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子々孫々まで祟りたい 〜転んで祠を壊しちゃったら怨霊が子々孫々まで祟りに来たけど「俺で末代」と言ったら怨霊が困り始めて子孫を残させようと奮闘しだした件について〜  作者: zingibercolor・種・がくじゅつてきあかげ
26シーズン

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番外編 和束美枝と愛

 何もわからない。全部嘘であって欲しい。ある時ふと目が覚めて、全てが夢だったということになって欲しい。

 20年、家の中で平穏に暮らしていたのに、外ですごい音がしたと思ったらお母さんが傷だらけで倒れていて、怖い人たちがどっと押し寄せて、怖い人たちは警察で、何もしてないのに捕まえられて、取り調べられて。

 そこで聞いた。お母さんが「お前は子供を生むしか能がない」と言って私に産ませた子、養子に出して金を取っていると聞かされていた子たち、9人みんな殺されてること。お母さんがみんな殺したこと。養子に出さなかった末っ子、毎日私がご飯を作っていたその子はたった一人の生き残りで、ずっと地下室に閉じ込められて育っていた事。普通に暮らしていると思ってたのに。ベビーシッターの子がいるって聞いてたのに。

 信じられなくて、でも確かに養子に出した後の話は一言も聞いたことがなくて、殺された子たちは遺骨をバラバラにされて売られたと聞いて、もう何もわからなくて、泣いて、泣いて、目が溶けそうなほど泣いて。

 拘置所はなんにも馴染みがなくて、家の外だから眩しくて、目がチカチカして。聞き慣れない音がして、ずっと耳が痛くて。

 でも、知らない人が面会に来て、それは弁護士さんで、偏光サングラスとかイヤーマフとかいろんなものを差し入れてくれた。取り調べにどう答えればいいか、たくさん相談に乗ってくれた。

 弁護士さんは、匿名の人に頼まれて私の弁護を引き受けてるってことだった。弁護士さんに、誰か弁護士をつけてくれるような人に心当たりあるかと聞かれた。全く心当たりはなかった。

 面会が何回か重なって。弁護士さんがこう言った。


「拘置所内でのスマホ使用が許可されましてね。あなたを支援してくれている方、やっと名乗ってくれたんですが、その和泉辰さんがあなたと話したいそうです」

「和泉辰さん……?」


 全然知らない名前だ。誰なんだろう。

 弁護士さんが差し出したスマホはスピーカーモードになっていて、そこから少女みたいな少年みたいな声がした。


[ああ……。やっとであなたにチャンネルできた]

「あなたはどなたですか? なんで私を助けてくれるんですか?」

[縁があったからだ]

「縁?」

[いずれ話そう。私には【愛】の実践が必要なんだ。あなたには【愛】が足りない]

「そりゃ、自分の子供も愛せませんでしたし……」


 一人目の子は手に余りすぎて自分から投げ捨ててしまった。それから産んだ子は、自分の手に抱くことすらなかった。知らないうちに9人殺されていて、末っ子の生き残りすら、会ったことがない。こんな、こんなひどい母親いるだろうか?

 でも、和泉辰さんはこう言った。


[違う、【君が愛される経験】が足りないんだよ。そして、私には【誰かを愛する経験】が必要なんだ。付き合って欲しい]

「愛……?」

[あなたのことをずっと心配していた。義務感がないとは言わないが、あなたに愛を注ぎたいと思うようになった。私にあなたを愛させてほしい。見返りはいらない。ただ、あなたが愛される経験の提供は、あなたに資すると思う]

「なんで、そんなにしてくれるんですか?」

[私以外に、あなたを助けられる人がいないからだ。私は、ネット上のあなたを知る立場にあった。すべてが崩壊したとき、助けられるのは私しかいないとわかっていた。だからだ]

「ネット上? Twitterとかですか? 大したことツイートしてませんよ……?」

[自分のことを理解しようと勉強して、できる範囲で精一杯努力している姿勢が伝わってきた。好感が持てたよ]

「そうなんですか……?」

[あなたの特性に合わせた支援を考える。そのために理解のある弁護士を雇った。今後も勾留は続くだろうが、まずあなたが罪に問われないようにすることを目指そう。それからのあなたの暮らしも考えておく。大丈夫、私の持てる限りの力を使ってあなたを守る]

「……私、そんなに救われていいんでしょうか……」

[私は、あなたは救われるべきだと思っている]

「…………」


 私は涙が出た。これまでの涙とは違う涙だった。

 私はなんにもできなかった。外に出ることができなかったし、学校に通い続けることもできなかったし、自分の子供を育てることもできなかったし、自分の子供を守ることもできなかった。

 でも、そんな私でも、愛してくれる人がいるの? そんな私でも、愛される資格があるの?

 私は、いつまでもいつまでも泣き止めなかった。

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