君が愛しくて仕方ない
千歳と二人で、九さんちに泊まるための荷造りをしている。
「お礼はいいって言われたけどさ、やっぱ気遣いとしてなんか持っていきたいよね」
バッグに服を詰めつつ千歳にそう言うと、千歳も『うん』と頷いた。
『ふるさと納税で来た米余ってるから、それ持ってくのはどうだ? ワシ、お前がいない間、あんま米食べなくてさ』
「いいね、まだお米高いもんね……え? 千歳がお米を食べない?」
毎食どんぶり山盛りのご飯を食べる千歳が!?
「えっなんで!? どうしちゃったの!? 食欲なかった!?」
俺がツッコむと、千歳は目を泳がせた。
『いや、めちゃくちゃ食べてたんだけど……なんかお前がいないと作る気なくなっちゃってさ、気分が暗くなるから甘いものばっかり食べてて……』
「そ、そんなだったの……」
千歳、そこまで落ち込んでたのか……。ずっとこらえてたのか……。
そんなに心配してもらえて申し訳ない気持ちと、そんなに心配してもらえてて嬉しい気持ちと、俺は半々になった。
「えっと、俺はもう大丈夫だからね。絶対再発しないし、そのための努力は惜しまないから」
『うん……』
ごめんよ心配かけて。でも、そんなに落ち込んでいたのに、俺に負担をかけないために、俺の前では明るく振る舞ってくれていたのか。
千歳的には、そこまで落ち込んでいたのはあんまり触れて欲しくなかった話題らしくて、千歳はあわあわしつつ言った。
『え、えっと、あと、その時買い込んだお菓子がだいぶあるからさ、あとはそれでも持ってこうかなと』
「そうだね。千歳のお金で買ったやつだろ? 俺、そのお菓子のお金出すよ」
『いいって。けっこう余り物も多いからさ、計算するの大変だ』
バッグの荷造りが済んだあと、千歳は台所に行ってお菓子を出し始めた。
「どんなお菓子があるの?」
『いろいろあるけど、あそこ子狐がたくさんいるから分けやすいの選んで持ってくつもりだ。えーと、リンツチョコと、ヨックモックと、シュガーバターの木と、ゴディバの一口チョコと……』
「うわ、たくさん……」
台所の戸棚からどんどんお菓子が出てくる。本当に甘いものばっかり食べてたんだな……。
お菓子の量が、そのまま千歳の落ち込みを表しているようで。そんなに落ち込んでいたのに、俺の前で気丈に振る舞ってくれていたことが愛しくて。俺は、お菓子を整理する千歳の頭を、思わずそっとなでた。
「ありがとうね、大好きだよ」
『???』
千歳は不思議そうに俺を見て、それからはっとした。
『いや、口説いても無駄だからな!』
「別に口説いてはいないけど、俺が千歳のこと好きでいるのは自由だろ?」
笑ってみせると、千歳は「もー!」とむくれていた。




