしまい、俺はりゅーちゃんをそっと布団に寝かせた。りゅーちゃんの頬に残った涙の筋を見つめる。こんな……こんな小さな子を、いきなりさらって車に押し込めるようなことするだなんて。
俺は、普段あんまり怒ることはない。だけど、今は別だった。
「千歳」
『なんだ?』
「俺、朝霧春太郎には絶対りゅーちゃんを渡さない。こんなに怖がらせる奴に渡すなんて、絶対にあり得ない。りゅーちゃんは、ちゃんとかわいがってくれる人にしか渡さない」
ふつふつと湧き上がる怒りを込めてそう言うと、千歳は、『あの、それなんだけどさ……』と言い出した。
そして千歳は、緑さんからの頼みを話してくれた。うちでりゅーちゃんを引き取ってくれないか、ということ。




