贅沢言っても仕方ない
九さんの宿でたっぷり温泉に浸かり、たっぷりリフレッシュして家に帰ってきた。九さんちの庭で軽く散歩をしていたけど、歩いても疲れにくくなったし、少し体力が戻ってきた気がする。
しかし。
下半身は一向によみがえる気配がない。体力の問題じゃないんだろうか。
いや、復活しても一人遊びにしか使い所ないんだけど。それでも悲しい……。
夜は、千歳がさっと夕飯を作ってくれた。作り置きのレバーの甘辛煮、小松菜のニンニク炒め、焼きうどん。
『ほら、レバーで精つけろ』
「ありがとう、いただきます」
千歳と一緒にご飯を食べられるのは嬉しい。ここ数日過ごしてきたように、千歳に他の人とくっつけと言われつつも「俺は千歳が好きだよ」という姿勢で暮らしていければ、それでいいと思うべきかもしれない。下半身の件は本当に悲しいけど。
千歳には恋愛欲も性欲もないし、ていうか俺のこと振ったし、それなのにずっと優しくしてくれて一緒に暮らしてくれるだけで、奇跡みたいなんだから。
千歳が、食べる俺を見ながら聞いてきた。
『どうだ? うまいか?』
「うん、おいしいよ」
『子狐たちの料理もうまかったけど、ワシのだってイケてるだろ?』
「そりゃもちろん、とってもおいしい」
俺は千歳に笑いかけた。
求め過ぎなんだよな、きっとそうだ。こうやって2人で食卓を囲めるだけで、幸せだと思わなきゃ。




