番外編 金谷千歳と子育て
和泉と子供作れると思ったら作れなかったことについて。和束ハルに相談したから、一応どうなったか報告しておこうかな。まあ、高千穂先生から聞いた可能性はなくもないけど。梅ジャムの瓶詰めいっぱいあるから、これを分けるのを口実に和束ハルんち行こう。
和束ハルに『梅ジャム分けるから、ちょっと話せないか?』とLINEしたら「ええで」と返ってきたから、ワシは梅ジャムを持って本白神社裏の和束ハルんちに行った。
和束ハルに家にあげてもらったら、九さんがテーブルでお茶飲んでたので、ワシはびっくりした。
『え!? なんでいるんだ!?』
「この神社には定期的に来るようにしておると言うたじゃろ、そのついでにこいつを見張りに来ておる」
九さんは和束ハルを指さして、和束ハルは苦笑した。
「茶飲んで帰るだけやろ」
「お主が何もしておらぬからなあ、それしかやることがないのじゃ」
『いいことじゃん』
九さんには、ワシが和泉と恋人をやることを話してないけど、まあいいかと思って、ワシは2人に和泉との子供作れるか調べてダメだったことを話した。
和束ハルは「そういうこともあるわな」と普通に受け止めてくれたけど、九さんは目を剥いた。
「子供を作るって……お主、和泉といつそういう仲になったんじゃ!?」
『先月。和泉ががん再発したら、ワシもっと何かしてやれたんじゃないかって後悔すると思ったから、とりあえず再発の心配がなくなる5年だけ恋人やるって言ったんだけど、和泉は一生恋人でいる気満々』
「それは、まあそうじゃろうな……」
九さんはため息をついた。
『で、ワシ、帰って和泉の顔見たら泣いちゃったんだけど、和泉は、そんなことで泣かないでって泣きそうな声で言うんだ。なんか、和泉にとって、ワシが泣くのに比べたら子供は「そんなこと」みたいなんだ』
「そりゃあ、和泉はお主のことが誰よりも大事じゃからな」
『そっか……和泉はさ、ワシが幸せじゃなきゃ幸せじゃないって言っててさ、じゃあワシは和泉が幸せならけっこう幸せだから、和泉にいっぱい優しくしてやるかって思ったんだ』
「そうか、いいことじゃ」
九さんは微笑み、和束ハルはワシに言った。
「まあ、二人で幸せならそれでええんちゃう? うちかて二人で幸せやし」
『まああんたらは幸せだと思うけど、和泉は絶対いい父ちゃんになると思うからもったいないんだよなあ』
「それ言うたら、うちの高千穂さんかてええお父さんになるわ。でも何でもかんでもに人の適性発揮できるわけやないで」
九さんが首を傾げた。
「そんなに子供にこだわるなら、養い子でも考えてはどうじゃ?」
『うーん……』
ワシと和泉で、小さい子をもらってきて育てる? それはかなり、いや、すごく楽しいと思うけど……。
『いや、でも、どこからもらってくるんだよ』
「それはそうじゃが」
『それに、和泉が血が繋がってなくてもかわいく思えるかどうかわからないし』
「仮に縁があれば、和泉ならかわいがると思うがのう」
『まあ、あいつはよその子供でもちゃんと面倒見るけどさあ』
その時は、それで終わった。ワシと和泉の間に、小さい子が飛び込んでくる可能性なんて、ワシは全然まったく考えもつかなかった。




