ホントは今すぐ助けたい
午前の取材はうまく行き、千歳と落ちあわせて帰って、電車の中でパソコンを開いて2記事の簡易構成案を作り、家について、お昼もそこそこに構成案を作って修整し、クライアントに送って可否の返事待ち。そこまで来て、俺は大きく息をついた。
「疲れたー……やっぱ東京行くと疲れる」
ブラック企業時代、毎日東京の本社まで通ってたのが信じられない。でも都内に家借りる財力なんてなかったしな。
『お疲れ、おやつ食えおやつ』
千歳がみかん入り牛乳寒天を出してくれたので、ありがたくいただくことにした。
「おいしいー……疲れてると甘いものが沁みるー……」
『練乳入れたから、普通の牛乳寒天より甘くてミルキーだぞ』
「うん、おいしい、すごく」
牛乳部分の味が濃く、みかんの甘酸っぱさが爽やか。いいものが食べられた。
おやつの後さらに仕事しようとしたが、疲れちゃってやる気が出ない。まだ体力万全じゃないな……。
今日絶対やらないといけないことは済ませたし、フレックス制だし、ちょっと昼寝して、夕飯の後にも仕事するとしようか。
そういう訳で1時間くらい寝て、目をこすりながら起きたら、千歳が『なあ、お前にも連絡来たと思うんだけど』と声をかけてきた。
「何?」
『和束みやびが和束美枝を連れてってた不妊治療の病院がさ、わかったかもしれないって』
「え!?」
慌ててスマホを見た。藪さん、こないだ和束みやびの記事を出した記者さんが、取材の末に福岡の生殖医療の病院をあぶり出したとのこと。そこに朝霧春太郎のものである可能性が高い凍結精子があり、その精子でこれまで何回も顕微授精をした女性がいるとのこと。保険証を出さない自費医療だったので、足で調べないとわからなかったらしい。
最後の顕微授精の日にちから、10人目の子、アタリの子のおおよその年齢が判明。今、おそらく2歳とのこと。
「本当に地域バラバラだね、たぶん長野にいるのに福岡でやってたんだ」
『バレにくくしたかったんだろうなー』
「アタリの子、本当に小さいね……」
『うん……』
ずっと地下牢暮らしなんだろうか? たった2歳の子が……。
助けてあげたい、なんとしても。でも、今すぐ俺にできることないしな……気をもむことくらいしか、できないんだろうか?




