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子々孫々まで祟りたい 〜転んで祠を壊しちゃったら怨霊が子々孫々まで祟りに来たけど「俺で末代」と言ったら怨霊が困り始めて子孫を残させようと奮闘しだした件について〜  作者: zingibercolor・種・がくじゅつてきあかげ
第25シーズン

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番外編 金谷千歳と赤ちゃん

 次の日の午後、ごつい男の姿になって、あかりさんと一緒に西尾って奴の家に行った。チャイム押したら荒々しくドアが開いて、西尾が顔を出した。


「おい! 大和をどうしたんだ! なんで父親のところに!」


 あかりさんを見て怒鳴るもんで、ワシは自分のごつさを誇示するみたいに二人の間に割り込んで言った。


『いやー、監視カメラに大和君を蹴り飛ばすところが写ってなきゃそんなことしなかったんだけど』


 西尾はワシを見て若干気圧されたみたいだった。まあ、今のワシコイツよりデカいしな。

 ワシは家に踏み込んだ。あかりさんもついてくる。おびえた顔の西尾の奥さんが出てきた。ワシはあかりさんを振り返った。


『この家の霊は、大和君を守ってたってことでいいんだよな』

「そうですね。今普通に見えるようにします」


 あかりさんは霊がいる方向を向いて、呪言を唱えた。まあワシには見えるんだけど、半透明で40過ぎくらいのおっさんが普通の人にも見えるようになったので、西尾も奥さんも度肝を抜かれて絶句した。奥のベッドに寝かされてる赤ちゃんの、ご機嫌な喃語だけが響く。

 霊のおっさんは、家に付いてるだけあって、足の根元の方が家にくっついて溶けて消えている。あかりさんが霊のおっさんに聞いた。


「こんにちは、ポルターガイストやってたのはあなたですか?」

「まあ……はい。ポルターガイストみたいなもんですよね」


 おっさんは頷いた。ワシは聞いた。


『ポルターガイストまんまだと思うぞ。なんでこの家にいるんだ?』

「この家で死んだからじゃないでしょうか……その、僕引きこもりで、病院にも行かなかったんで……」

『それでその年で死んじゃったのか? 引きこもりにもほどがあるだろ』


 病院くらい行けばよかったのに。

 おっさんはうつむいた。


「外が怖くて……でも、小さい子が殴られてるの黙って見てるわけにもいかなくて……」


 あかりさんが言った。


「やっぱり守ってらしたんですね」

「本当は庇ってあげたかったんですけど。なんか、僕の体、生物はすり抜けちゃうんですよ。だから無生物を揺らしたり落としたりしかできなくて」

「なるほど……」

 霊のおっさんは悲しそうな目をした。


「僕、やっぱり除霊されます?」


 ワシは、少し考えてから言った。


『まあ家との結びつきはほどくけどさ、別にこの世にいたいならいなよ』


 西尾の奥さんが目をかっ開いた。


「なんで除霊してくれないんですか!?」


 あかりさんは臆せず言った。


「家からいなくなれば似たようなものでしょう。千歳さん、今の、この人が大和君の守護霊にならないかって話ですよね?」

『うん』


 そう、家からは離れないかと言ったのはそういうこと。家から離れて、大和君に憑けるようにならないかと言いたかった。


『な、そういう訳でさ、これまで守ってくれてたんだし、よかったら大和君の守護霊やってみないか?』


 おっさんにそう聞いてみると、おっさんはしおしおした。


「家の外で動ける気がしません……」

『できるって。そんなに頑張ってちっちゃい子を守れたんだから、それ以外のことなんて楽勝だって』

「そうですかね……」


 あかりさんが西尾夫婦に向き直って言った。


「このレベルの霊を完全に成仏させるなら、1000万頂いています」


 西尾は青筋を立てた。


「そんな金払えるわけねえだろ!」

「なら成仏はさせません」


 おっさんがワシに聞いてきた。


「あの、大和くんは本当のお父さんのところにいるんですよね?」

 三河さんが西尾夫婦に連絡したのかな?


『うん、本当のお父さんとおじいちゃんおばあちゃんちで暮らすって』

「大和君、安心そうです?」

『安心だよ。お父さんに会えて本当にうれしそうだった』

「そうですか……」


 おっさんは嬉しそうにうなずき、そして言った。


「なら……外が怖いってわけじゃないですけど、しばらくこの家にいます」

『そうなのか?』

「大和君は大丈夫みたいですから。この家には、まだ小さい子がいますしね」


『えっ』


 ワシは思わず奥のベビーベッドを見た。まだほんの赤ちゃんが自分の指をしゃぶってる。


『えっ……えっ、この子は実の子だよな? さすがに実の子には……』


 霊のおっさんは遠い目をした。


「いっぱいいますよ、実の子を殴る親なんて。虐待のニュース見ないんですか?」

『そ、そうか……あっでも、家にいるんじゃ家の中でしか守れないんだよな』

「じゃあ、家とのつながりほどいてください。頑張って、いつでもどこでもましろくんにつくようにしますんで」

『あ、この子ましろっていうんだ。あかりさん、どうする? 一応除霊になるのかこれ?』


 あかりさんは頷いた。


「そうですね……まあ、お金は頂きたいですね」


 西尾が叫んだ。


「ふ、ふざけるな!」

「払っていただけないなら、西尾様の名前付きで監視カメラの映像がネットに出回ります」

「こ、こいつ……」

「私どもは除霊をしないこともできますし、その場合は諸経費しかいただきません」

「経費だって払ってたまるか! 帰れ!」


 西尾が手を振り上げたので、ワシはさっとあかりさんの前に出てその手をガッと掴んだ。


『あんたが大和君を殴らなきゃ何も起きなかったんだよ。全部あんたのせいだぞ』


 西尾の奥さんが悲鳴のように言った。


「ぶ、分割になるけど払います!」


 あかりさんは奥さんの方を見た。


「成仏してもらいます? それとも家とのつながりほどくだけにします?」

「ほどくだけにしてください!」


 西尾が「このバカ! あの世に行かせろ!」と騒いだけど、あかりさんは落ち着いて言った。


「お金を払っていただく方のご意向に沿います。分割払いの詳細については分所の方でまたご相談に乗りますので。大丈夫、成仏させるよりは安く上がりますよ」

「ありがとうございます……」


 ワシは西尾の腕を掴んだまま言った。


『そんなに小さい子殴りたいのか?』


 すると、霊のおっさんが鼻で笑った。


「まあ、15年もしたら殴られる側ですよ。15歳と50歳、50歳の方はどんどん衰えていくんだから」


 西尾は息を呑んだ。ワシは、もう大丈夫かなと思って西尾の手を離した。

 おっさんは、西尾に向かって言った。


「老後に殴られたくないなら、殴らないほうがいいですね」


 あかりさんが霊のおっさんに話しかけた。


「じゃあ家との繋がり解きますね。えーと、根元の方にこのお札置いてっと……」

 あかりさんが呪言を唱えると、おっさんの根元が家から離れ、おっさんは自由になったように空に浮いた。


「ありがとうございます、じゃあましろくんの守護霊頑張ります」

「はい。じゃあ見えるようになる術解きますね」


 あかりさんがパンと手を叩くと、おっさんは普通の人間には見えないようになった。あかりさんは西尾夫婦に頭を下げた。


「では、これで失礼いたします。家からは除霊しましたので」


 西尾は憤然としてたけど、ワシは西尾とあかりさんの間に立って、あかりさんをかばいつつ家から出た。

 無事にあかりさんの車に乗る。あかりさんは運転しつつ言った。


「ありがとうございます、私一人じゃ暴力振るわれるところでした」

『大丈夫大丈夫。あれくらいならいくらでもやる』


 あかりさんは、言葉に困ったようにうつむいた。


「その……私今一人じゃなくて……」

『うん?』

「3カ月なんです、まだ緑さんにも言ってないんですけど」

『あ! おめでた!?』


 ワシはびっくりした。


「しかも双子です」

『双子!?』


 あかりさんは、今さら怖くなったみたいに体を縮めた。


「そういうわけで、しばらく1人で2人守らなきゃならないので、今日みたいなのは本当に怖くて……」

『そうか、そりゃ怖かったよな、いつでもついてくよワシ』

「ありがとうございます……」

『つわりとか大丈夫なのか?』

「ちょっと胃がむかつく感じはありますね」

『調子悪いなら、ちゃんと周りの人に言っといたほうがいいだろ。分所に戻ったら緑さんにすぐ話しなよ』

「はい……でも緑さんずっと忙しくて、なかなか言うタイミングがなくて……」

『でも、絶対喜んでくれるだろ?』

「それは、そうですね」


 そういう訳でワシも分所に行き、別件で他所に行ってる緑さんを待ち、緑さんが帰ってきてからあかりさんが妊娠報告をするのを見守った。

 緑さんはすごく喜んでたけど、その次に言った。


「それだったら今日の、私が代わりに行ったのに! 怖かったでしょう!」

「でも、千歳さんがずっと守ってくれてたので」

『あんなんでいいなら、いつでも付き合うよ』


 あかりさんは苦笑いした。


「今日ほどのことはそんなにないと思いますけど……でも、ありがとうございます」


 で、用事が済んだのでワシは家に帰り、和泉にあかりさんの事を話した。和泉もびっくりしてた。


「マジか!」

『ここだけの話な。安定期入るまで大っぴらにしたくないって言われたから』

「そっかあ、じゃあ狭山さんが教えてくれるのを待つかな」

『そうだな』

「しかし双子か、すごいな」

『生まれたら、夫婦2人から4人だろ? 一気に倍になるな』

「本当だ、すごいけど大変そう」

『生まれたら、抱っこさせてほしいな、ワシ』


 生まれてきた赤ちゃんを和泉によく見せたら、和泉、子供が欲しいって思ってくれないかな。そんなにうまくは行かないかなあ……。

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