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子々孫々まで祟りたい 〜転んで祠を壊しちゃったら怨霊が子々孫々まで祟りに来たけど「俺で末代」と言ったら怨霊が困り始めて子孫を残させようと奮闘しだした件について〜  作者: zingibercolor・種・がくじゅつてきあかげ
第24シーズン

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これなら太らざるを得ない

 朝、香ばしく甘い匂いで目が覚めた。トーストの香り? いや、それよりもっとやわらかな、幸せな香りだ。

 千歳はすでに起きていて、寝室を出た俺に台所から声をかけてくれた。


『おはよう! 今日の朝飯は焼きたてパンだぞ』

「パン!? 作ったの!?」

『うん、しばらくお前米食べられないだろ、どうせだからパン作りも覚えたくてさ』


 そして朝食には、ふわふわの白い平焼きパンがでた。それからハムエッグ、レバーペースト、味噌汁、人参ときゅうりのぬか漬け。千歳はパンに加えてどんぶり山盛りご飯。

 いただきますをして、俺は早速パンに手を伸ばした。焼きたてで温かい。ちぎって口に運ぶと、もっちりとして麦の甘みが素晴らしい。


「おいしい! もちもち! これ何パン?」

『フォッカチオ! 高加水のやつだからもちもちなんだ、雁ヶ音さんがレシピ教えてくれた』

「へえー」


 レバーペーストも合う。まろやかな風味で何の臭みもないレバーペーストも、千歳の手作りだそうだ。本当に何でも作ってくれるな……。

 朝ごはんを食べて一息つき、家の前(坂がない)を少し散歩して、家でのんびりしていたら狭山さんからLINEが来た。


「今、家いらっしゃいます? 行っても大丈夫ですか?」

「大丈夫です、どうかしましたか?」

「退院祝い持っていこうと思って。奥武蔵さんと選んだんで、ぜひ受け取ってくださいよ」

「え!? いやー、ありがとうございます」


 俺は台所仕事している千歳に言った。


「狭山さんが今来て退院祝いくれるって!」

『え! よかったなあ、何くれるのかな』

「なんだろうね、お見舞いの時も俺の好きなもの持ってきてくれたし」


 入院初期に狭山さんが来てくれたとき。最近オレンジジュースは高いのに、狭山さんはわざわざオレンジ100%のジュースを探して買ってきてくれた。いい人なんだよ。

 狭山さんはすぐ来た。


「和泉さん、だいぶ消耗してるみたいなんで。リカバリーウェアどうぞ」

「え!?」

『あの高いやつ!?』


 狭山さんは微笑んだ。


「普段お世話になってるのに比べたら、全然高くありませんって。上下一揃え2枚ずつありますから、適当に洗い替えに使ってください」

「うわー、ありがとうございます!」


 リカバリーウェア、疲労回復で話題だが、なかなか手が届かない値段だ。それを4枚も!

 千歳は嬉しそうだ。


『よかったな! パジャマにしてどんどん回復しろ!』

「本当にありがとうございます、これでちゃんと療養します」


 そんなこんなで狭山さんは帰り、千歳はお昼にまた色々作ってくれた。ほうれん草のケークサレ、牛肉のトマトシチュー、レーズンのヨーグルト漬け。


「このトマトシチュー、なんか味が深くておいしいね」


 単にトマトで牛肉を煮込んだにしては、香りが良くておいしい。パプリカも入ってるから、その香りなのかな?


『グヤーシュっていうんだ、ハンガリーのシチュー。赤身の牛肉は鉄分多いって言うから、お前にいいと思って』

「ありがとう、本当に……」


 もう本当、千歳には足を向けて寝れないな。いや、隣に寝てるから足を向けて寝ることはないけど。


『レーズンも鉄分多いからな、ちゃんと食べろな』

「うん、ありがとう」


 千歳は、お昼の後も台所に立って何か作っていた。レモンのいい香りがする。


「何作ってるの?」

『レモンカード!』

「レモンカード?」

『レモン入りカスタード。お前好きそうな味だから』

「えー、おいしそう!」

『バターたっぷりだから、お前を太らせるのにいいと思ってさ』

「頑張って食べます」


 折しもゴールデンウィーク。狭山さんのDiscord鯖の面々と楽しくチャットしていると、あっという間におやつの時間。千歳は、焼きたてスティックパイとサイダーを出してくれた。


『さっきのレモンカード入り! あと、かりんサイダー』

「うわ、いい香り」


 一口かじると、甘酸っぱさのあと、ふわっと香るのがレモンのさわやかさとパイの香ばしさ。これはたまらないな……。


「でも、一日中こんなに作ってもらっていいの? 千歳も仕事あるんじゃない?」

『ああ、組紐の仕事だからさ、お前がいない間に先取りでやったことになったから、今時間あるんだ』

「そうなの?」


 千歳は口をとがらせた。


『だって、お前の入院中、ワシ家でずっと暗い気持ちでさ、組紐作りまくって気をそらさないとやってけなかったんだもん!』

「え、そうだったのか……」


 千歳、俺の前では明るくいたけど、やっぱりすごく悲しんでたのか……。


「心配かけてごめんね、でももう大丈夫だからね」

『お前が太るまで、あんまり大丈夫じゃないなあ』

「食べます、メイバランスも飲みます」

『よし』


 千歳は我が意を得たりと笑った。朝からごちそう攻めで、メイバランスがなくても体重戻りそうだよ。

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