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第144項「公開か非公開か」

「ピンポ~~ン…。」


インターホンを一度押して来訪したことを伝えてからこの家の扉を開けるための鍵を挿入する。


あの出来事から36時間以上は経過し昨晩にこのマンションの3階の廊下で別かれてからは一度も会っていないし見ても居ない。


できるだけ告白された時より前の時と同じように挨拶とか振舞うつもりだが、どこか意識してしまいそうで他の人に悟られそうな怖さがある。


玄関に入り、そのまま華南さんの部屋に直行し彼女が寝ている部屋の扉の前に立ち一呼吸を置く。


”今まで通り普通に振舞えば問題は無いはず”と自分自身に鼓舞をして扉の向こうに居る彼女に起こしに来たことを伝えようと口を開こうとしたその時舞美さんが奥の部屋から現れた。


「あら?先輩。おはようございます!華南はまだ眠っていますよ?今日は一日私の仕事のボディーガード兼アシマネの日なんですが、そっちに集中してくださいよ?」


「お、おはよう…。どうやらそのようだな…。あの人寝すぎだろ…。舞美さんの方の仕事日だという事は把握済みだ。10:00に事務所に集合するように言われているから8:30過ぎにはこの家を出るので良いかな?」


「承知しました。先輩が来るのが遅いので私が簡単に朝ご飯作っておきましたよ?一緒に食べませんか~?」


「ああ。そうだな…。それにしても華南さんを起こさなくて良いのか…?」


「まぁ、そのうち起きてくると思いますよ…。」


「はい。先輩。野菜ジュースどうぞ。」


「あ、ありがと…。」

俺は注いでもらった野菜ジュースを一口飲みながら華南さんが中々起きてこない事に少し心配だ。


「先輩は、華南が部屋から出てこない事に心配していますか?」


トーストにジャムを塗りながら舞美さんは食い入るように聞いてきた。


昨日の朝に早朝ランニングの前に舞美さんにはっきり言われた俺と華南さんの一昨日の出来事について独自に調べると言っていたのでこれも彼女の作戦なのかもしれない…。


「ああ。あの人の作品作りに影響が無ければ良いけどな…。」


「先輩ってけっこう自分の事は棚に上げて他の人に対しては心配になる心を持ちますよね?」


「俺がやっているような仕事は依頼主を尊重し何か困ったら一緒に考えて解決するという面もあるからな、契約を結んだ人に対して心配になるのは我々の業界では普通な事なんだよな。でも彼らにあまり深入りするのも良くないから難しいんだよな…。」


はちみつとバターを食パンに塗って俺も頬張る…。


「華南では無くて私の事も少しは心配したりする感情を持ったりしたことありますか?もっと深入りしても良いんですよ?」


この人はどういう意味で深入りという言葉を言っているのか分からないな…。

まだまだ、この人の事を良く知らない気がするけど、そこまで知りたいという欲求はあまり生まれない。


「舞美さんに今は心配はしていないけど、時々言動に困惑する事があるからその発言にどう返事するか迷う時があるくらいだな…。」


「む~~。先輩はもっと私の事を見てくださいよ?」


口を膨らませて尖がらせてアピールしてくる…。

昨日の早朝に見聞きしたあの姿と声質はどこに行ったんだろう…。


「仕事の時は毎回見ているわ。」


仕事の時はね…。


「そうじゃなくて、それ以外の時も私の事を見てくださいよ?家に居る時とか…。」


「はいはい…。」


「先輩返事が適当すぎですよ?さらに感情が籠っていないですし…。あと言い忘れたましたけど、私の事をもっと見て欲しいというのはもちろんですが、先輩はもっと自分自身の事を考える時間を使った方が良いと思いますよ。私達姉妹2人の仕事面を支えてくれるのは本当に有難いですけど、先輩もあと半年で卒業じゃないですか?もっと自分の事を考える時間を設けた方が良いと思いますよ…。」


「それについては、問題ない。普段から自分がこの先どうしたいとかは考えてあるから抜かりはない。」


「先輩が既に自分の中で考えが決まっているのであるのなら良いですけど、それだったらもっと私の事を見てくださいよ?」


「ああ。じゃあ、仕事の方行くか?」


「そうですね…。今日は先輩との仕事デートですから楽しみですよ~~?」


「デートじゃねえし、舞美さんは仕事に集中してください!!」


「承知です!!」


食事を終えて舞美さんの仕事に出るために廊下を通り玄関に行く。


玄関に近い部屋の扉の前を通り過ぎるとスマホの通知が表示されそれと同時に自分の後ろに人が現れている気配を感じつつ舞美さんに続いて玄関の扉を開けて外に出る。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そして1時間半かけて俺たちは都内になる読モ事務所の会議室に籠原さんを目の前に座っていた。


机の上に出された清涼飲料水を2人して飲み干す…。


「撮影の前でごめんね~。一つ確認の為にこの部屋に来てもらったのよ…。」


「はい。それでご用件は何ですか?はるなさん。」


「先月末に湘南の海岸で撮影した夏に着たい服の特集が今日発売されるんだけど、あの時午後に撮影した舞美ちゃんの水着姿のオフショットをwebで公開しても良いかの確認をしたいの?」


「はぁ…。それって私がここに同席する必要ありますか?」


「確かに高島君が同席する必要性は無かったかもしれないけど、舞美ちゃんのアシスタントマネージャーだから公開するか非公開のままにするかというのも知っておいて欲しいかなと思って…。」


「なるほど。公開・非公開で何が違うのか分かりませんけど、私は本人の考えを尊重し委ねますね?」


「そう。高島君はそう言う考えを述べると思ったわ。舞美ちゃんはどうしたい?私は非公開で別に構わないわよ?」


「先輩の本心はどうですか?私の水着姿が世間に公開されて何か思う事や感情が生まれたりしますか?」


「う~ん、別に特にないけど…。舞美さんがしたいようにやって俺はあくまでアシスタントマネージャーでしかないから舞美さんの判断に任せるけど?」


「高島君って中々女の子に意見を求めたられたら自分の本心をぶつけないと駄目よ?業務の一環だから本人に任せるなんてそれって考える事を放棄しているのと同じよ?」


え?この流れ俺が悪いみたいな雰囲気が出ているんだけど…。


「本心も何も舞美さんが写真を公開したいというのであるならすればよいと思うしちょっと嫌だなと思っているのであるならそれを尊重するのがアシマネの役目だと思いますけど?」


「もちろん私がアシマネの立場だったら」同じことを言うと思うけど、もっと舞美ちゃんの水着姿のオフショットを公開するなんて言語道断で嫌に決まっているとか無いの?それに君もあの日の午後2人で遊んだときに彼女の露出姿を目の当たりしているんだから少しは思う事あるんじゃない?」


「特に無いですね。さっきから話しているように本人の意思・思考に任せますよ。」


「アシマネとしては正しい模範的な回答だけど、男としてはいまいちな回答だわね。」


「仕事の時にプライベートな感情の持ち込みは良くないと思いますしそれを求められても困りますよ?」


「そう。舞美ちゃん。どうする?」


「そうですね。今回はWEB媒体への掲載は無しにします。」


「分かったわ。それとWEB媒体に載せるとしたらの写真を刷ってあったから渡しておくわね?高島君にでもあげておくと良いんじゃない?それで今日の仕事は都内の公園でBBQデートと花火デートのシーンを撮影するつもりだからこの会議が終わったら車に乗って移動するからよろしくね~。」


そう言ってはるなさんは部屋を出ていった。


「はい。先輩…。この写真渡しておきますよ?」


「え?別に俺が持っていてもしょうがなくないか?舞美さんの写真なんだから舞美さんが持っておけばよいのでは?」


「ダメでーす。私のサイン入りで先輩に渡しておきますよ?お守りにでも何でもして下さいね?シュレッダーにはかけたりしないでくださいよ?」


「それはしないようにする…。」


貰った写真には、背景に湘南の海と富士山が夏の暑さと涼を求める水着姿の舞美さんの姿が見事に映し出された一枚だった。


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