番外編 金谷千歳と引き取り先
緑さんから連絡があった。りゅーちゃんが誰のところでも暮らせるようになったから、りゅーちゃんの引き取り先について、まずワシと一対一で話したいんだって。
りゅーちゃんを寝かしつけた後の和泉に話したら、「そっか……この時が来たか……」と肩を落としていた。
『寂しいよな……』
「まあ、いつかは来ることだったからね……一対一? いつもの喫茶店かどっかで話すの?」
『まあそれもいいんだけど、りゅーちゃんがいると家でいろいろやることあるから、あんまり長く外出たくないんだよな』
「じゃあ、緑さんにはうちに来てもらって、その間、俺とりゅーちゃんはしばらく外遊びしてるとかどう? 午前の早いうちなら、まだそこまで暑くないしさ」
『じゃあ、それで』
そういう訳で、緑さんが来る日。和泉はりゅーちゃんを公園に連れ出してくれた。それから緑さんが来て、上がってもらってお茶を出したら、緑さんは開口一番「お願いがあるの」と言った。
『うん、何?』
すると、緑さんはすすっと座椅子を離れ、なんとワシに土下座した。
「りゅーちゃんを引き取って欲しいの! 千歳ちゃんの養子にして欲しいの!!」
『ええ!?』
ワシはびっくりした。
『ちょっ、ちょっと顔上げてくれよ緑さん! 話がよくわかんないよ!』
「それはそうだと思うけど、でも私のわがままなの! 千歳ちゃんしかいないの!」
『とりあえず、理由を話してくれよ』
「うん……」
緑さんは顔を上げて、話してくれた。
「春太郎がね……なんとかしてりゅーちゃんを引き取ろうとしてるの。でも……私は許せないの。自分でもびっくりしてるんだけど、自分がそこまで子供にこだわりあると思ってなかったんだけど、でも許せないの。私は自分の子供を抱けなかったのに……春太郎が自分の子供を抱けるなんて、どうしても許せないの」
『…………』
緑さんは、旦那の朝霧春太郎にウイルスを移されて、それで子宮のがんになって、子供を産めない体になった。それは……そうなるよな。
緑さんは言葉を続けた。
「私、この件で自分の発言力を高めるために、できるだけすべてのことに関わってきたの。だから、私が強硬に反対すれば春太郎がりゅーちゃんを引き取るのは防げるはず。でも、りゅーちゃんくらい霊力が高い子はどの家だって欲しがるし、どの家も黙らせられるのは、千歳ちゃんだけなの」
『ワシがりゅーちゃんを引き取ると、丸く収まる?』
「そう」
そうなんだ……。
どうしようか、ワシはりゅーちゃんがいなくなったら寂しい。和泉もりゅーちゃんにいてほしいみたい。じゃあ、うちで引き取ってもいいんじゃないか? うーん、でも一応、和泉とちゃんと話し合ってからだな。
『えっとさ、ワシも和泉もりゅーちゃんにうちにいてほしいけど、和泉とちゃんと話し合ってから正式に返事するんでもいいか?』
そう返事すると、緑さんは頷いた。
「それでお願い。りゅーちゃんを育てるお金は、私が貯金全部吐き出すから」
『いいよ、金欲しいからりゅーちゃんにいてほしいんじゃないもん。それにワシ、そこそこ金持ちなんだぞ?』
ニッと笑ってそう言うと、緑さんは「そう」と、やっと少しだけ微笑んだ。
『あとさ、霊力欲しい家を黙らせるのにちょうどいいのあるから』
「何?」
ワシは、脱衣場の棚の奥にしまっておいたりゅーちゃんの髪束を持ってきた。
『これ、りゅーちゃんが多分生まれた時からずっと伸ばしてた髪』
「取っといてくれたの!?」
『うん。りゅーちゃん、家同士の取り合いに巻き込まれるだろうって思ってたからさ、こういうの作っといて、うるさいこと言ってくる奴に渡せばある程度黙るかなと思って』
ワシは、短く切りそろえた時の髪も合わせて、緑さんにりゅーちゃんの髪を全部渡した。
『だから、緑さんにうるさく言ってくる奴を黙らせるのに使ってくれよ、これ』
緑さんは涙ぐみ、「ありがとう……」とつぶやいた。
「ちゃんと使わせてもらうわ、乱用はしないけど、絶対に役立てるから」
『うん、緑さんなら大丈夫だって思ってるからさ』
その時、荒々しく玄関が開き、大泣きしてるりゅーちゃんを抱いた和泉が飛び込んできた。すごく息を弾ませている。
『どうした!?』
「りゅ、りゅーちゃんが攫われそうになった!」
『ええ!?』




