番外編 金谷千歳と外堀埋められ
和泉は狐のお宿に行ってずいぶん回復したみたいで、散歩に行って家の前の坂を登ってもへばらなくなった。やった!
和泉も嬉しそうだった。
「楽に散歩できるの、幸せ〜」
『いっぱい散歩して、いっぱい花撮ろうな』
「うん、おばあちゃんも喜ぶし」
この5月はそんなに暑くなくて、ちょうどいい気温。和泉が楽しく散歩できたらいいな。
散歩から帰って台所仕事してたら、ピンポンが鳴って狭山先生と奥武蔵さんが来た。狭山先生は紙袋を和泉に渡してた。
「お借りしてた資料、お返しします。助かりました」
「いえいえ」
わざわざ2人で来たってことは、2人とも和泉と話したいのかな?
奥さんも、和泉を見て嬉しそうだった。
「入院してた時より元気そうだね」
「うん、割と。千歳が元気のつくものいろいろ食べさせてくれてさ、あと九さんが家に招いてくれて湯治させてくれて」
「へえー!」
やっぱり2人とも和泉と話したそうだったから、ワシは和泉に『上がってもらいなよ! 茶出すよ!』と促した。
2人は「え、いいんですか?」「じゃあ、ちょっとだけお邪魔します」と入ってきた。
麦茶とお菓子を出したら、三人は話に花を咲かせていた。奥さんは特に嬉しそうだ。
「本当によかった、順調そうで」
「後は髪が生えれば完璧なんだけどさ」
狭山さんが和泉に聞いた。
「やっぱり、生えるまで結構かかるんですか?」
「まあ、1、2ヶ月かかるそうです。永遠にハゲじゃなくてよかった。あ、そうだ」
和泉は何か思いついたみたいだ。
「その、2人には前に私の千歳への気持ちを相談したので、一応その件の決着について話しておこうと思うんですけど」
「え、決着ですか!?」
狭山先生は驚き、奥さんも目を見開いた。
「どうなったの!?」
「えーと、入院中に千歳に告白したんですけど、まあフラれまして」
「ええー……」
「ありゃー……」
「なんかね、千歳は、私が他の人と子供作ることより千歳と一生一緒にいることのほうが大事だっていうのを信じてくれないんですよね。だから、私が一生独身でいたら信じてもらえるかもしれないと思って、今それを実行中です」
狭山さんは「うわー……」と息を呑み、奥さんもびっくりしたようだ。ワシは和泉の肩を小突いた。
『もう! なんで言いふらすんだよ!』
「だって、2人には相談に乗ってもらったから、結果を言う義務があると思って」
『なんでそんなとこ几帳面なんだよ!』
狭山先生が苦笑した。
「まあ、和泉さん、他の人を見つけるのはもう無理ですよね」
奥さんも笑って和泉に言った。
「お幸せに」
ワシは叫んだ。
『なんでみんな和泉の味方なんだよー!』
和泉はワシに微笑みかけた。
「まあ、これまでの積み重ね」
『確かにお前だいぶ前からワシのこと好きだったみたいだけど!』
和泉が周りに独身宣言しまくったら、結婚の話持ってくる人がいなくなるじゃないか!
あ、もしかしてそれが和泉の狙いなのか!? くそー!!




