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恵まれてるからありがたい
明日退院なので、もう荷物をまとめ始めている。今日は早めにお風呂を済ませて、もう使わない入浴具や着替えなどをスーツケースとバッグにしまった。今ある洗濯物も、全部洗って乾燥機にかけてまとめた。
「これで何とかなったかな……」
そうやって荷物を確認していると、太田さんに話しかけられた。
「明日退院だっけ?」
「そうです、おかげさまで」
太田さんは笑った。
「よかったねえ、若い人はねえ、やっぱり治んなくちゃね」
「これまでありがとうございます、病院のこと、いろいろ教えてくださって」
「なんもしてないって。あの千歳って子と仲良くしなよ」
その時、千歳がちょうど病室に入ってきた。
『え? ワシのこと呼びましたか?』
太田さんは千歳に微笑んだ。
「いやー、2人は仲良くていいなあと思ってねえ」
『え? えへへ、まあ仲良しではあります』
照れくさそうに頭をかく千歳。俺は太田さんに言った。
「仲良くやっていきます、これからも」
「うんうん、仲良きことは美しきかな」
仲が良かった奥さんを、早くに亡くした人。俺みたいなのを妬んでもおかしくないのに、俺と千歳が仲良いのを応援してくれている。
……俺は、病院でも人に恵まれたな。




