番外編 金谷千歳と仮定
星野さんに、びわをたっくさんもらった。旦那さんの実家に、びわの木がたくさんあるんだって。
本当にいっぱいあって、うちで食べる分と、コンポートにして星野さんにお返しする分をよけても、まだまだ余る。どうするかな……そうだ、和束ハルにお裾分けしに行くか。予知夢の術式のお礼だ。まずLINEしよう。
『びわめっちゃもらったんだけど、いるか?』
「欲しい!」
『じゃ今持ってくな』
「おおきに。あ、今緑さん来とるから、3人でちょっと茶でもしよう」
『わかった!』
そう言うわけで、ワシはすぐ本白神社裏の和束ハルんちに行った。和束ハルが出てきて、奥には緑さんが座ってた。
『ほらびわ!』
「おおきにな」
『緑さんにもあげる』
「あらいいの? ありがとう」
二人にあげる用に、びわの袋分けといてよかった。和束ハルがアイスティーと水ようかんを出してくれて、ワシは早速口をつけた。
『そう言えばお前、高千穂先生を不老不死にする術式はどうなんだ?』
「そうそうできるもんやないわ。でも若返りの術式は作れるから、いざとなったらそれで時間稼ぎやな」
『あー、あったな確かに』
緑さんがアイスティーを飲んで言った。
「和束さんの術式、一応悪いものじゃないかのチェックしてるのよ。もうそんなことしないと思うけど、私その関連で今日いるわけ」
「まあ、調べられてもしゃーないわな」
『ふーん……』
和束ハル、世界を壊そうとした大術者だもんな。ちょっとかわいそうな気もするけど、まあ本人が納得してるなら。
和束ハルがワシを見た。
「そういや怨霊。和泉豊を振ったらしいやんか」
『え? あ、うん』
緑さんから聞いたのかな? あ、そう言えば!
『ていうかさ! お前ワシに前、和泉が好きな人は子供できないんだろうって言ってたじゃないか』
「言うたけど」
『あれもしかして、和泉の好きな人ワシだってことわかってたのか!? なんでだ!?』
「何でって、バレバレやんか。あんたほど和泉豊に大切にされてる奴おらんで」
『それは……大事にしてもらってたけど……ええー、マジかあ……』
緑さんがワシに聞いてきた。
「和泉さん、あれからも千歳ちゃんにずっと好き好き言ってるの?」
『まあ、そんな感じだけど』
和泉はワシのこと好き過ぎるけども。うーん、今、前とは違う状況なんだよなあ。
……和泉は、相談に乗ってもらってた人に、筋として決着を伝える、みたいなこと言ってた。じゃあ、ワシも少しは話すのが筋なのかな?
『うーん、えっと、ここだけの話にしてほしいんだけど』
「なんやなんや」
「何かあったの?」
『ワシ、しばらく和泉の恋人やることにしたんだ』
「ええ!?」
「そうなの!?」
和束ハルも緑さんも、目を丸くした。
「え、なんでなんで!? どないしたん!?」
『うーん、あいつ5年間がん再発しないか用心しなくちゃいけないからさ、もし5年の間に何かあったら、ワシ後悔してもしきれない気がして、だから5年恋人やってやろうかって』
緑さんがまん丸目のまま聞いてくる。
「え、でも和泉さん絶対5年でキリつけられないでしょ!?」
『そうなんだよ、あいつズルいんだよ! なんかさ、「俺が好きな人できるまで恋人でいて!」とか言うから、しょうがないなって言ったら「俺は千歳以外の人のこと千歳ほど好きになれないから、一生だよ」とか言うんだ!』
和束ハルが吹き出した。
「そら一本取られたなあ」
緑さんは苦笑した。
「もう和泉さん、一生千歳ちゃんのこと離せないわよ」
『えー、ワシはあいつにいい女と結婚して子供作ってほしいんだよ!』
和束ハルが「ありえんありえん」と笑った。
「和泉豊にとって、あんたほどいい女はおらん」
『ワシ女じゃないぞ?』
「厳密に言えばそうやけども」
『それに、ワシじゃ子供産んでやれないしさあ』
緑さんがワシを見た。
「じゃあ、もし子供の件がなかったら、千歳ちゃんは和泉さんの気持ち受け入れるの?」
『えっ……』
もし子どもの件がなかったら?
『な、なくすことはできないし……』
「仮定の話よ。千歳ちゃんが子孫にこだわらなくなるとか、奇跡が起きて和泉さんの子どもを持てるとかになったら、千歳ちゃんは和泉さんの気持ち受け入れるの?」
そ、それは……。
『わかんないや……和泉のことは大事だけど……』
「そう、なら無理に和泉さんのこと受け入れなくてもいいのよ?」
『無理はしてないけど』
緑さんの仮定は、ワシの心にいつまでも残った。
もしワシが和泉の子ども産める体だったら、ワシは和泉と結婚してやろうと思ってたんだろうか?




