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第148項「花火大会デートショット撮影①」

フレンドリーカメラウーマンの正体が発覚

花火大会の開始時刻まであと15分でさっきまで美しいオレンジ色に染まっていた空も薄暗くなっている。


ただ、今日だけは暗い天井に花々が描きだされる年に1回だけのこの地域にとって特別な夜の時間を楽しむためなのか多くの中学生や高校生、大学生、そして家族で訪れている人を多く見かける。


舞美さんに頼まれた杏飴が販売されていないか露店を探し回るが「りんご飴」と書かれたのぼり旗は見つかるけど、どうしようか。


彼女はりんご飴でも良いとは言っていたので怒られることは無いけど出来れば一番最初に食べたいものを確保したいと思うのがアシマネの性だと思う。


まさか、俺が熱中症で倒れてベッドで眠りについて居る事になっているとは思わなかったし、アシマネがしっかりしなくてどうするんだって思った。


戒めが必要だなぁ。


律儀に並んでいる露店の周辺を何往復しても杏飴を扱っているお店は見つからなかったので、俺はりんご飴を販売している露店に並ぶ事に決めた。ごめんよ、舞美さん。


彼女の好物である果実飴系を確保できたのは安心できたが、販売をしていた人が実家近くで数日前に開催された花火大会で華南さんと購入した同じりんご飴の店だったみたいで、華南さんと来ている訳でもないのに、なぜか店主の方は今日も彼女と一緒に来ていると思ったみたいでおまけをしてくれた。


あの夜の記憶を思い出しながらも今日は仕事でこの花火大会の会場に来ているんだよなと自分自身を再確認しながら、心の中で店主の人に謝ってその場を後にした。


その後は、浴衣で食べてもそこまで汚れる心配が無さそうなパックに入っている焼きそば等を買っていく。


1週間のうちに二度も露店飯を食べる事になるとは予想していなかった。


概ね買物を済ませて既に始まっているであろう花火大会デートショットの撮影をしている場所に人込みをかき分けながら進んでいく。


花火打ち上げをお知らせする案内放送が会場に響き渡るのを耳で聞き腕時計に視線を落とすと開始時刻5分前である18時25分を指していた。


アシマネの待機室に購入してきたものを一度置いて撮影場所周辺の警備と舞美さんの撮影している姿を遠目で見守る。


現在は貸切をしている場所に露店を何店舗か設置してその場所で何か商品を選んでいる姿をカメラに写し取っているようだ。


露店がこの場所に出店してもらっているのであるなら、アシマネがわざわざ他の場所まで行って買ってくる必要があったのだろうか…。


でも俺はある特定の日だけの特別な夜に花々と笑顔の両方が咲き誇るこういう時間と空間が意外と好きなので普段より心を落ち着かせられるのかもしれない。


「それじゃぁ。読モの皆さ~ん!18時30分丁度になったら一斉に打ち上げられるのでいつでも撮影できるポーズと顔を維持したままで居てくださいね~」


フレンドリーカメラウーマンが被写体になる集団を前にして最後の指示を飛ばす。


彼女がそう伝えた後に夜空の向こうで大きな満天の花々が現れたのと同時に彼女やそれ以外のカメラ操作の人達も一斉にシャッターを切り始める。


俺の耳には「ド~ン」と花火が広がっていく音と咲き乱れる花火と着飾った女性を収める為のカメラ機器から放たれる「カシャカシャ」という音が同時に入ってくる。


花火もカメラも音を発する物ではあるが、それぞれが違う役割を果たしている。


「お~い。高島君」

声をかけてくれた方角に身体を向けると向こうから手を挙げてはるなさんがやってきた。


「あ、お疲れ様です」

「高島、お前私に何か言うべきことがあるんじゃないか?」


やばい。この人お怒りなオーラが出ている…。


「はい。急に倒れこんでしまってすいません」


これは、素直に謝るしかない無いよな…。


実際俺の体調をしっかり管理出来ていなかったのが大問題なんだよな…。


「本当だよ~。君は絶対体調管理とか凄い厳重にやっているイメージだったし仕事に関しても私は君に何も言う必要は無いと思っていたんだから。言っておくけど、人の管理をする仕事をする前にまずはもう一度自分の管理を見直した方が良いと思うよ?」


「俺は管理の方を怠っていたつもりは無いんですけどね。なんで自分自身が倒れたのか未だに分かりません」


「今日は昼間とか凄い暑かったんだからBBQの時に舞美ちゃんだけでなく高島君も水分をもっと取るべきだったんじゃない?それに最近睡眠不足とかだったの?」


「そうですね。確かにずっと仕事の方ばかりを考えていて自分の事を時々忘れてしまう時がるのでそれらが積み重なって疲れが蓄積し今日倒れ込んでしまったのかもしれないですね」


「君は仕事への向き合い方は素晴らしいし舞美さんへのアシマネとして評価しているよ。ただ、あなたが倒れてしまったら彼女を心配させてしまうわ。更に言えば高島君はもう少し自分の身体を労わるのとたまには休日を取った方が良いと思うわ」


「それは舞美さんにも言われました。なので、これからもう少し自分の身体というか体調管理をしていきたいですね」


「私は君がこれから先長く持つかすごく心配だよ~」

「大丈夫です。今回での失敗を経験にしてさらに自分の健康管理や仕事のスケジュール管理の方を見直したいと思います」


「夏の撮影はあと何回かあるから、熱中症の方もしっかり気を付けて欲しいからね。頼むよ?高島君!!」


「今回は本当にご迷惑をおかけしてすいません」

「大丈夫よ。私も似たような失敗を過去にしたことがあるからその間違いを次に活かせるように頑張ってね?それで、舞美ちゃんの浴衣姿を見てアシマネとしてどう?」


「そうですね…。さすが読モだなという感じですね」

大した感想を述べられていないなと感じながら舞美さんの浴衣姿を見る。


主な浴衣の生地の色遣いはエメラルドグリーンで側面にシルバーが所々に入っているデザインのようだ。


「さすがと言うのは彼女が現在着ている浴衣は高島君にとって評価は高いということ?」

「う~ん。確かに俺もエメラルドグリーンというあまり見ないような色遣いを用いている浴衣を見るのは初めてで少し驚いているのはありますが、彼女はあのグループの中の誰よりもレベルが高いと思います。それに素材が良いからどんな奇抜なデザインや色遣いの服でも似合うと思いますよ」


「そっかぁ。女である私も彼女の美貌や立ち姿を初めて見た時は惚れてしまったもんなぁ」

「いや、はるなさんも十分美貌をお持ちだと思いますけど?」


「あ、ありがとう。まさか君からそういう言葉が出てくるとは思わなかったけど、大人をからかうな」

「すいません。でもあなたから初めてボディーガードの仕事を依頼された時からそれは思っていたので、せっかくなら言っておこうかと」


というのも俺はこの人から依頼される前は基本的に男性からの依頼が多かったので初めて女性に依頼されて会って見たらかなり美しい人でびっくりしたのだ。


「き、君は私のような歳が離れた女性の方が好みなのかね?だったら私の残りの人生買ってほしいんだけど?」


急に俺との距離を縮めて変な事を言い始める。


「あなたの人生を買えるほどこちらも同等の価値ある物を持っていないので、それは難しいというのと俺は、ただ誉め言葉を言っただけなんですけどね」


「ふん。そんな事は私も分かっているしこちらも冗談でからかってみただけだ。真に受けるな。私には娘が居るし。それに君とは30歳以上も離れているしな」


「娘さん居たんですね? 初めて聞きました」


「あら、言わなかったっけ?君と同じくらいの年齢の一人娘がね。大学は通っていないけど独学で起業方法や経営の勉強をして今はファッション会社の社長なのよ。まぁ、本人は写真を撮る方が一番の楽しみらしいけど」


「そうだったんですね? 娘さんは努力家ですね」


「母親から見てもあの娘はがんばりすぎなのよね。だから時々経営陣として加わってサポートしたりしているのよ。今はあそこで可愛い女の子を前にしてニヤニヤしながら撮影しているけどね。普段事務所に居る時は黙って仕事をこなしている感じなのよね」


はるなさんが伸ばしている指先の方の人を見るといつも仕事がある時に俺にフレンドリーに話しかけてくるカメラウーマンがこの人の娘さんだったらしい。


「あの人、はるなさんの娘さんだったんですね。凄い驚きが隠せないんですけど?しかも彼女が会社のトップの人だったなんて…。名前は何て言うんですか?」


「あら。まだ名前知らないの?彼女の名前は“せせらぎ”よ。既に本人から聞いて知っているのかと思っていたわ。あの子と高島君良く撮影の合間とかに話しているの見かけるし」

「せせらぎさんが一方的に俺に話しかけてくるのを聞いているだけですけどね」


「それ母親の前で言う発言ではないでしょう?」

「すいません。失言でした。撤回します」


「でもあの子があんなに異性に話しかけてくるのは私が知るだけでも高島君だけね、きっとせせらぎに気に入られているのかも。じゃあ、私はあっちの撮影場所に戻るから、まだ完全に熱中症から回復していないだろうからしっかり休んでおきなね」


そう言い残してはるなさんは去っていた。


まさか、あのカメラウーマンがこの会社の社長であったのが驚きすぎて理解しきるのに多く時間がかかってしまったのだ。


【2022年6月29日一部改訂】

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