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第152項「アニメ化PV製作会議①」

健さんが経営している制作事務所に到着し部屋の中に入ると心地の良い冷たい風が俺らを歓迎してくれた。


「今日も暑い中来てくれてありがとう~。机の上に既に飲み物を注いだから、まずはそれを飲んで一息ついてから会議の方を始めようか。」


健さんはそう言い、俺らは清涼飲料水が注がれたコップを片手にもう一方の手で汗を拭いながら涼を感じる。


「それで、今日の会議内容は既にトシから話は聞いていると思うが、アニメ公開から約半年前くらいに第1弾のPVを公開するんだけど、その動画が完成したからそれを最初は見て感想や訂正点とかあるとかの確認をしてほしい。」


「分かりました。早速質問なんですけど、そのPVには声優さんの声は入っているんですか?」


「あ、そうそう。そのPVには暫定的にナレーションという意味で友人の声優さんに頼んで声を当ててもらいました。ただ、これから登場人物の役にどの声優さんを採用するかは決めていないんだ。だから近いうちにオーディションも開催するつもりだから、またいつやるか決まったらトシの方に連絡飛ばすね。」


「分かりました。」


「じゃあ、そのPVを見て欲しいので、映像室に移動してもらっても良いかな?荷物はそのままで大丈夫だから、必要なものだけ持って、来てもらう形で。私は、準備をするから先に行って待っているから。部屋は地下1階の階段を降りて突き当り右の最初の部屋だから。」


そう言って、健さんはいそいそと部屋を出ていった。


「先輩、PVの映像すごく楽しみですね?」


「ああ。俺も原作から追いかけてきた作品が、まだPVの段階ではあるけどどういうふうに映像として表現されるのか少しわくわくしているよ。」


「そうですよね、先輩。健さんと私が話している時もすごいそわそわしていて、いつもより落ち着きが無くて余程楽しみなのかなと思いましたもん。」


「そ、そりゃあ、俺は新島先生のアシマネであるけど、先生の作品のファンでもあるからね?」


「先輩。こう言う時だけ、先生と持ち上げて呼ぶのは勘弁してくださいよ?」


「だって、今は先生と呼べる時間じゃないの?健さん待っているし早く行こうよ?」


「そうですね。先輩って普段は冷静で落ち着いているのに自分が好きなアニメになると興奮もあるのかもしれませんけど、もう少し落ち着きを持ってください。私の方が恥ずかしいですよ~。」


「それは面目ない。」


「さぁ、行きましょ?私も自分が書いてきた初めての作品がまずはPVという形で映像化されているのを見れるのは楽しみですし。」


俺らは、階段を2階分降りて言われた通り突き当りの廊下を進んで右側に進むと部屋の奥になるスクリーンに大きく映し出されている。


だが、部屋の出口からはそのスクリーンより金髪ショートカット姿の元気溢れるイラストレーターが座っていた。


「あれ、柚乃果さんだぁ。」


「華南さん、いや、新島先生お久しぶりです~。前に会ったのは先月くらいでしたよね?」


「そうですね。柚乃果さんが私に話す時は丁寧語じゃなくて、もっと砕けてもらってよいですよ?私も同年代の人と硬い感じで話すのは苦手なので…。」


「あ、そうですか。推しの作家さんにそう言っていただけてありがたいです。じゃあ今からはタメで行きます。」


「今日の服もすごい可愛いです!柚乃果さんはメガネはかけていましたっけ?確か両目とも2.0だと聞いていたんですけど、金髪女性がメガネかけているのも普段とはまた違った可愛さがあって良いですよね、先輩?」


「え、あ、うん…。」


しばらくの間、男性陣は黙って女性陣の最初の会話を傍聴する感じかと思ったら俺に振られてきてびっくりした…。


俺は小山の服装を確認しながら、まだ金髪のままなのかと思い単純に染めた髪色の維持に関してすごいと感心してしまう。ただ、それだけではない。


「華南さん、この番犬に同意を求めても良い回答はもらえないと思いますよ?」


「いやいや、先輩だって確かに感想を述べるように促しても具体的に多く返事する事は少ないですけど、きっと何か言ってくれますよ?先輩も柚乃果さんのメガネ姿を見て少し驚いていたんだと思いますよ。」


そう。俺は小山が金髪であること自体は驚いていないが、金髪女性がメガネととマッチしていてこれも意外とありなのかもなと思ってすぐに答えられなかったのだ。


「ふ~ん、作家の方はしっかりしているけど、アシマネの方はパッとしないね~。アシマネ代わった方が良いんじゃないの~?」


「もう~。柚乃果さん。私のアシマネである先輩にそんな意地悪こと言わないでくださいよ?」


「う~ん!!その怒った華南さんの顔も好きだわ。こんな美しい顔から生まれる様々な表情を近くで24時間、365日見れるとか高島がうらやましいな~。ねぇ?私とアシマネ代わらない?」


「またまた、そんなこと言ったら先輩が反応に困るよ~柚乃果さ~ん…。それに私は先輩と24時間、365日毎日ずっと一緒に居るという訳では無いんですよ?」


「え、そうなの?いつでもどこでも何なら、寝るベッドにまでお側に付くのがアシマネとしての任務なんじゃないの?」


寝る時まで一緒ってそれはアシマネを担当する人が女性なら問題ないかもしれないが、男女で寝たら社会的に大きな問題になるだろ…。


「そ、その認識は間違いだ。アシマネが年中無休で近くに居たら作家さん執筆作業できないだろ?基本的に今日みたいに外に出る時に一緒に行動するだけだわ。」


「あ~確かに。それもそうか。こんな番犬が側に張り付いて居たら仕事もはかどらない訳ね?」


「ああ。そういうことだ。そ、それと…。今から言っても遅いかもしれないけど、両目が2.0だから度は入っていないんだろうけど、メガネの姿もなかなか似合うと思うぞ…?」


「あ、ありがと…。でもそれを伝えるのはもう少し早く言ってくれた方が嬉しかったかなぁ?」


「いや、だから、伝えるのが遅いかもしれないけどって最初に言ったじゃん?」


「わ、分かってるわよ。」


「健さんの準備が出来たみたいだから、2人とも観ましょう?」


華南さんが俺たちを見てなだめ気味に言う。


「じゃあ、始めるよ~?まずは1回見て感想を聞くからそのつもりでよろしく~♪」

健さんはそう言うと、部屋は徐々に暗くなり、一枚の画面に映像が表示され始めた。


スクリーン上には自分と同じくらいの身長に、過去の自分とどこか似た左の前髪が目にかかっている主人公とこんなに可愛い清楚系な女の子なんて居ないだろ、っと思わず突っ込みたくなるヒロインが恋人として別れるシーンが最初に描き出される。


そう、”昨日別れたはずの生徒会長である彼女が翌日から自分の家族の妹になった件”は、最初に主人公とヒロインが恋人として別れるシーンから始まる。


小学生の時に母親を亡くした主人公は父の都合で、街を出て新しい街に引っ越すことになる。しかし、父の仕事の都合で引っ越し先に長く住み続けるということは少なく、すぐに違う場所へ転校する事になる。


中学2年生までに3回の引っ越しを経験したのち中学校を卒業するまで比較的長く同じ地域に住み続けた。


しかし、父の都合で小学校時代に住んでいた地域に戻る事になり、もう何回目になるか分からない編入試験を受け春休みから県立高校に通う事になる。


その転校先で小学生時代まで幼馴染として多くの時間を過ごしたヒロインに再会する。

その後、ヒロインが所属する生徒会に主人公も強制的に属する事になり生徒活動の中で少しずつ距離を縮めてヒロインの方から告白をし恋人となる。


ここまでの話は物語の前半の方で描かれているが、中盤から後半にかけても新たなヒロインや中学時代の主人公を知る友人の登場により回想シーンが出てくる。


過去の話を時々挟む理由としては、主人公の過去が物語の鍵となっていて、主人公の人格や価値観を知ることができるような工夫が凝られているのだ。


俺は約1分程の短い尺のPVではあるが、今まで原作の方で読んできた物語の出来事や登場人物が言った言葉がこれを見てさらに頭の中で思い出せてくれる…。


その理由は、それだけこの作品が、この作品の作者が、好きだから何度も何度も読んで内容を覚えてしまっているからなのかと思う。


「新島先生どうですか?まだ登場人物の声は決まっていないけど、ナレーションを聞いた感じとか画のでき映えとかは?」


映像が終わり健さんが話始める。


「う~ん。そうですね~。本当に原作の方の表紙や挿絵で描かれている登場人物達がそのまま動く画になってちょっと感動して涙が出そうです~。」


声が震えている華南さんを見ると、暗い部屋の中なので、滴が目元にこぼれ落ちているのが見てわかる。


「新島先生。まだ、PVが完成しただけなんですから、本当に嬉し涙を溢して良いのはアニメ放映が開始する時か全ての放送が終わった時にして下さいよ?」


「え、ああ。すいません。いや、本当に自分が書いている小説がこんな素晴らしい画で表現されていて、それに主人公やヒロインが高校生っぽい可愛さがこのPVを見るだけでも十分伝わってきますね?」


俺らファンにとっても感動だろうけど、原作者が一番涙している…。


「原作の表紙を担当してもらった柚乃果さんにこのPVに出てきたイラストは描いてもらったので、今後フル尺でアニメにする時もこの会社にいるイラストレーターさんも合わせて描いて行こうと考えています。もちろんフル尺の時も柚乃果さんにも描いてもらうつもりです。」


「さっきもそれを言われて嬉しかったですけど、2回言われても嬉しい気持ちが顔に出てしまいニヤケが止まらないですね~。健さんからもお話があったように原作のイラストと合わせてアニメの画の方も頑張るのでよろしくお願いします。新島先生!」


「あ、はい。ありがとうございます。今後もよろしくお願いします。先輩は、この映像を見てどう思いましたか?」


こぼれ落ちる涙を拭いながら、俺に振られた。


「そうだね、1分ほどの動画だったんだけど、今まで自分が読んできた活字によって表現された登場人物達の物語が、映像として遂に見られるのかと思うとわくわくで楽しみすぎてしょうがないなぁ。これはファン目線としてまず伝える。それで、今後アニメ化に向けてさらに忙しくなりそうだけど、新島先生のアシマネとして誰かに代わった方が良いとか言われないように頑張りたいと思います。」


俺は意識的に小山の方を一瞬見て自分の今後の仕事の抱負を語る。


「なによ?べ、別に、私も新島先生のアシマネを高島から違う人に本当に変えて欲しいとは思っていないからね?」


「ほんとかよ?さっきの言い方だと、俺にこの仕事を辞めて欲しいのかと思ったぜ?」


「高島の仕事を奪って新島先生のアシマネとして働くのも一つの選択肢だけど、一番自分にとって好きなのは絵を描いている時でその次に好きなのが新島先生だから、先生のサポートは高島に任せるだけだよ?せいぜい、仕事を奪われない事に感謝するのね?」


「なんか、上から目線で腹立つ言い方だなぁ。」


「まぁまぁ、トシも女性の言動にイライラしている表情を剝き出しにしてもしょうが無いだろ?それに新島先生もこの状況をどう収拾をつけるか困惑しているみたいだし?」


健さんは俺らの間に入る。


俺は華南さんの顔を見るとかなり困ったようなお怒りのようなマークが見えた。


「すいません。」


「ちょっとからかっただけでそんなかっかするなって、たかしま~。」


この人だけお咎めなしかよと思ったが、華南さんが次にこう言った。


「柚乃果さん。私のアシマネをあまり困らせないでくださいよ?」


さっきの映像を見ていた涙声はどこにいったのか分からないが、怒り方が本気で、青い炎が俺には見えた。


「あ、はい。失礼しました。ごめんなさい。新島先生…。」


俺にはどんな表情で華南さんが小山に言ったのかは見えなかったが、きっと目が笑っていないけど不気味に笑顔な表情を浮かべて怒りの一言を言ったに違いない。


彼女のその瞬間の表情を見た健さんの顔が固まっていたので相当お怒りだったのかもしれない。


なんでか知らないけど小山って俺と会うたびに突っかかるしからかってくるし、めんどくさい奴だな、とそう思った。



第153項は6月01日18時からリスタート

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