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子々孫々まで祟りたい 〜転んで祠を壊しちゃったら怨霊が子々孫々まで祟りに来たけど「俺で末代」と言ったら怨霊が困り始めて子孫を残させようと奮闘しだした件について〜  作者: zingibercolor・種・がくじゅつてきあかげ
第24シーズン

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それでもすべては解決しない

 昨日から今日にかけて、たくさんの人から退院おめでとうをもらった。狭山さん、おっくん、萌木さん始め会社の人達、狭山さんのDiscord鯖の面々、そして俺のファン(インターネット付喪神)。南さんと、水香さん経由で九さんと深山さんからもおめでとうが来た。

 俺はみんなにお礼を言いつつ、退院後も一ヶ月くらい療養することを伝えた。すぐに万全に動けると思われると困るからな。

 さて、がんにならないためには、太ることと禁酒だけじゃなくて、適度な運動も必要である。そういうわけで、千歳と久々に散歩に行った。

 最近のこの季節にしては涼しく、過ごしやすい。そして、バラの季節でもある。近所の生け垣や公園に咲き誇る、深紅のバラ、白いバラ、黄色のバラ、ピンクのバラ。黄色だけど縁だけ赤いバラや、ピンクだけど縁だけ赤いバラもある。おばあちゃんに送るために写真を撮った。


『いやー、きれいだな!』

「本当だね」

『お前が退院するまで、花なんて見る余裕なかったよ』

「心配かけてごめん」

『別にいいよ』


 千歳は微笑んだ。

 それにしても、おばあちゃんに花の写真送るのは久しぶりだ。嘘ついてるのは心苦しいけど、ちゃんと治ったよとは伝えなくちゃ。

 それなりに歩いてから帰途につく。そして俺は困った。家の前の上り坂で、息が上がりきってへたり込んでしまったから。くそー、行きは下り坂だったから気づかなかったけど、そう言えば俺貧血でフラフラなんじゃん!

 千歳がすごく心配そうに俺の顔を覗き込んだ。


『おい、大丈夫か?』

「貧血……この上り坂はきついかも……」

『動けなさそうか?』

「ちょっと休ませて……」


 俺がそううめくと、千歳は少し考えてから俺に言った。


『お前、ワシの首につかまれるか?』

「首?」

『ワシの首に抱きつく感じ』


 千歳が何をしたいのかわからなかったが、考えられる状態じゃなかったので、俺は素直に千歳の首に手を回した。


『よしよし。よっと』


 すると千歳は俺の背中を支え、俺の膝の裏に手を回し、なんと俺をお姫様抱っこしてしまった。


「え、ええ!?」

『よし、これで家まで運ぶから』

「い、いや前みたいに俵みたいに担いでもらえればそれでいいよ!」

『前? いつだっけ』


 千歳は首を傾げた。


「ほら、会った初めの年、帰りが遅くていつの間にか巨大化してたとき」

『あー、そう言えばそうだったな』


 千歳は、俺をじっと見て、そして言った。


『ワシは、あの頃よりお前が大事なんだ』

「えっ……」


 俺のことが大事!? あの頃よりも!?

 びっくりしてドキドキして、不覚にもキュンとしてしまった。俺が大人しくなった隙に、千歳はスタスタ家まで俺を運んで行った。 

 千歳は、家の前で俺を下ろして言った。


『昼飯、パンとレバーペーストな。鉄分とれ』

「ありがとう……」

『ほうれん草の巣ごもりたまごも作るぞ』

「本当にありがとう……」


 千歳がここまでしてくれるんだから、俺も努力しないといけない。血を作る、太る、元気になる……漢方の力を借りるか。

 お昼ご飯後。俺は、退院したことを伝えるためと、漢方薬を買うために父親に電話した。


「あ、もしもし、お父さん?」

「大丈夫か? どうかしたか?」

「昨日退院した。抗がん剤のせいでさ、痩せて貧血でフラフラだから、四君子湯28日分買いたいんだけど」


 四君子湯という漢方薬は、食欲と元気のない人に使うものだ。それに加えて造血作用もある。割とシンプルな漢方薬だが、漢方薬はシンプルな方が効きが早いとされている。

 父親は不思議そうだ。


「四君子湯? 十全大補湯じゃなくていいのか?」

「補血の生薬は、俺の胃にはきついよ」


 漢方薬には血を補う生薬もあるのだが、大体が胃に重い。俺の胃には四君子湯が合うと思う。

 父親は言った。


「すぐ送る」

「お金、どこに振り込めばいい?」

「あとでLINEで送る」

「よろしく」


 そういうわけで電話を切った。千歳が俺のところに来た。


『なんか薬買うのか?』

「あー、食欲が出て血を作る漢方薬をね」

『お前にぴったりじゃないか!』

「うん、とりあえず1ヶ月分買った。これで太れればいいけど」


 太るのと貧血はこれでいいとして、俺は最近気づいた懸念がある。

 なんというか……その……役に立たなくなってる。下半身が。朝の起き抜けもダメ。

 抗がん剤は、男性ホルモンに直接は影響しない。だけど、がんのショックや抗がん剤の負担は極度のストレスだったし、間接的には心身に大いに影響があっただろう。

 身体が回復すれば、元に戻るかな? それとも、ずっとこのままなのかな?

 ……治っても、千歳と性的なことはできないだろう。フラれたし。

 役に立たないなら立たないで、千歳とそういうことができないことに苦しまなくて済むかな? もう二度と役に立たないなら、悲しいけど、諦めがつくかな? 悲しいけども。すごく悲しいけども。

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