再発なんて絶対しない
庭のクチナシが満開だ。朝の散歩の行き帰りに甘い香りを楽しんでるけど、今日は香りを楽しむ気になれなかった。
散歩の後の朝ごはんを食べつつ、千歳が言った。
『今日、病院で検査だな』
「うん……」
そう、がんが再発していないかの検査。いつもみたいにお味噌汁をすするも、味わえる心境ではない。これから5年間定期的にする検査なのに、毎回こんな風にドキドキしてたら体持たないんじゃないか?
千歳が聞いてきた。
『検査って、CTとるのか?』
「うん……。血液検査もやるらしいけど」
『結果、いつ出るんだ?』
「1週間後」
『けっこう待つなあ』
「うん……」
思わずため息をついてしまった。
『きっと大丈夫だって』
「うん」
千歳を心配させたくないから、心配だとか怖いとか嫌だとか言ってないけど、態度に出まくってるだろうな。俺が慰められてどうするんだ……。
空元気出していきたいけど、全然出ない。
『ワシも病院ついてくからな』
「ありがとう」
そういう訳で2人で駅ビル近くの病院に向かい、受付して長い待ち時間を過ごす。やっと呼ばれて、まず問診。主治医の白髪交じりのお医者さんが聞いてきた。
「体のどこか、例えばリンパ腺あたりに腫れはないですか?」
「ないと思います……多分」
「触診しておきますね」
ベッドに寝かされていろんなところを揉まれ、とりあえずリンパの腫れはなしとのこと。それから採血され、CTも受けて終了。あっさりしたものだった。
『きっと大丈夫だよ。なんにも引っかからないって』
「うん……」
気分転換に2人で駅ビルデートしたい気分だったが、残念ながら俺は仕事がある。とっとと帰ってパソコンに向かわなければならない。
『昼飯、買って帰らないか?』
「そうだね」
帰ってから作ると、お昼遅くなっちゃうもんな。
バス停に向かう途中の道に駅ビルがあり、駅ビルの1階に食品フロアが入ってる。千歳は迷いなく高いお惣菜の店に行き、すごい勢いで注文しだした。
『ネギと蒸し鶏とザーサイのサラダ100gください! それから20品目の根菜サラダとナスとエリンギの和風おろしサラダも100gずつ! それから具だくさんシーフードパエリア2つください!』
店員さんはにこやかに注文を受け付けてくれたが、千歳大丈夫か!? だいぶヤケ食いじゃないか!?
「千歳!? どうしたの、疲れちゃった!?」
『疲れてはないけど、いいもんでも食べてパーッとやんないとお前1週間乗り切れないだろ。ここの、うまいって星野さんに聞いてたから、まずはここのでパーッとやろうと思って』
千歳は、ニヤッと笑って俺の背中を叩いた。
『もちろん、おごりだ。あと、家にも食材たくさんあるから、しばらく腕によりをかけていいもん作ってやるからな』
「…………」
そうか、俺への気遣いだったのか……。
「ありがとうね千歳、帰って一緒に食べようね」
『うん』
千歳は笑った。心からの笑いではなく、俺を元気づけるための笑いだとわかった。
……きっと大丈夫だよな、俺こんなに素晴らしい人と一緒にいて超幸せで、きっと免疫力もすごく高まってるもん、再発なんて絶対ないよ! 1週間、千歳と楽しく過ごして、1週間後異常なしを聞いて、2人で心から笑い合おう。




