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子々孫々まで祟りたい 〜転んで祠を壊しちゃったら怨霊が子々孫々まで祟りに来たけど「俺で末代」と言ったら怨霊が困り始めて子孫を残させようと奮闘しだした件について〜  作者: zingibercolor・種・がくじゅつてきあかげ
26シーズン

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番外編 金谷千歳と髪束

 体を使う遊び、お昼寝、お絵かき、テレビとタブレットの幼児番組、そして何より和泉の活躍。それでワシは何とか睡眠時間を確保して、何日かして、やっと日中ずっと起きてられるようになった。


『大丈夫になった! 元気元気!』


 朝、りゅーちゃんの食事を出しながら和泉にそう言うと、和泉は「そりゃよかった」と嬉しそうだった。

 それで、余裕ができたから、ワシはやりたいことがあった。


『りゅーちゃんの髪を切ろう』

「そうだね、たぶん伸びっぱなしだしね髪の毛。整えてあげたほうが」

『そうなんだけど、そうじゃないんだ』

「?」


 和泉は不思議そうな顔をした。そうか、説明したほうがいいな。


『あのさ、りゅーちゃんは多分生まれてから一度も髪切ってないんだ。生まれてから一度も切ってない髪って、霊力が強くなるから』

「そうなの!?」

「でも、りゅーちゃんは霊力が強くて苦労するわけだから、少しでも減らすために髪切ったほうがいいと思うんだ』

「へえー、なるほど、そんなんあるんだ……」


 そういう訳で、夕飯のあと、お風呂前。ワシはりゅーちゃんを『髪の毛切ろうなー』とお風呂場に誘った。りゅーちゃんは不思議そうだ。


「かみのけきゆの?」

『うん、頭軽くなるからなー。アンパンマンのチョコあげるから、しばらくお座りして大人しくしててな』

「あんぱんまんちょこ!?」


 りゅーちゃんはアンパンマンチョコというだけで飛び跳ねて喜んだ。いや、大人しくしててくれよ。

 ワシはりゅーちゃんにアンパンマンの棒付きチョコを渡して、それをしゃぶらせて、風呂場の椅子に座らせて、大人しくさせた。りゅーちゃんの首元にぐるりとバスタオルを巻いて、ワシが使ってるヘアゴムをたくさん持ってきて、髪束を何本も作ってヘアゴムでとめる。和泉はまた不思議そうだ。


「普通に切るんじゃないんだ?」

『同じ長さの髪束をたくさん作っといたほうがいいからな、あとあと』

「え? 何かに使うの?」

『まあ、そうだ』


 あとでちゃんと説明したほうがいいな。

 ワシはりゅーちゃんの髪束を慎重に切り落とした。同じくらいの髪束がきれいに8本。それだけだとただのおかっぱだから、男の子みたいになるように髪を短く整えたんだけど、それで切り落とした髪もちゃんと回収した。


「それも取っとくんだ?」

『うん。今後さ、この子の霊力が欲しくてなんか言ってくる奴がいてもさ、この髪渡せばある程度は黙らせられるから』

「えっそうなの!?」

『すごく霊力があるんだよ、霊力が高い人の髪って』

「そんなにすごいんだ……」


 そんな事を話してるうちに、りゅーちゃんはアンパンマンチョコを舐め終わってしまったらしい。


「ちょこもっとたべゆ!」

『一個だけ! 和泉おじちゃんとお風呂入りな』

「もっとたべゆのー!」


 りゅーちゃんが騒ぐので、和泉が慌てておもちゃボックスを持ってきた。


「あーよしよし、レゴなんでもお風呂に入れていいからね、おじちゃんとお風呂入ろ」

「ええー」

「ねっ、お風呂で遊ぶと楽しいよ」

「しょーぼーししゃんもってく……」


 りゅーちゃんは渋々と消防士の人形のレゴを手に取った。


「いいねえー! えらいねえー!」


 和泉は大げさにりゅーちゃんを褒めた。なんだかんだで小さい子の扱い慣れてきてるな、和泉。

 和泉とりゅーちゃんがお風呂に入って、ワシは一休み。スマホが震えたから、見ると和束ハルからだった。


「アタリの子の、とりあえず3時間は霊障抑えられる術式できたで」

「マジか! ありがとう!」

「そっち持ってってええか?」

「うん、助かる! チビがいるとなかなか手が離せなくてさ」

「じゃあ行くわ」


 和束ハルはすぐに来た。遠隔操作の人形のはずだけど、全然違和感ないな。


「ほれ、お守りっぽく作っといたで。これ首にかけさせればOKや」

『わー、ありがとう!』


 和束ハルがくれたのは、紐がついた緑色の小さな袋。


「中の紙はラミネート加工してあるから、多少濡れても平気や」

『うわー助かる、風呂中もかけとかなきゃいけないもんな』


 玄関先で話してると、風呂場の方からりゅーちゃんがきゃっきゃ言う声が聞こえた。風呂から出たな、と思ったら、和泉の「そっち行っちゃダメ!」の声が聞こえて、おむつ一丁のりゅーちゃんが走り出てきて、玄関前でずべしゃと転んだ。


『大丈夫か!?』

「平気かおチビちゃん!?」


 慌てて助け起こそうとしたが、りゅーちゃんは何事もなかったかのように起き上がり「だーえ?」と和束ハルを興味深げに見つめた。ワシはりゅーちゃんが外に行かないように抱き上げた。


『和泉! 捕まえたから!』

「ごめん! 俺今すっぱだかなんだよ!」

『ゆっくり服着とけ! 客に変なとこ見せるな!』

「ごめん!」

「ねー、だーえ?」


 りゅーちゃんは和束ハルに興味津々。和束ハルは、りゅーちゃんを見て微笑んだ。


「おばちゃんはハル伯母ちゃんやで」

「ハルおばちゃんー?」


 りゅーちゃんは首を傾げた。


「お守りあげたからな、首から下げとき」

『本当ありがとうな、なんかお礼させてくれ』

「ええてええて」


 和束はひらひらと片手を振り、そしてその手でりゅーちゃんの頭をそっとなでた。


「ええとこに来たな、おチビちゃん。ハルおばちゃんのこと、よろしくな」

「うん!」


 りゅーちゃんは喜び、だけどワシは言葉に詰まった。そうだ、りゅーちゃんは和束ハルの甥に当たる。和束ハルは母親にも妹にも思うところはあるけど、でも、何も知らない甥はかわいがることに決めたのか。

 ワシは和束ハルに言った。


『この子、竜って名前つけたんだ。りゅーちゃんって呼んでやってくれ』

「りゅーちゃんか、ええ名前や。りゅーちゃん、大人の言うことよく聞いて、元気にやり」

「うん」


 和束ハルは、もう一度りゅーちゃんの頭をなでた。


「じゃ、帰るわ」

『ありがとな。りゅーちゃん、ハルおばちゃんにバイバイしな』

「ばっばーい!」


 りゅーちゃんが片手を振る。和束ハルはりゅーちゃんの笑顔に目を細め、そして帰っていった。

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