第153項「アニメ化PV製作会議②」
ご無沙汰しています。今後は週に3回、月・水・金曜日の18時に更新します。
どうぞよろしくお願いいたします。
「それで今後の制作で伝達事項があるから伝えとくね。まず、第1弾のPVの解禁日は10月2日で、放送枠は完全に決まった訳では無いんだけど、深夜1:20開始で行こうかなと思っているんだ、それで新島先生は良さそう?」
健さんは、スクリーン上に今後のスケジュールを見せながら話し始める。
「はい。私は、その時間帯に起きていることもあるので大丈夫です。それでお願いしたいです。」
この人、1:20からリアルタイムでアニメ観るとかすごいなぁ.....。
「了解!放送開始日はまだ仮決定の段階だから今後変更があるかもだけど、決まり次第連絡するね。完全に決定するのはだいぶ先になっちゃうかもなぁ。」
「だいぶ先というのは、具体的にいつくらいの時期を指すのか聞いても良いですか?」
「う~ん、私もまだテレビ会社から連絡が来ていないから分からないけど、今まで制作してきた作品とかを振り返ると遅くても夏期休暇の終わりくらいには決まるのかなと思うよ。」
「分かりました。ありがとうございます。」
俺は持ってきたPCを立ち上げ今まで言われた事を議事録として整理しておく。
「それで、次の話なんだけど、登場人物に声を当てる人にそれぞれ求めるものを話し合いたくて…。」
話しを進めながら、健さんは俺らにこの作品で登場する人物の名前などのプロフィールを詳細にまとめた資料を配布してくれた。
この10枚程の紙には登場人物の誕生日や性格、苗字や名前の由来元などがかなり細かく書かれている。
長くこの作品を読んできている俺ですら、初めて知った情報もたくさん盛り込まれていて、新島先生の作品が好きな人にとってはすごい価値がある物を彼女のファンの誰よりも早くに目を通すことができていることに自分がとても興奮しているのが分かった。
最初に主人公の欄に目を通し始めると、「後藤豪」という名前が記されていた。
彼は、身長が高くて痩せている点までは主人公キャラではよくあるプロフィールだが、留意する点として全体的に長髪で特に右の前髪によって完全に目元が隠れているのが特徴的な主人公だ。
見た目から陰キャを極めていて、俺はこの話を読み始めた時は自分もここ最近まで左側の前髪で目が隠れていて髪がボサボサだった事からこの主人公にすごく親近感を感じていた。
彼が小学校時代に住んでいた市内の高校に転校してすぐの頃は、あまり他のクラスメイトと関わることは少なかった。
その理由には家庭的な理由があり毎日学校が終わると家事や家でできる仕事をこなして生活をしている自立した面を見せてくれる。
このキャラについてまとめると外見は他の登場人物と比べると存在感が少し薄いが中身はかなりスペックが高くこの物語の中心人物であるのだ。
俺は主人公のようにはなれないけど外見だけではなく家事が得意な部分や陽キャが苦手という考えの点とかがすごくシンパしーを感じ良いキャラだと思っている。
「やっぱり、この作品の良いところは一度は主人公の自信の無さによって幼馴染である宮原なにわちゃんと別れるんだけど、最終的には幼馴染同士で結ばれる方向性に持っているというのが新しいよね~。」
小山も熱心に紙を丁寧にめくって読み込みながらそう言う。
「確かに主人公との相手役である、なにわちゃんはすごいリーダーシップがあってまさか生徒会長を2年連続就任するという高校史上初めての快挙を成し遂げるんだもんな。それに加えて、全国模試上位クラスレベルの学力を持っているんだけど、意外と運動の中で球技が苦手だったり、料理が全然得意でなかったりするところがギャップがあって可愛いんだよねぇ。」
「高島は、ここで出てくる物語の中でどの女の子が好みなの?」
「いやぁ、1つに絞るのは難しいなぁ…。どの子もそれぞれ特徴があって可愛い一面を持っているからなぁ~。」
「確かに、それは聞いてみたいですね?先輩は誰推しなんですか?」
新島先生は紙から目を離し視線を俺にかえて、興味津々に聞いてくる。
「う~ん、主人公の豪が中学時代に最初に知り合った時の金沢華恋ちゃんかなぁ。主人公が転校してそれを追いかけるように転校してきた華恋ちゃんはどっちかと言うとタイプでは無いなぁ。」
「つまり垢抜ける前の華恋ちゃん推しなんだ?その理由はなに?やっぱり黒髪で腰まで長く伸びているから?」
小山は食い気味に聞いてくる。
「髪が長いというのもあるけど、やっぱりメガネ女子って誰でも裸眼(コンタクトレンズをつけている場合は「裸眼」ではないと思われます)の時とは違う可愛さがあると思うんだよねぇ…。」
「じゃあ、さっきメガネかけている私を見て、一言言ってきたのはそういう理由だったの?高島…。」
「いや、あれは、普通に似合っていて良いと思うよ?というか何て言えば良いんだろ。社交辞令的なやつ?」
「しゃ、社交辞令ってひど~い。遅れてだったけどさっき似合っていると言われて内心少し嬉しかったんだから、あの時の私の気持ち返してよ~?た・か・し・ま…。」
俺の方を力強い目力でじっと見て抗議しているのが分かる。
「先輩?ここで社交辞令的な奴と乙女な心を持つ女の子に言うのは酷いですよ?」
俺を見る2人の目が笑っていない。
笑っているのは健さんだけだ。
「う~ん、確かに失言だったなぁと思っている。失礼いたしました。」
俺は深々と謝罪をする。
「じゃあ、話を戻すと先輩は、中学時代の品があって穏やかな金沢華恋ちゃんが好きなんですね?逆になんで今の華恋ちゃんは先輩の心に刺さらなかったんですか?」
「世間的にみたら充分可愛いとは思っているけど、俺が好むタイプでは無い気がする。高校生という制限を付けるなら「新山しいさ」ちゃんとかの方が良いかなあ。」
“新山しいさ”は主人公の豪やなにわの1つ下の学年で最終的に同じ生徒会に属するメンバーの後輩ポジションな女の子だ。
髪型がショートカットというかボーイッシュくらいの短さで生徒会での存在感はそこまで濃くは無いが、組織の縁の下の力持ちで陰のリーダーシップさを持つ魅力あふれる女の子だ。
「先輩、かなりニッチな線に行きましたね。確かに彼女も私の好きなキャラです。この作品を書き始めた時は私もまだここまで髪は長くなくてけっこう短かったので、このキャラは強い想い入れがありますねぇ。柚乃果さんは出てくる人物の中で好きな男性キャラとか居ますか?」
「う~ん、この物語はあまり男の子は出て来ないけど、推しは豊岡聖くんかなぁ。」
「へぇ~、その理由は何ですか?」
この物語にはあまり男の登場人物が出て来ないので、女子視点から見ると誰が推しなのかは俺も気になるところだ。
「主人公の豪君との関わり方や幼馴染である山口美羽ちゃんとのなかなか発展しない恋模様と生徒会顧問であり美羽の母親でもある藍の幼馴染同士の様子を見守るところとか、同じ生徒会で一つ学年が上の金沢紗環咲さんからの恋心に全く気づかなくて紗環咲さんががっくりして振り向いて貰えてない部分とか見ていて、面白いかなぁ。」
「あとは、やっぱり金沢家と言ったら弟の文汰だよね?登場人物の中で勉強がダメダメで馬鹿なんだけど体力面には自信があるのと能天気で元気いっぱいな描写も面白いよね!」
俺は、文汰の馬鹿なんだけど人情があって決して人を馬鹿にしない良い奴であるところが好感持てるのだ。
「確かに文汰って面白いキャラだけど、イケメンで何度も告白されていて、恋愛経験豊富なのかと思ったら意外と“なにわ”の事を強く想っていた一途なところが分かった時は可愛い面が見れて少しドキドキしたなぁ…。」
「さぁさぁ。君たち。登場人物についてもっと話をしていたいと思うけど、彼らに声を当てる際に求めるものを考えないとね?」
「健さんは登場してくる女の子の中で誰推しなんですか?」
小山は健さんの今の促しをスルーして質問する。
「う~ん。そうだな。俺は、なにわちゃんの母親である”宮原みやび”さん推しかなぁ。」
「JKより大人の方が良いという事なんですね?理由はあるんですか?」
「まず、俺がここで仮にJKの誰かが好みと言ったら3人とも引くでしょ?」
引くことは無いけど、この子が推しなんだとか言い始めたらなんか健さんの意外性を知ることになりそうだぁ。
「たしかに、ちょっと引くかもしれないけど、2次元なら年齢関係なく好きだと思いますけど?それで誰推しなんですか?」
小山はそう言う。
「僕は娘のなにわちゃんに似て品格があって美しいのと同時に意外と寂しがりやである“みやび”さんかなぁ。守ってあげたくなるというか、豪の父親である天登が再婚したいと息子に伝えた理由が少し分かる気がするよ。」
なにわちゃんに似てというか、みやびさんの品格が美しいという遺伝が娘に伝わったというのが正確な表現だよね。
「な、なるほど、健さんは女の子を守る立場の方が良いんですね。ちなみにさと美さんと比べるとどっちが好みですか?」
俺は小説に出てくる登場人物のヒロインの母親と比較してもしょうがないが一応健さんが“さと美さん”ことをどう想っているのかこれを機に試しに聞いてみた。
「え、そりゃぁ、さと美に今でもぞっこんに決まっているじゃないか?僕の方から告白をしたあの時から今でも惚れているよ…。」
少し迷うかと思ったが、即返事が帰ってきて俺と新島先生と小山は驚く。
「そうだ!せっかくだし、俺とさと美の馴れ初め話でも聞くかい?」
「え…?」
俺ら3人は目を合わせて“どうするの。この状況~~!”と無言で会話をする。
「僕とさと美は大学時代に同じサークルで知り合ったんだよ~~。」
「健さん。登場人物の声優さんに求める声を決めましょうよ?」
「まぁまぁ、まずは私が息子にすら自ら話すことが無かった馴れ初め話を聴かせてあげた後に考えようよ?」
結局、このあと、丸々大学の1回の講義時間分を使ってさと美さんとの馴れ初め話から丈瑠と俺がまだ小さい時の話までを延々と聞く羽目になってしまったのだった。
たぶん、俺があそこで誰推しなのかを健さんに聞いたのが間違いだったのかもしれない…。
というか…この馴れ初め話、息子にも話してやれよと思った。




