絶対君を救いたい
「和泉さんにお願いしたいんです。アタリの子の確保を」
夜。緑さんが家に来て言ったのは、そういうことだった。
時は少し前にさかのぼる。式神の位置を確かめて、和束みやびの居所を特定したそうだ。やはり清流村、水源の近く。
俺のファンが、水源近くに建てられた家の履歴を追跡し、間取りを調べたとのこと。別棟があり、その下に地下室があるそうだ。つまり、朝霧の忌み子と同じ生育環境を揃えている。
しかし、警察がその家に向かうも、どうしてもたどり着けない。家もぼやけてしか見えない。緑さんたち和束みやび事変対策本部の見解では、人を惑わす結界を貼った上で、家ごと異界に行っているだろうとのこと。
霊的な防御力が一切ない警察がこの家に入ろうとしたら、甚大な人的被害が予想される。だから、和束みやびから霊力を引き剥がした上で結界を壊し、家を異界から引き戻さないといけないらしい。そして結界内に入れるのは、強い霊力を持つ者だけ。
それらの情報が、報告書にまとめて俺と千歳に届けられていた。
『これ、霊力が強い奴ってワシのことだよな』
「そうだね、でも他の人も来てほしいよね、戦いは数だし」
そんな事を2人で話し合っていたのだが、うちにやってきた緑さんは、俺の協力も欲しいと言ってきたのだ。
「え、なんで私なんでしょうか? 霊力ありませんよね?」
そう聞くと、緑さんは言った。
「和泉さんは例外なんです。千歳ちゃんのお守りと、宇迦之御魂神様の力と、閻魔大王様のお守りで、霊力や術式による害を受けません。結界も素通りで通れます」
「そうなんですか?」
「それに……和束みやびの霊力をはがす、つまり9体分の魂の霊力をもった和束みやびを倒すということになりますが、大きな戦いになることが予想されます。和束みやびがアタリの子を殺して使う可能性も出てきます。その時、アタリの子を抱きしめて守れるのは……和泉さんだけなんです」
「……!」
いざというときの盾にもなれる、アタリの子を守るために。逆に言えば、そこまで和束みやびは追い詰められている。
千歳が慌てだした。
『で、でも霊力の強い奴って他にもたくさんいるよな? ワシといっしょに行ってさ、みんなで袋叩きにすればどうにかならないか?』
「和束みやびは和束ハルを凌ぐのよ。もちろん強い人は総動員するけど、それはほとんど被害を出さない方向に振り向ける。純粋に協力に守れるのは、和泉さんだけなの」
『でも、和泉が危ないの、やだ……』
あ、それで気が進まないのか、千歳……。
俺は考え、そして言った。
「耐久試験しておきません? 私がどれくらいまで耐えられるかどうか。前ちょっと話に出ましたけど」
「確かに出ましたけど、いいんですか?」
「どれくらい行けるかわかったほうが、千歳も安心でしょうし」
『だ、大丈夫なのか?』
俺を不安げに見る千歳。俺は千歳に微笑みかけた。
「大丈夫、俺最強の防御力持ってるんだよ?」
そういう訳で、俺がどれくらい耐えられるのか調べようとなり、緑さんがあかりさんを呼び出した。2人で俺を攻撃しまくってみるとのこと。人に見られたくないとのことで、俺たちは裏庭に出ることにした。
千歳がハラハラした顔で見守る中、2人は何事か唱え、白い紙でできた人形のようなものをさっと出す。人形はまたたく間に牛頭の大きな鬼と化し、総勢8体の鬼が俺に襲いかかった。さすがに怖くなったが、鬼の拳が俺に迫った瞬間、バッチーンと音がして牛鬼は全員弾き飛ばされ、白い紙でできた人形に戻った。
あかりさんが息を呑んだ。
「すっご……え、加減してませんよ!?」
緑さんも大きく息を付いた。
「本当に、防御だけなら最強まであり得るわ……」
俺は千歳を見た。
「ね、大丈夫だろ?」
『う、うん……』
千歳は頷いて、俺のところへ寄ってきた。
『気持ち的には嫌だけど……本当に大丈夫なのは、よくわかった。今の、余裕で弾いたもん。もっと強くてすごい相手でも、大丈夫だ』
「じゃあ、決まりだね」
アタリの子を助けに行こう、絶対に守ってみせる。




