第154項「真夏下の昼休憩①」
前回からちゃくちゃくと更新していきます。
「やっと、健さんの馴れ初め終わりましたね?先輩…。」
「ああ。俺も健さんがあんなに熱く話しをしている姿を見るのは久しぶりだったよ。でも、健さんの方からさと美さんに大学生時代にアタックをかけていたというのがちょっと驚きだったなぁ。そんな話今日初めて知ったわ。丈瑠の奴は知っているのかなぁ…。」
「そうですよね。大学在籍中はサークル、ゼミと同じだけど、男性陣と女性陣の年齢差が意外と離れているけど一緒に過ごすことが多かったというのがちょっとすごいなと思いましたね。」
「本当だよなぁ。健さんが大学院まで進んだという話は本人から前に聞いたことがあったけど、自分の父親も同じ大学のそのまま院に進んだという話は一度も聞いたことなかったからそれも合わせてびっくりだったよ。」
父親が大学院に通っていたなんて、今まで1回も聞いたことが無かった。
「先輩の両親と健さん、さと美さんが仲が良くてそのままそれぞれ恋人として成立するのも素敵な話ですけど、年齢が5歳以上の人と恋愛をするってちょっと私にはハードルが高いというか単純に大人だなぁと感じてしまいましたね…。」
「う~ん。それもそうだけど、さっきの話で一番意外と思ったのがさ、健さんとさと美さんが付き合う前に俺の両親が恋人として付き合っていたというのが正直言うと衝撃で…。聞いた瞬間しばらく情報の処理が出来なかったもんなぁ。それに母さんの方から父さんの方にアプローチをかけて恋人として付き合って最終的には結婚に至るんだから、父さんもあんな美人と良く繋がれたなぁと息子の立場として思うよ。」
「そうですかね?先輩のお父さんは先輩同様に身長が高くて大柄で親切だし仕事ができる男性という感じだと最初に事務所で会った時に思いましたから、別にマイナスな面は無いように私からは見えますが…。」
「まぁ、そうなんだけど、正直言って父親にあまり言える事ではないけど、あの人顔が怖いじゃん?だから、ここだけの話、顔で選ばれた感じではないのかなぁ~って思っている。」
「そう言う先輩だって顔は怖いじゃないですか?てか、最初お会いした頃なんて私の書く小説の主人公のように前髪が長くて目元が見えなかったのでちょっと怖い思いをしていたんですからね。今だから言える話ですけど…。」
「え、そうなの?ごめん。それは知らなかった。個人的には嫌いではない髪型というか格好良いと思っていたんだけどなぁ…。」
もう前髪を伸ばすのはやめよう…。印象が悪くなるみたいだ。
「え…?そうなんですか…まぁ、今は全然顔立ちや目元もよく見えて特に問題ないですけど、先輩はもう少し外見にも注意を意識的に注意を向けた方が良いですよ?」
「あぁ。それは、これでも理解しているつもりだ。話は戻るが、健さんが2回目の告白で、さと美さんに了承が得られたという話も意外性があったなぁ。男の俺から健さんは見た目も中身をとっても魅力的だと思っていたからなぁ…。」
「え、先輩?女の人というよりは男の人の方が好きなんですか?」
違うでしょ? なぜそう捉えたのかなぁ…。
「は…?華南さん、好きという言葉に誤解が生じている気がするが、俺が言いたいのは、健さんみたいな魅力的な人に少し憧れを持つなぁ、親しくなれたら良いだろうにという人間的に“好き”という意味であるからな?絶対誤解しているだろ?」
「え、だって先輩が急に魅力的って言いだすからじゃないですか?じゃあ、先輩は女の子は好きでは無いんですか?」
「う~ん、昔は苦手だったけど、大学入って華南さんと出会ってからはそうでもなくなったかな。」
「ふ、ふ~ん。私と出会って変わったんですね…。そうなんですね。それより先輩、昼ごはんどこで食べますか?」
話しずらしたなぁ。まぁ良いだろう。俺もこの会話続けるのしんどいしなぁ。
この手の話題が得意なのは自称恋愛マスター様だろうからなぁ。
「あぁ。そうだなぁ。何時までだっけ、昼休み?」
「一応13時までと言われてはいますが、そんなに慌てて帰ってこなくても良いと言っていたんで…。」
「なるほど。落ち着いてご飯くらいは食べられるという事だなぁ。何か食べたいものとかある?ここから真っ直ぐ行った先にこの地域では比較的大きなショッピングモールがあるからそこに行けば昼食にありつけられると思うよ。」
俺は進行方向の前に見えているショッピングモールの看板を指しながらそう言った。
実家にまだ居た時はショッピングモールで服を買うということは無くて、基本的に併設されている映画館に行くか本屋、中古屋に行くのがお決まりだった。
だから、どんなレストランがテナントに入っているのかも良く知らない…。
「あ、そうなんですか。私が今日食べたいものは…。気温が高くて暑いしさっき熱い話を聞いたので、冷たいうどんとかはいかがでしょうか?」
「うん。良いね!俺も冷たいうどん食べて涼を感じたいと思っていたからね。それでいこう!」
10分ほど歩いて、ショッピングモールの敷地に入るとちょうど昼時ということもあって多くの人が既に並んでいる。
「先輩、お店、結構混んでいますね?」
「あぁ。ちょうどお昼時だからなぁ…。多少の混雑は致し方無い。華南さんは、お店に並ぶのは苦痛だと感じるタイプ?それとも全然問題ないタイプ?」
「私は、あんまり並ぶのは嫌ですね。おいしいラーメン屋さんがあったとして2時間待ってやっと食べられるお店よりは普通の美味しさを提供するラーメン屋にさっと入りたい派ですね。」
「なるほど。俺もあんまり待つのは好きでは無いんだよなぁ…。どうする?うどん屋混んでいるみたいだし?」
「で、でも…。先輩と一緒なら私は何分でも待てますよ?待ち時間を先輩と話す時間に当てられますし…。」
この人さらっとすごいこと言ったなぁ。
俺はこの時間に彼女の言動に等価した話をしてあげられるのか心配になってきた…。
「お、おう…。そうか…。じゃあ待つか…。」
「先輩。お店に入ったらすぐに注文できるように何を食べるか決めておきましょうよ?」
「お、そうだなぁ…。」
待ち時間でも無駄にすること無く上手く使う思考を持つ華南さんはさすがだ。
俺はお店の壁に貼ってあるメニュー表を見ながら考える。
「先輩は何するか決めましたか?」
「ああ。俺は冷たい月見うどんにするわ。華南さんは?」
「う~ん、迷いますけど、今日は冷たいとろろうどんにします!そういえば先輩は、大学卒業したらどうするんですか?」
話変わったなぁ…。
「どうするって?どこかの会社に就職するとかという事?」
「そうです。だって、典型的な大学4年生って今の時期は就活の真っ最中だと思うんですけど。それにこの大学に編入して先輩と関わりを持ち始めて3カ月以上経ちますが、先輩が就職活動を理由に仕事を休むとか全然無かったじゃないですか?」
「あぁ。俺はたぶんどこの会社にも就職するつもりは無いと思うよ。それに今抱えている仕事が忙しくて就職をする時間なんてほとんど無いし。恐らく卒業してもこのまま引き受けている仕事をこなして生活をしていくんじゃないのかなぁ…。一応俺は厳さんの会社の社員として所属して働いているし…。」
「ボディーガード以外に他にこの仕事をやってみたいとか無いんですか?」
「え、なんだろ?YouTuberとか?」
ぱっと思いついた物を口に出してみる。
「何を扱うにもよりますけど、先輩には正直いって似合わなそうですね…。」
「おいおい、意外と辛口コメントだなぁ。じゃあ…何だろ、自宅警備員とか?」
「先輩って今はだいぶましになりましたけど、ついこの間までは見た目は超ド陰キャっぽかった事に付け加え、実際は外見からの予想とは異なり身体を動かすことが好きなんですから“閉鎖空間の神人”とかも務まらないですよ?」
「この文章の中で俺に対して意外と当たりが強いコメントが飛び出してきたのと同時にネットスラングっぽい返しをして来たところが工夫があるなぁ…。作家だから多種多様な言葉を知っているから出来る技なのかなぁ。」
「そりゃぁ…。プロの作家を目指して歩いている者ですからね。近年のネットスラングも把握しておいて当然ですよ?」
「いつも電車乗っている時はただの女子大学生だなという感じだけど、なんか急に小説家感が滲み出てきたなぁ…。」
「いや、アシマネである先輩は私の事は常日頃小説家であると思っていてくださいよ。私のもう一つの仮面を知っているのは大学の中では唯一先輩だけなんですから…。」
いや、たぶん俺以外に丈瑠もたぶん気づいていることはここでは黙っておこう。
ややこしくなる…。
「あ、お待ちしている次の席の方。どうぞ~~」
「先輩。私達の順番来ましたね?行きましょう!!」
“うん”と頷き俺らは涼な空気が流れている店内に入っていたのだった。




