これも恋バナかもしれない
九さんの家で、上げ膳据え膳朝風呂昼風呂でのんびり過ごしている。「薬食いですよ」と言われて、食事にはジビエがたくさん出た。猪肉の味噌漬け、キジのすまし汁、鹿肉の煮込み……。どの肉も少し歯ごたえがあったが、噛むほどに旨味がにじんで、とてもおいしかった。
千歳に、昔は肉を食べて滋養をつけることを【薬食い】といったのだと教えてもらった。皆、俺に滋養をつけさせようとしてくれてる……ありがたい。
お礼として、俺はまた子狐ちゃんたちにインターネット講座をした。最近流行りの詐欺への対策、スパムの見分け方、個人特定への対策。Berealとの安全な付き合い方も内容に盛り込んだ。
子狐ちゃん達はきゃあきゃあ言いながら俺のところに集まってきたが、話の内容は真剣に聞いてくれた。ていうか、みんなだいぶ俺に懐いてくれた。
子狐ちゃん達に囲まれてネット質問に答えていると、端で見ていた千歳がため息をついた。
『もう化け狐でいいから、こいつらがもうちょっと育ったらどれか一人口説いてくっつけよ』
おいおい、生徒に手出せないだろ。いや、千歳には別の方向で言ったほうがいいかな。
「できないね、俺は千歳が好きだし」
千歳ににっこり笑いかけてみせると、千歳は憤慨した。
『クソッ! いい笑顔しやがって!』
俺たちのやり取りを聞いた子狐ちゃんたちはどよどよした。
「えー!? お二人はどういう関係なんですか!?」
俺は苦笑した。
「いやー、こないだ好きって言ったけどフラれたんだよね、千歳ね、俺が他の人と子供を持つことより自分のことが大事なんて信じられないって」
「ええー!?」
騒ぐ子狐ちゃん達に、俺はさらに言った。
「でも一緒にはいてくれるって言うから、じゃあ一生独身でいたら千歳のほうが大事って信じてくれる?って言っておいた」
子狐ちゃん達は目を見開き、「きゃー!」と騒ぎ出した。
「すっごい!」
「愛されてる!」
女の子って、恋バナ好きだな……。
千歳はまたむくれた。
『本当にこいつはもう!』
子狐ちゃん達と一緒に講座を聞きに来ていた九さんが笑った。
「ほんに、壮大な口説き文句じゃのう。朝霧錦の件の時も、これくらい言っておけばよかったに」
「いやー、その節は大変ご迷惑をおかけしました」
あの時は苦しかったな、千歳のことが本当に好きなのに、それを隠し通さざるを得なくて。
千歳は怒るだろうけど、これからも周りの人に事の顛末を話して、俺は千歳にぞっこんですって伝えておこうかな。




