番外編 金谷千歳の失言
最後まではできなかったけど、和泉と裸でたっぷりいちゃついて、裸で抱き合って寝た。
朝。ワシのほうが先に目が覚めて、和泉もむにゃむにゃ言ってもう起きそう。ん? 起きそう……そうだ、今のタイミングならどうにかならないかな?
布団の中を覗いてみる。和泉の和泉が元気になってた。
『おっ! やるか!』
ワシは、コンドームを手にして和泉の上にまたがった。
「ふぇ? えっ何?」
和泉は寝ぼけてたけど、被せてやったら「えええ!?」と騒いだ。
「な、治ってる!」
『今のうちだ!』
「う、ウワーッ!」
無理やり挿れさせて、多少動くと、和泉はあっという間に果ててしまった。楽でいいな。
和泉は呆然としてた。まあ、長年の童貞を捨てるにしてはあまりにもあっけなかったからな……。
「こ、こんなにあっさり……」
『よかっただろ?』
「よかったけど! せっかく千歳が許してくれた1回だったのに! どうせならもっと味わっておきたかったのに!!」
和泉は両手で顔を覆った。
『グダグダ言うな、それに別に1回だけとは言ってないだろ』
「え!?」
和泉はびっくりして顔を覆った手をどけた。
『まあ……多少は付き合うよ。お前に練習させたいし』
「そんな! 俺は練習と思ってない! 千歳とならいつだって本番!!」
ワシはすがる和泉を押しやった。
『練習だっつの! ワシはお前が他の女と結婚するの諦めてないからな!』
「そんなー……」
和泉は露骨にがっかりしたので、ちょっとかわいそうになった。うーん、触りっこするのは意外と悪くなかったし、和泉は大喜びだったし、多少ならセックス付き合ってもいいかなと思ってるのは本当なんだよな。
……それなりに元気に見えるけど、和泉はまだガリガリ。回復しきってないし、あと5年はがんの再発に怯えなきゃならない。
5年……その間に何かあったら、ワシもっと何かしてやれたんじゃないかって、悔やんでも悔やみきれないだろうなあ。5年、5年かあ……。
『その、ワシも少し考えがあるからさ。とりあえず、朝飯にしよう』
服を着て、適当に朝飯を作る。今日の味噌汁はナスと玉ねぎにしよっと。目玉焼き焼いて、納豆もつけて、キュウリとニンジンのぬか漬け切って、こんなもんか。
和泉はしょぼくれてたけど、いつもみたいに箸出したり飲み物出したりはしてくれたので、ワシはさっと食卓を作れた。
2人でいただきますをして、和泉は味噌汁に口をつけつつ言った。
「ねえ千歳、考えって何?」
『うーん、あのさ、お前5年再発しなかったらとりあえず安心なんだろ?』
「うん」
『だからさ、ワシ、5年恋人をやってやるよ』
「え!?」
和泉は身を乗り出した。味噌汁こぼすぞ。
『もし再発したらかわいそうすぎるから、5年間恋人やってやる。結婚相手探すの、それからでも遅くないだろ?』
和泉は「こ、恋人……恋人……」と信じられないようにつぶやいていたが、やがてハッとした。
「5年限定は嫌だ! お願いだから、俺に好きな人できるまでにして!」
おっ、好きな人作る気なのか。
『んー、しょうがないなあ』
和泉は、ぱっと顔を輝かせた。
「やった!」
『好きな人、ちゃんと他に作れよ』
「いや、俺は、千歳以外の人を千歳ほど好きになれないからね」
『うん?』
和泉は、ワシににっこり笑いかけた。
「だから、一生だよ」
なんだって!?
『このバカ! アホタレ! あきらめるんじゃない!』
「あきらめたとかじゃなくて、俺は千歳が好きなの!」
「バカ! 本当にバカ!!」
言葉尻を取りやがって! こんなコスい奴だと思わなかったぞ!
でも和泉は本当に幸せそうで嬉しそうで、ワシはもしかしたら、とんでもない奴に惚れられてしまったのかもしれないと思った。




