実の父なら言うことない
あかりさんに車で送られてる間、俺のファンからは数多くの大和君の虐待映像が送られてきた。大和君の前の家に赤ちゃんの見守りカメラがあったそうで、その映像とのことだ。俺はそれらを全部保存し、何かあったらすぐ使えるようにした。
千歳は、チャイルドシートに座った大和君と和気あいあいと話していた。
『今日、夕飯何食べたい?』
「ミートソーススパゲッティ!」
『よしよし、肉いっぱい入れて作ってやるからな』
家に着き、大和君に手洗いうがいをさせていると、チャイムが鳴って、分所の事務員さんが大和君のお泊りセットを持ってきてくれた。
「大和君のお母さん、すぐ着替えその他まとめてくれたんですが、やっぱり心配していて」
千歳が渋面を作った。
『こんなんで心配になるなら、旦那の殴る蹴るを止めろよなあ』
それは本当にそう。俺は大和君に語りかけた。
「ここは安心だからね。千歳は夕ご飯作るから、おじちゃんと一緒に、何かして遊ぼっか」
「いまなんじ?」
「ん?もうすぐ5時だね」
俺がスマートウォッチを見て言うと、大和君はそわそわし始めた。
「おふろは? 入らなくていいの?」
「あ、おうちだと夕飯前にお風呂?」
「うん」
「じゃあ今でもいいし、入ろっか」
「ぼく、ちーちゃんと入りたい!」
大和君は千歳を指さした。
『え、ワシ!?』
千歳は目をまん丸くし、そしてびっくりするくらいオロオロし、『こ、この姿だと、ちょっと……』と呻いた。
「あっそっか! 俺入れるよ!」
『う、うん』
そうだ、千歳は自分の体見られるの恥ずかしいんだった。非典型的な体だし、ちっちゃい子が見たら何言いふらすかわかんないし!
「大和くん、ちーちゃんはご飯作るのに忙しいからね、俺と入ろう」
大和君はあからさまにがっかりした。
「えー、おじちゃんと?」
「そんなにがっかりしないの!」
俺はお泊りセットを探り、大和君の着替えを取り出し、自分の着替えも用意して、お風呂に大和君を連れて行った。
俺が医療用帽子を取ると、大和君は俺の頭を見てびっくりした。
「おじちゃん、なんでハゲてるの!?」
「病気で抜けちゃったんだよ、これからまた生えるんだ」
「病気で髪の毛抜けるの!?」
「正確に言うと、病気を治す薬で髪抜けちゃったんだ。でも今は大丈夫だからね」
「へえー!」
大和くんの服を脱がせ、俺も服を脱いで浴室に入ると、大和君はまたびっくりして騒いだ。
「え!? おじちゃん、キンタマ一個しかない!」
「あー、それはね……」
まあ、玉が一個の人はそんなにいないわな……。
大和君は首を傾げた。
「つぶれちゃったの?」
「病気で取っちゃったんだよ」
「キンタマって病気になるの!?」
「なるんだよ、右と左ですごく大きさ違ったら病気だからね、時々触って確かめな」
「そうなんだ……」
これはガチの知識だが、大和君にこの知識が役立つときが来ませんように。
湯船にお湯を張りつつ、俺はシャワーを出して大和君を濡らした。彼の頭をよく濡らして、シャンプーを出す。
「はーい、大和君目ーつぶって。上向いて、シャンプーするからね」
「うん!」
人にシャンプーをするのは初めてだが、それなりにうまくできた。ちゃんとすすいであげてから、俺は石鹸とボディタオルを手に取った。
「体もよく洗おうね、洗ってあげるから」
「ゴシゴシして」
「ほーら、ゴシゴシ」
「お背中もゴシゴシして!」
「はいゴシゴシ」
大和君の泡を洗い落として湯船に浸け、俺も適当に自分を洗う。それから俺も湯船に入って、遊んでる大和君に言った。
「大和君、肩まで浸かってね、10秒数えるんだよ。いーち、にー、さーん、しー」
「ごーお、ろーく、しーち、はーち、きゅうー、じゅう!」
「えらいえらい、数えられるんだね」
「うん!」
大和君の頭をなでると、大和君は笑った。
「おじちゃん、本当のお父さんみたい!」
「ん?」
本当のお父さん?
「さっきのお父さんは、本当のお父さんじゃないの?」
「うん、新しいお父さん!」
そうか、連れ子だったのか……だからって虐待していいわけじゃないが。
俺は大和君に聞いた。
「本当のお父さん、どこにいるかわかる?」
「電話番号ならわかるよ。覚えてって言われたから」
「じゃ、夕ご飯の後、教えてくれないかな?」
「うん!」
本当の父親が大和君を保護してくれるんだったら、それ以上にいいことはない。あ、児童相談所にもチクったほうがいいのかな?いや、まずは実のお父さんに連絡だ。




