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子々孫々まで祟りたい 〜転んで祠を壊しちゃったら怨霊が子々孫々まで祟りに来たけど「俺で末代」と言ったら怨霊が困り始めて子孫を残させようと奮闘しだした件について〜  作者: zingibercolor・種・がくじゅつてきあかげ
第25シーズン

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ひとまず父に渡したい

 お風呂を出たら、夕飯の用意ができていた。ミートソースパスタ、ブロッコリーとゆで卵のサラダ、オニオンコンソメスープ。

 大和君に夕飯を食べさせ、自分たちも食べつつ、俺は千歳に大和君の本当のお父さんの存在を話した。


「保護してもらうにせよ無理にせよ、連絡取ったほうがいいと思うんだ」

『そうだな、本当のお父さんがかわいがってくれるならそれが一番だしな』


 大和君は、口の周りをトマトでベタベタにして大喜びでミートソースパスタを食べていたのだが、俺たちの会話を聞いて沈んだ顔をした。


「でも、本当のお父さんに電話かけたら新しいお父さんに叩かれる……」


 俺は大和君に諭すように言った。


「でもここに新しいお父さんはいないだろ?それに、おじちゃんがかけるから大丈夫だよ」

「本当?」

「本当」


 俺は頷いて見せ、大和君の頭をなでた。

 夕飯後、俺はスマホをスピーカーにして、大和君から教えてもらった電話にかけた。このご時世、いきなり電話かけて出てもらえるか分からなかったが、相手は電話に出てくれた。


「はい、もしもし?」

「もしもし? 西尾大和くんのお父さんですか?」

「え? ……あっ、はい! 西尾大和の父です、三河と申します!」


 大和君が「おとーさん!」とスマホに飛びつき、三河さんは「大和!?」と驚きの声を上げた。俺はとりあえず自己紹介をと口を開いた。


「私、今大和くんのことを保護しているものでして」

「保護!?」

「篩建築事務所分所の関係者で、和泉豊と申します。分所の地下駐車場で、大和君が新しいお父さんの西尾さんに蹴られていて、どうも虐待が常習らしかったので理由つけて預かったんですが」

「虐待!?」


 大和君がまた「おとーさん! おとーさん!」と騒ぎ、西尾さんは慌てたようだった。


「大和! 大丈夫か? ケガしてないか!?」

「あのねえ、今日新しいお父さんに蹴られて鼻血出た」

「蹴られた!?」

「でもねえ、おうちにいるときは平気になったんだよ、たたかれそうになると家がガタガタするんだよ!」


 俺は三河さんに話した。


「少しオカルトな話になってしまうんですが、ご説明しますね」


 西尾氏が大和君を虐待しようとすると起こるポルターガイストのこと。篩建築事務所分所にポルターガイストの件が持ち込まれたのがきっかけで虐待が発覚したこと。俺の知り合いのハッカーのおかげで虐待が常習の証拠が山ほどあること。ポルターガイストは、虐待を止めようとしていた可能性のこと。三河さんは驚きつつも言った。


「じゃあ、その家の霊は大和を守ってくれてたんですか?」

「霊本人に話聞かないとわかりませんが、その可能性はあると思います。で、今こちらで大和君を保護していますが、できればそちらで大和君を保護していただけないかと思いまして」

「保護します! 今実家暮らしなんで養育環境もあります! 大和! おじいちゃんとおばあちゃんに会えるぞ!」


 大和くんは「本当!? やった!」と飛び跳ねた。


「今大和を迎えに行きます!」

「では、こちらの住所お伝えしますね。LINEかメールアドレスいただければ証拠もお送りいたします」

「ありがとうございます! とりあえずメールアドレスをSMSで送ります!」


 住所を伝え、電話を切って、俺は安堵のため息をついた。これでなんとかなったかな。

 千歳もホッとしたようだ。


『うまくいきそうだな』

「本当に良かったよ」


 メールアドレスが来たので、そこに証拠動画を山程送る。大和君は嬉しそうだった。


「おとーさんまだかなあ!」

「少し待つけど、ちゃんと来るよ」

『それまでワシらといような』

「うん!」


 夜だし、遊ぶのも興奮させそうなので、俺はタブレットを手に取った。


「絵本でも読む? 電子書籍であるのなら、何でも好きなの読んであげる」

「じゃあ、パンどろぼうのまだ読んでないの!」

「どれどれ……この中のどれ読んだことない?」


 Kindleの検索結果を見せて、大和君が指さしたのを買い、読んであげる。大和君はそれなりに字が読めるようだが、俺が読むのに従って質問してきたり歓声を上げたりしていて、人に読んでもらうのはまた別の喜びがあるようだ。

 何冊か読んで、大和君が眠そうになった頃、玄関のチャイムが鳴った。インターホンに出ると、「三河です!」と声がした。


「こんばんは、和泉と申します。大和君! お父さん来たよ!」

「うん……おとーさん……」


 千歳が玄関を開け、俺は目を擦る大和君を玄関まで連れていった。玄関の先には三十半ばくらいの男性がいて、大和君を見て「大和!」と叫んだ。


「おとーさあん!」


 大和君は三河さんに抱きついた。三河さんは相好を崩した。


「よしよし久しぶりだなー、もう大丈夫だからなー、お父さんがいるからなー!」


 父子2人、抱きしめ合う。いい光景だ。千歳が笑った。


『大和くん、よかったな!』

「うん」


 三河さんは眠そうな大和君を抱っこしつつ言った。


「この度は本当にありがとうございました、相手の不貞で離婚したのに親権取れなくて、すぐ不倫相手と結婚したし面会もさせてくれないからずっと心配していて……」


 俺は言った。


「ひとまず、証拠は存分に使ってください。こちらもできることはご協力いたします」


 大和君はまた睡魔が襲ってきたようで、三河さんに抱きつきながら「おとーさん、眠い……」とぐずった。三河さんは大和君の背中をぽんぽん叩いた。


「よしよし、おじいちゃんおばあちゃんのところにすぐ帰ろう」

『あ、大和君のお泊りセットあるんで渡します』

「そんなのまであるんですか!?」


 俺は説明した。


「うちで預かるの長期戦になるかと思ったんで、理由つけて着替えとか取りに行きまして」


 三河さんは大和君を抱っこしたまま何度も頭を下げた。


「ありがとうございます! 何もかも!」


 俺たちは、お泊りセットを車まで持っていくために庭先に停めてある車までついて行き、そして、その車の後部座席にチャイルドシートがあるのを見た。そうか、ちゃんとこの日を待ってとっておいたんだ……離婚したからってチャイルドシート処分するような父親じゃなくて、本当に良かった。

 そう言うわけで、三河さんの車を見送って、俺と千歳は胸を撫で下ろした。


「とりあえず、大和君はこれで安心と」

『後は、ワシが西尾ってやつんちに行って、ポルターガイスト起こしてるやつと話せばいいだけだな』

「お願いね」


 ポルターガイストが起こる条件からして、悪い霊ではなさそう。そっちもうまく片付くといいんだけど。

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