あなたに名乗る名が欲しい
名前? なんでいきなり?
とりあえず、今すぐはできない。俺は俺のファンに返事した。
「ごめん、今すぐじゃなくてもいいかな? これから、りゅーちゃんにご飯食べさせてお風呂入れて寝かしつけないといけないんだ」
その後、まだ仕事もあるしな。
[急がないが、早いと嬉しい]
「じゃあ、仕事もあるし10時半くらいかな、それくらいにまた」
[ありがとう、待っている]
そういう訳で諸々を済ませたら、ちょうど10時半。俺は俺のファンに返事した。
「名前くらい考えるけど、いきなりどうしたの?」
[本名を名乗る必要が出てきたんだ。できれば、師と仰ぐあなたにゆかりのある名前がいい]
「師!?」
[いけないだろうか]
「いや、まあいいけど。ゆかりねえ」
俺に関連する名前? 何かあるかな?
俺のファンからまたメッセージが来た。
[希望を言うなら、あなたに関連がある存在として和泉性を名乗りたい]
マジ?
「まあ、別にいいけど。下の名前はどうする?」
[それこそ、あなたに付けてほしい]
「そうだねえ」
じゃあ、ひとつ考えてみるか……いや待てよ、この子男なのか女なのかわからないぞ!? どうしよう、聞いてみるべきなんだろうか、それとも、千歳を参考にした姿なら性別の判定がしづらいんだろうか?
迷った末、俺はこう聞いてみた。
「男の名前と女の名前、どっちがいい? それとも、どっちともとれる名前がいい?」
[そうだな、性別にこだわりはないからどちらでも構わないが、漢字だとありがたい]
こだわりないんだ、性別……。
「そうだねえ、パッと思いつくのだと、辰。十二支のドラゴン」
完全にりゅーちゃんの命名を引きずっているが、俺のファンは気に入ったようだ。
[和泉辰、か。すばらしい]
「じゃあ、和泉辰にする?」
[和泉辰にする]
そういう訳で、俺のファンは無事に和泉辰と命名された。
「でも、なんでいきなり名前欲しくなったの? 本名名乗る必要って?」
俺がそう聞くと、辰くん(ちゃん)からは驚くべき答えが返ってきた。
[私が愛すべき存在と直接話せそうなんだ。彼女に名乗る名前が欲しくて]
「そうなの!?」
[今後はそちらに注力するが、これからも私と付き合いを続けてくれると嬉しい]
「そりゃもちろん。その愛すべき人って誰なのか、聞いてもいい?」
[言える時になったら話す。彼女には、まだ直接接触出来ていないのでね]
「そうか、教えてくれるの楽しみにしてるよ」
そういう訳で、仕事も頼まれたことも無事に終わったので1階に降りると、組紐を作っていた千歳に『お疲れ』と言われた。
『仕事、結構かかったな』
「あ、そのあと頼まれごとしてた。俺のファンにさ、名前つけてくれって頼まれてね」
『へー、なんて名前つけたんだ?』
「和泉辰ってつけた。なんかね、俺に関連ある存在として同じ姓を名乗りたいって言われて」
『辰? 十二支の辰か?』
「そうそう。りゅーちゃんの名前引きずってるけど、相手は気に入ったみたい」
俺は細かく話した。和泉辰くん(ちゃん)は愛すべき人をついに見つけたこと。その人に名乗るために本名が欲しいとのこと。それが誰なのか、話せるときが来たら教えてくれること。
『へー、誰なんだろうな?』
「あの子の交友関係よくわかんないからねー。プッロミミさんではなさそうだけど」
俺たちが知ってる人なら、多分そう言うよな。
後で知ったけれど、辰くん(ちゃん)が見定めた愛すべき人は、愛と支援を誰よりも必要としている人だったのである。




